325 / 338
新たな始まり
279 モジャと一般プレイヤー
しおりを挟む一般プレイヤー達がうろうろして、家の様子を窺っている。
家の側面でもこれなら、玄関の方はどうなのか。
玄関へ向かって、正面に面した窓から外を覗いてみる。
そこにも、一般プレイヤー達の姿がある。
少なくとも三十人はいそうだな。
しかし、訪ねてくる訳でもなく、プレイヤー達は何をしてるんだろうか。
様子を見てみると、何やら揉めているようだ。
俺の方が先にとか、言い争っている声が聞こえてくる。
人の家の前で揉めないで欲しい。
さて、どうしようかな。
誰も彼も、この家を寄越せと言ってきた時の≪ムラマサ≫と同じ顔をしている。
あの顔は危ない顔だ。
何を目的にここへ来たか分からないけど、出来れば関わりたくない。
一旦ミルキー達と相談するか。
そっと窓から離れて、リビングへと戻る。
「どうでした?」
「人が沢山いたね。一体どうしたんだろう」
「そうですね、こんなところまで何しに……あれ、モグラさんからメッセージが来ました」
「モグラさんから? 何か書いてある?」
妙にタイミングが良い。
もしかして、あのプレイヤー達と何か関係があるんだろうか。
「えっと、今朝ナガマサさんがタケダさん達に売った装備がプレイヤー達の間で話題になったみたいです。それですぐに品薄になったけどどうしても欲しい人達が、それに入ってるモジャの銘を見て、≪モジャ≫の家に押しかけてるそうです」
「なるほど……」
ミルキーがモグラからのメッセージの内容を要約してくれて、納得した。
まさか今朝のあれがそんなに話題になるなんて。
武器はノービス用が七百と初心者用も七百。
合わせて千四百もある。
だけど武器種で量が違うし、剣を使いたい人が大勢いたら足りなくもなるかもしれない。
それに、多分どんどん値段も吊り上ってるんだろうな。
それなら製作者を探す流れになるのも、なんとなく分かる。
しかし、側で聞いていた葵は首を傾げている。
「つまりどういうこと?」
『ご主人様が凄いってことじゃな』
「モジャマサはすごいモジャだからね!」
「なるほど……!」
そんな葵に金剛が雑な説明で返し、タマがそれに乗っかった。
納得したように頷いているが、それでいいのか葵。
「そういうことなら、装備を用意したら帰ってくれるかな」
「かもしれませんわね」
『どうかのう』
思いついた解決策を口にしてみた。
ミゼルが笑顔で同意してくれたが、そこに金剛が待ったを掛けた。
「何か引っかかる?」
『うむ。詳しい事情は分からぬが、人の欲というのは果てが無い。わらわを追いかけ回した者達もそうじゃが、そう簡単に引き下がるとは思えんのじゃ』
「確かに、一理あるかも」
金剛は、モンスターで女王だ。
人間に対しての警戒心は、普通のNPCよりも高く設定されていてもおかしくない。
さっきも一般プレイヤーにつけ回されたみたいだし、その言葉には説得力がある。
「それじゃあもうしばらく様子を見てみようかな」
「私も行きます」
「では私も」
『わらわも行こう』
「タマはー?」
「タマは葵ちゃんと一緒にお留守番しててくれ。ミゼルも、タマと葵ちゃんを任せたい」
「えー……」
「はーい!」
「分かりましたわ」
ミルキー、金剛と一緒に、再度玄関の方へ。
不満そうな葵はタマに任せておく。
ミゼルもタマの側にいてもらえば安心だ。
一応、何かあった時の為に備えて皆に守属性魔法を掛けておいた。
外を覗いてみる。
そこでは、何やら決闘にまで発展していた。
あれで順番を決めてるんだろうか。
丁度佳境に入っていたらしく、すぐに決着がついた。
まだサービス開始されてから一日しか経ってないのに、どちらも装備がそれなりに良さそうに見える。
勝ったのは、戦士のような見た目の大柄な男だ。
名前は≪ギガガガ≫。
「俺の勝ちだ! 他に挑戦者はいるか!? いなければ、先に交渉する権利は俺の物だ!」
勝利を宣言し、周囲のプレイヤー達に向かって声を張り上げている。
「いないようだな! 俺が格安の専属作成契約を捥ぎ取っても、後から文句言うんじゃねえぞ!」
「隠れましょう」
「おっと」
ギガガガは、倒した相手を引き起こして、こっちへと向かってきた。
寸前でミルキーが教えてくれたから、見られる前に窓から離れられたと思う。
焦って瞬間移動しかけたのは内緒だ。
ドンドンドン!!
「おい! 誰かいないのか! おい!」
玄関のドアがノックされる。
いや、ノックというよりは拳を叩きつけている音だ。
乱暴な奴のようだ。
金剛が顔を近づけてきた。
外に声が洩れないように、こっそりと囁いてくる。
『どうするのじゃ?』
「直接対応して帰ってもらおうかな。さっきの台詞を聞く感じ、まともに取引が出来るとは思えないし。聞き訳が悪かったら力づくでも――」
俺の考えを金剛に話す。
そして、扉に向かおうとしたところをミルキーに止められた。
「一旦止めておきましょう。下手に騒ぎを起こして、プレイヤーに目の敵にされると面倒なことになるかもしれません」
「うーん……」
「ナガマサさんも言ってたじゃないですか、何が起こるか分からないって。慎重に判断した方が、良いと思います」
言われて、ハッとした。
ミルキーの言い分は最もだ。
蹴散らすのは簡単だとしても、それが原因で家族に何が起こるか分からない。
俺達に対して雑な対応をされたことで、少し気が立っていたのかもしれないな。
力づくは、最終手段。
最終手段は最後に選ぶから最終手段なわけで。
今はまだまだそんな段階じゃない。
「ミルキーの言う通りだね。そうしよう」
「ありがとうございます」
「家族なんだから、意見を聞くのは普通のことだよ」
俺達は居留守を決め込むことにした。
別に、外に出られない訳でもない。
しばらくは様子を見ても良いだろう。
0
あなたにおすすめの小説
異世界帰りの勇者、今度は現代世界でスキル、魔法を使って、無双するスローライフを送ります!?〜ついでに世界も救います!?〜
沢田美
ファンタジー
かつて“異世界”で魔王を討伐し、八年にわたる冒険を終えた青年・ユキヒロ。
数々の死線を乗り越え、勇者として讃えられた彼が帰ってきたのは、元の日本――高校卒業すらしていない、現実世界だった。
元王城お抱えスキル研究家の、モフモフ子育てスローライフ 〜スキル:沼?!『前代未聞なスキル持ち』の成長、見守り生活〜
野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
ファンタジー
「エレンはね、スレイがたくさん褒めてくれるから、ここに居ていいんだって思えたの」
***
魔法はないが、神から授かる特殊な力――スキルが存在する世界。
王城にはスキルのあらゆる可能性を模索し、スキル関係のトラブルを解消するための専門家・スキル研究家という職が存在していた。
しかしちょうど一年前、即位したばかりの国王の「そのようなもの、金がかかるばかりで意味がない」という鶴の一声で、職が消滅。
解雇されたスキル研究家のスレイ(26歳)は、ひょんな事から縁も所縁もない田舎の伯爵領に移住し、忙しく働いた王城時代の給金貯蓄でそれなりに広い庭付きの家を買い、元来からの拾い癖と大雑把な性格が相まって、拾ってきた動物たちを放し飼いにしての共同生活を送っている。
ひっそりと「スキルに関する相談を受け付けるための『スキル相談室』」を開業する傍ら、空いた時間は冒険者ギルドで、住民からの戦闘伴わない依頼――通称:非戦闘系依頼(畑仕事や牧場仕事の手伝い)を受け、スローな日々を謳歌していたスレイ。
しかしそんな穏やかな生活も、ある日拾い癖が高じてついに羊を連れた人間(小さな女の子)を拾った事で、少しずつ様変わりし始める。
スキル階級・底辺<ボトム>のありふれたスキル『召喚士』持ちの女の子・エレンと、彼女に召喚されたただの羊(か弱い非戦闘毛動物)メェ君。
何の変哲もない子たちだけど、実は「動物と会話ができる」という、スキル研究家のスレイでも初めて見る特殊な副効果持ちの少女と、『特性:沼』という、ヘンテコなステータス持ちの羊で……?
「今日は野菜の苗植えをします」
「おー!」
「めぇー!!」
友達を一千万人作る事が目標のエレンと、エレンの事が好きすぎるあまり、人前でもお構いなくつい『沼』の力を使ってしまうメェ君。
そんな一人と一匹を、スキル研究家としても保護者としても、スローライフを通して褒めて伸ばして導いていく。
子育て成長、お仕事ストーリー。
ここに爆誕!
スキル『レベル1固定』は最強チートだけど、俺はステータスウィンドウで無双する
うーぱー
ファンタジー
アーサーはハズレスキル『レベル1固定』を授かったため、家を追放されてしまう。
そして、ショック死してしまう。
その体に転成した主人公は、とりあえず、目の前にいた弟を腹パンざまぁ。
屋敷を逃げ出すのであった――。
ハズレスキル扱いされるが『レベル1固定』は他人のレベルを1に落とせるから、ツヨツヨだった。
スキルを活かしてアーサーは大活躍する……はず。
【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~
よっしぃ
ファンタジー
【ホットランキング1位達成!皆さまのおかげです】
多くの応援、本当にありがとうございます!
職人一筋、五十一歳――現場に出て働き続けた工務店の親方・昭雄(アキオ)は、作業中の地震に巻き込まれ、目覚めたらそこは見知らぬ森の中だった。
持ち物は、現場仕事で鍛えた知恵と経験、そして人や自然を不思議と「調和」させる力だけ。
偶然助けたのは、戦火に追われた五人の子供たち。
「この子たちを見捨てられるか」――そうして始まった、ゼロからの異世界スローライフ。
草木で屋根を組み、石でかまどを作り、土器を焼く。やがて薬師のエルフや、獣人の少女、訳ありの元王女たちも仲間に加わり、アキオの暮らしは「町」と呼べるほどに広がっていく。
頼れる父であり、愛される夫であり、誰かのために動ける男――
年齢なんて関係ない。
五十路の職人が“家族”と共に未来を切り拓く、愛と癒しの異世界共同体ファンタジー!
異世界召喚された俺の料理が美味すぎて魔王軍が侵略やめた件
さかーん
ファンタジー
魔王様、世界征服より晩ご飯ですよ!
食品メーカー勤務の平凡な社会人・橘陽人(たちばな はると)は、ある日突然異世界に召喚されてしまった。剣も魔法もない陽人が頼れるのは唯一の特技――料理の腕だけ。
侵略の真っ最中だった魔王ゼファーとその部下たちに、試しに料理を振る舞ったところ、まさかの大絶賛。
「なにこれ美味い!」「もう戦争どころじゃない!」
気づけば魔王軍は侵略作戦を完全放棄。陽人の料理に夢中になり、次々と餌付けされてしまった。
いつの間にか『魔王専属料理人』として雇われてしまった陽人は、料理の腕一本で人間世界と魔族の架け橋となってしまう――。
料理と異世界が織りなす、ほのぼのグルメ・ファンタジー開幕!
異世界転生~チート魔法でスローライフ
玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています
異世界に召喚されたけど、戦えないので牧場経営します~勝手に集まってくる動物達が、みんな普通じゃないんだけど!?~
黒蓬
ファンタジー
白石悠真は、ある日突然異世界へ召喚される。しかし、特別なスキルとして授かったのは「牧場経営」。戦えない彼は、与えられた土地で牧場を経営し、食料面での貢献を望まれる。ところが、彼の牧場には不思議な動物たちが次々と集まってきて――!? 異世界でのんびり牧場ライフ、始まります!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる