280 / 338
266 新規作成と襲撃
しおりを挟む相変わらず混雑している鉱山を抜けて、地上へと戻った。
また来ることを考えて、マーキングをしておいた。
こうしておけば、≪テレポート≫でいつでも来ることが出来る。
ストーレや他のダンジョンの入り口の前にもやっておかないといけない。
つい忘れちゃうんだよな。
それが終われば、優雅な空中散歩でストーレの街まであっという間だ。
そう、俺達はストーレへ戻ってきた。
時間は朝10時半。
まだ時間があるから、マッスル☆タケダに装備の作成を依頼しておきたかった。
タケダには≪忘却の実験場≫を出る前にメッセージを送ってある。
忙しいだろうに、快く引き受けてくれた。
「おはようございます」
「おはまっする!!」
「おお、二人とも、おはマッスル! よく来たな」
いつもの露店を出している場所に行くと、見事な筋肉で出迎えてくれた。
ついに俺とタマへの挨拶を纏められてしまった。
俺は普通の挨拶しかしてないのに何故だろうか。
「で、今日はどうした?」
「はい、実は以前作ってもらったこの盾と同じようなものを造って欲しくてですね」
「うん? 壊れたようには見えねぇが……」
「あ、すみません、ミルキーの分です」
「ああ、なるほどな」
少し勘違いさせてしまったようだ。
慌てて訂正すると、タケダはニヤリと笑った。
悪い顔してやがる。
「どうだ、そっちはうまくやってんのか?」
「ええ、まあ」
「かーっ、羨ましいもんだぜ。よし、そういうことなら任せといてくれ。前よりも上等なやつを作ってやるからよ」
「ありがとうございます」
「前作った盾は持って来てるか? それと、強化に使う素材も見せてくれ」
そういえばこの盾ゴーレムは、小盾に素材を足して改造したものだった。
ミルキーも同じ小盾を持ってるんだから、そこから派生させると考えるのが普通だ。
すっかりそのことを忘れていた。
素材もお金もあるし、新しく作ってもらおう。
「あ、盾はないので、そこから新しく作ってもらう形でお願いしたいんですが大丈夫ですか?」
「問題ないぞ、任せといてくれ」
「ありがとうございます。素材は今出しますね」
盾の素材か。
まずは畑で採れたピンポン玉の素材だな。
結晶殻に、吸盤。どちらも固いし魔法に耐性のある素材だ。
殻は時々剥がれ落ちているのが拾えるし、吸盤は生えているイカの足を収穫すれば手に入る。
これでベースになる小盾の素材は揃った。
ここまでは俺の盾と同じ。
ここからは違う素材を使う。
俺の持っている盾は魔王の素材を使っているが、それはもう無い。
装備の強化で全部使ってしまった。
けど、全く問題はない。
素材は豊富にあるからな。
まずは≪雑晶≫。
畑に生えてくる謎の結晶体で、ただ硬いだけの何かだ。
ただ、モグラに何か使い道がないか聞いてみたところ、面白い事を教えてくれた。
この雑晶というものは、宝石から魔法的な部分を抜いて凝縮したものらしい。
つまり、物理部分の集合体ということだ。
硬い宝石が更に圧縮されたらどうなるか。
滅茶苦茶硬くなる。
盾にぴったりだ。
次に、さっき拾った≪歴史装甲板≫。
不思議な金属っぽい材質で出来ている板だ。
いっそ取っ手だけつければ盾になるんじゃないかと思う。
最後に、≪神滅黒竜の皮≫。
これは昨日戦ったルインのドロップアイテムだ。
コインがルインから分離した時に、一緒に零れ落ちた。
本来は、コインの持ち主である≪神滅魔竜ゴルヴィーク≫のドロップアイテムなんだろう。
つまり、おろし金が倒したあの魔王モドキと同格。
もしくはそれ以上にレアな素材かもしれない。
これで、俺のにも負けないくらい良い盾になる筈だ。
勿論、核となる≪ゴーレム結晶≫も渡しておく。
一番の目玉はそこだからな。
大きな盾を自在に操るミルキー。
きっとかっこいいに違いない。
「これで全部ですね」
「よし、確かに預かった。また明日取りに来てくれ。代金はいつも通り、その時でいいぜ」
「分かりました。よろしくお願いします」
これで依頼は完了だ。
大人しく待ってくれていたタマを撫でつつ、ついでに余っている素材もいくつか売っておく。
特にピンポン玉の素材が結構溜まって来た。
一回の収穫でかなりの数が採れる上に、生えてくるのも早い。
定期的に売らないと保管場所に困ってしまいそうだ。
素材の売却も終わって、雑談に移行する。
タケダの最近のマイブームは、依頼する権利を腹筋オークションで決めることらしい。
腹筋オークションというのは、タケダに依頼したい人達が一斉に腹筋を初めて、最後まで残った人が権利を獲得することだそうだ。
普通は無いが、イベントを設定することで筋肉の疲労が発生するらしい。
そんなことが出来るのか。
結局、StrとVitに振ってる人が強いらしい。
ゲームだし、そうなるだろうな。
そんなことを話していると、俺達の近くをプレイヤーの集団が通った。
その中の一人が足を止めてこっちに近づいて来る。
それに合わせてか集団も立ち止った。
何かと思ったら、近寄って来たのはモグラだった。
「あれ、ナガマサさんじゃん。こんちゃー」
「モグラだー!」
「あ、モグラさん。おはようございます?」
「おはようってナガマサさん、もうすぐ12時だよ」
「えっ?」
「おお、もうそんな時間になっちまってたか」
ウインドウを開いて時間を確認する。
時間は11時48分。
確かに、もうこんにちはの時間だ。
いつの間に!?
「タケダさんと話してると、いつの間にか時間経ってたりするよねー。あるある」
「俺もつい楽しくて話し込んじまうんだよな。悪い悪い」
「あ、いえ、気にしないでください。楽しかったです」
苦笑いを浮かべるタケダに、とりあえずフォローを入れておく。
そんなに時間が経ってると思わなかったけど、それは言ったとおり楽しかったからだ。
悪い事じゃない。
「モグラさんは、これから狩りでも行くんですか?」
「オレ? オレはこれからPK狩り仲間達と宴会だよ。一週間お疲れ様、ってね」
「あー、大変だったみたいだな。俺もPKだって連中をよく見かけたよ」
「ほん……っとに大変だったよ。アプデの前に暴れようとかマジ糞みたいなこと考えてさぁ……でももう終わりだと思うと清々するよ」
モグラは疲れ果てた顔をしたと思ったら、晴れやかな顔になった。
リリースに伴っての仕様変更で、PKは今までよりもやりづらくなる。
そのせいで、PKの活動が活発化した。
モグラ達はそんなPKに対抗する為に、ここ一週間頑張っていた。
それが葵を預かっていた理由でもある。
一緒にいるあの集団も、同じようにPKを狩っていたんだろう。
目線を向けると丁度、立ち止まっているプレイヤーの中から、更に一人近づいて来た。
動きやすそうな鎧を身に着けた男だ。
短髪で、頭の半分が刈り上げてある。
アイコンを見てみると、≪シクラメン≫という名前が表示された。
「モグラさん、そろそろ行きましょう」
「ごめんごめん、そうだね、もう行くから。……邪魔してごめんね、オレ達も予約してる酒場に向かうとするよ。また後でね」
「おう、また後でな」
「はい、お待ちしてます」
「まったねー!」
シクラメンに急かされて、モグラがそそくさとプレイヤーの集団へ向かった。
その後にシクラメンが続く。
なんとなく眺めていると、シクラメンは剣を抜いた。
うん?
何かあるんだろうか。
ごく自然な動作だ。
PKを見つけたとか、そういう警戒した感じはない。
ただ剣を持って歩いている。
歩く速度が速くなり、モグラに追いつきそうだ。
腕を振る動きのままに剣の切っ先がモグラの背中へと――。
「タマ!」
「あいあいさー!」
瞬間移動したタマが剣を粉砕した。
そのままモグラとシクラメンの間で奇妙なファイティングポーズを取っている。
びっくりした。
びっくりし過ぎて動けなかった。
咄嗟に叫べたのが奇跡に感じる。
「しゃー!」
「え?」
「あーあ、何してくれるんですか?」
タマの威嚇の声に気付いたのか、モグラが振り返った。
シクラメンは悪びれることもなく、俺の方に振り返って軽い調子で問いかけてきた。
むかつくような、ニヤニヤした笑みだ。
「お前こそ、今何しようとした?」
「そんなこと、気にしてる余裕がありますか?」
モグラの連れていた集団や、いつのまにか周りにいた連中のほとんどが、一斉に武器を抜いた。
1
あなたにおすすめの小説
異世界帰りの勇者、今度は現代世界でスキル、魔法を使って、無双するスローライフを送ります!?〜ついでに世界も救います!?〜
沢田美
ファンタジー
かつて“異世界”で魔王を討伐し、八年にわたる冒険を終えた青年・ユキヒロ。
数々の死線を乗り越え、勇者として讃えられた彼が帰ってきたのは、元の日本――高校卒業すらしていない、現実世界だった。
元王城お抱えスキル研究家の、モフモフ子育てスローライフ 〜スキル:沼?!『前代未聞なスキル持ち』の成長、見守り生活〜
野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
ファンタジー
「エレンはね、スレイがたくさん褒めてくれるから、ここに居ていいんだって思えたの」
***
魔法はないが、神から授かる特殊な力――スキルが存在する世界。
王城にはスキルのあらゆる可能性を模索し、スキル関係のトラブルを解消するための専門家・スキル研究家という職が存在していた。
しかしちょうど一年前、即位したばかりの国王の「そのようなもの、金がかかるばかりで意味がない」という鶴の一声で、職が消滅。
解雇されたスキル研究家のスレイ(26歳)は、ひょんな事から縁も所縁もない田舎の伯爵領に移住し、忙しく働いた王城時代の給金貯蓄でそれなりに広い庭付きの家を買い、元来からの拾い癖と大雑把な性格が相まって、拾ってきた動物たちを放し飼いにしての共同生活を送っている。
ひっそりと「スキルに関する相談を受け付けるための『スキル相談室』」を開業する傍ら、空いた時間は冒険者ギルドで、住民からの戦闘伴わない依頼――通称:非戦闘系依頼(畑仕事や牧場仕事の手伝い)を受け、スローな日々を謳歌していたスレイ。
しかしそんな穏やかな生活も、ある日拾い癖が高じてついに羊を連れた人間(小さな女の子)を拾った事で、少しずつ様変わりし始める。
スキル階級・底辺<ボトム>のありふれたスキル『召喚士』持ちの女の子・エレンと、彼女に召喚されたただの羊(か弱い非戦闘毛動物)メェ君。
何の変哲もない子たちだけど、実は「動物と会話ができる」という、スキル研究家のスレイでも初めて見る特殊な副効果持ちの少女と、『特性:沼』という、ヘンテコなステータス持ちの羊で……?
「今日は野菜の苗植えをします」
「おー!」
「めぇー!!」
友達を一千万人作る事が目標のエレンと、エレンの事が好きすぎるあまり、人前でもお構いなくつい『沼』の力を使ってしまうメェ君。
そんな一人と一匹を、スキル研究家としても保護者としても、スローライフを通して褒めて伸ばして導いていく。
子育て成長、お仕事ストーリー。
ここに爆誕!
スキル『レベル1固定』は最強チートだけど、俺はステータスウィンドウで無双する
うーぱー
ファンタジー
アーサーはハズレスキル『レベル1固定』を授かったため、家を追放されてしまう。
そして、ショック死してしまう。
その体に転成した主人公は、とりあえず、目の前にいた弟を腹パンざまぁ。
屋敷を逃げ出すのであった――。
ハズレスキル扱いされるが『レベル1固定』は他人のレベルを1に落とせるから、ツヨツヨだった。
スキルを活かしてアーサーは大活躍する……はず。
【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~
よっしぃ
ファンタジー
【ホットランキング1位達成!皆さまのおかげです】
多くの応援、本当にありがとうございます!
職人一筋、五十一歳――現場に出て働き続けた工務店の親方・昭雄(アキオ)は、作業中の地震に巻き込まれ、目覚めたらそこは見知らぬ森の中だった。
持ち物は、現場仕事で鍛えた知恵と経験、そして人や自然を不思議と「調和」させる力だけ。
偶然助けたのは、戦火に追われた五人の子供たち。
「この子たちを見捨てられるか」――そうして始まった、ゼロからの異世界スローライフ。
草木で屋根を組み、石でかまどを作り、土器を焼く。やがて薬師のエルフや、獣人の少女、訳ありの元王女たちも仲間に加わり、アキオの暮らしは「町」と呼べるほどに広がっていく。
頼れる父であり、愛される夫であり、誰かのために動ける男――
年齢なんて関係ない。
五十路の職人が“家族”と共に未来を切り拓く、愛と癒しの異世界共同体ファンタジー!
異世界召喚された俺の料理が美味すぎて魔王軍が侵略やめた件
さかーん
ファンタジー
魔王様、世界征服より晩ご飯ですよ!
食品メーカー勤務の平凡な社会人・橘陽人(たちばな はると)は、ある日突然異世界に召喚されてしまった。剣も魔法もない陽人が頼れるのは唯一の特技――料理の腕だけ。
侵略の真っ最中だった魔王ゼファーとその部下たちに、試しに料理を振る舞ったところ、まさかの大絶賛。
「なにこれ美味い!」「もう戦争どころじゃない!」
気づけば魔王軍は侵略作戦を完全放棄。陽人の料理に夢中になり、次々と餌付けされてしまった。
いつの間にか『魔王専属料理人』として雇われてしまった陽人は、料理の腕一本で人間世界と魔族の架け橋となってしまう――。
料理と異世界が織りなす、ほのぼのグルメ・ファンタジー開幕!
異世界転生~チート魔法でスローライフ
玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています
異世界に召喚されたけど、戦えないので牧場経営します~勝手に集まってくる動物達が、みんな普通じゃないんだけど!?~
黒蓬
ファンタジー
白石悠真は、ある日突然異世界へ召喚される。しかし、特別なスキルとして授かったのは「牧場経営」。戦えない彼は、与えられた土地で牧場を経営し、食料面での貢献を望まれる。ところが、彼の牧場には不思議な動物たちが次々と集まってきて――!? 異世界でのんびり牧場ライフ、始まります!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる