不遇ステータス《魅力》に極降りした結果、《姫》になりました

俊郎

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4 姫プレイの片鱗

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 姫と呼んでくる謎の騎士に対して、ひたすら人違いだと言い張る事しばらく。
 やっとのことで納得してくれた。
 だって俺姫違うし。

 納得はしてくれたんだが、なんか流れで事情を話された。
 この騎士の名前はトラストル。
 魔物に滅ぼされた国の姫に仕えていた騎士だそうだ。

 なんでこんなところにいるかっていうと、ここがその姫のお墓だからだ。
 やっとの思いで逃げてきたここで強力なモンスターに襲われて、なんとか倒したものの姫は死亡。
 色々あってここにしか墓を作れなかったらしい。

 いや、なんか複雑な事情があるっぽいけど、流石に全部は把握しきれない。
 大人の事情ってやつだろう。

「例え姫本人ではなかったとしても、その御姿はまさに生き写し。そして、危機が迫っているというのにその身をかえりみない献身! なので貴女は姫なのです」

「あ、はい」

 そしてこいつ、結構ポンコツだった。
 俺が姫本人じゃないというのは伝わったものの、何だかんだ理由を付けて姫判定を出してくる。
 なので結局俺に対する扱いは姫。
 悲しみのあまり病んでないかこの人。

「私が側にいるとはいえ、ここは少々危険です。万が一を考えてスターレの街へ。護衛は任せてください」

「お願いします」

 強く断る理由もないしここは素直にお願いすることにした。
 さっきの熊みたいなモンスター、滅茶苦茶こわかったしな。
 もっと強くなるその日まで、視界に入れることすらしたくない。
 
 ピロン。

 俺の視界に小さなメッセージウインドウが開いた。
 
『トラストルからパーティー加入申請が送られてきました。
 加入を許可しますか?』

『YES NO』

 勿論イエス。
 イケメンなのは気に食わないが、守ってくれるんなら有難い話だ。

「それでは行きましょう、姫!」

 姫じゃないけどな。





「とぁ!! ≪バニシングスラッシュ≫!!」

 攻撃を弾いた直後、燃える剣撃が六本脚の狼を捉えた。
 打ち上げられるように浮いた狼は、燃え上がりながらドチャっと地面に墜落した。
 真っ黒になってしまってもう原型が無い。
 そのまますぅっと消えていき、後にはドロップアイテムだけが残る。

 そして経験値が入り、レベルアップのエフェクトが出る。
 テンション高そうな女の子の姿なのは、何か意味があるのか、製作者の趣味か。

 街へと帰る道すがら、結構な頻度でモンスターに遭遇した。
 しかし、怖いものなんてない。
 全て蹴散らした結果、経験値とドロップアイテムががっぽがっぽだ。

 まあ、全てトラストルの功績なんだけど。

「姫、お怪我はありませんか?」

「ないですよ。あと姫でもないですよ」

「良かった。街はもうすぐです。慎重に参りましょう」

「聞いてないですね」

 トラストル、めっちゃ強い。
 強そうなスキルで強そうなモンスターをばったばったとなぎ倒してる。
 いや、強いかな、とはさっきの熊で思ってたんだけどね。
 ここまでとは予想外だった。

 お陰で何もしてないのにレベルがもりもり上がる。
 流石に上がりづらくなってきたけど、もうレベル13にもなってしまった。

 NPCとパーティー組めるのもびっくりしたけど、経験値も分配されるとかいいのか?
 俺本当に何もしてないよ。

「姫には指一本触れさせない!」

「あ、うん、ありがとうございます」

 今も近寄ってきた大きなハチをカウンター気味に切り捨てた。
 自動迎撃システムが優秀過ぎて、マジで見てるだけ。
 ゲームとしてこれでいいんだろうか。
 強そうなモンスターから守ってもらえて俺は気が楽だけどね。

 とは言っても、流石にじっと見てるだけというのも申し訳ない。
 レベルアップで得たステータスを、全部魅力に振った。

 これで魅力値は221(+88)。
 どれくらい高いのかは良く分からないが、どんどん振って行こう。
 余りにも安全すぎて、ステータスを振るくらいのことは余裕だからな。

 回復用のスキルを持ってはいるけど、トラストルが強すぎてHPが1ドットも減らない。
 スキルを使おうとしても失敗したから、HPが減っていないと発動出来ない仕様らしい。
 少なくとも、≪治癒の願い≫は。

「姫、ここは足元がぬかるんでいるので気を付けてください」

「うん、ありがとうございます」

 強そうな剣を強そうな狼に突き立てたまま。空いた左手を差し出してくる。
 絵面が強すぎてツッコミが追いつかない。
 とりあえずドロップアイテムは拾わせてほしい。

 で、他にスキルを取ればいいかと思ったんだけど、そうもいかなかった。
 暇な時間を有効活用する為、ヘルプも読み漁った。

 キャラ作成空間で受けた説明は、本当に基礎の基礎でしかなかったからな。

 そこで新しく知ったのは、スキルのこと。
 このゲームでは、レベルが上がったからといってスキルを選んで取得することはあまり出来ない。

 一応、≪種族スキル≫に関してはステータスポイントを10ポイント消費することで取得出来る。
 1レベル分と考えると、あれもこれもと取得するのは難しい。

 じゃあどうするかと言うと、種族にクラスとステータス、後は行動によって≪称号≫を獲得することで、新たなスキルが取得出来るらしい。
 だから基本的にはスキルはレベルアップとかはしない。
 取得済のスキルに関しては条件が揃ったら、スキルの進化という形で強くなる。

 大人しくトラストルの後を付いて歩いてた俺にも、新たなスキルが生えてきた。

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