不遇ステータス《魅力》に極降りした結果、《姫》になりました

俊郎

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16 ≪魅力≫のごり押し

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「んん……朝か」

 そんなに広くない部屋のベッドで、眼を覚ました。
 若干疲労感の残る身体を起こしてぐぐっと伸ばす。

 昨日はなんやかんやと気が合って、あの面子で深夜一時頃まで遊んだ。
 しばらく狩りを続けた後、ダンジョン奥のボスに特攻玉砕したところで解散となった。

 そこまで強い感じじゃなかったけど、火力の無さが絶望的だったからな。
 ダリラガン以外は紙耐久であることも合わさって、普通に押し負けてしまった。
 次はなんとか攻略してやるからな!





 いつもの日課を終えて、早速とばかりにヘッドギア型の機械を被る。
 食っちゃ寝とゲームを繰り返してると身体に悪影響が出そうではあるな。
 数時間に一度はログアウトして、現実でも身体を動かすようにするか。
 説明書にもそう推奨されてたし。

 一瞬の暗転の後、広がるのはいつもの景色。
 街の中央にある噴水広場だ。

 まだぎりぎり朝と言える時間だし、特に焦る用事もない。
 まずは昨日の狩りで得たポイントを割り振ってしまおう。

 そういえば、≪種族スキル≫ってまだ自分で取得したことなかったな。
 取るかどうかは別として、リストを見てみるのはありだろう。

 種族スキルの一覧を開くと、取得可能なスキルが並んでいた。
 これも初期から取得可能なもの以外にも、称号やステータスによって増えるらしい。
 十くらいあるのはそのお陰かな。

 一つ一つ効果を読んでいく。
 うーん、≪種族スキル≫っていうのは、方向性を強化する性能が多い気がする。

 例えばこの≪美しい毛並≫。
 ≪魅力≫が一割アップして判定にボーナス。
 またこの系統だ。

 他にも≪敏捷≫や≪魔力≫を底上げしたり、≪魔法攻撃力≫をアップさせるようなスキル。
 ≪狐火≫なんていう、種族専用の攻撃魔法スキルもあった。

 どれも、種族の説明で得意だと書かれていたことに関連している。
 そういえばあの最初に出会った案内係のNPCもそう言ってた気がする。
 得手不得手を表すものだから、必ずしも活かせるものではないって。

 確かに、今の俺が≪狐火≫を取ったところで、攻撃としては活かせそうにない。
 せいぜい照明の代わりか、フレーバー程度だろう。
 妖狐っぽさを増すのに大活躍だ。

 そうなると、せっかくだし≪魅力≫を増やす系のスキルにするか。
 取得するのにステータスポイントを10消費するけど、一割アップなら問題ないだろう。多分。

 ということで、これが現在のステータス。

名前:カオル
種族:妖狐
クラス:プリンセス
レベル:22

ステータス
筋力:1 体力:1 魔力:1 敏捷:1 器用:1 幸運:1 魅力:301(+170)

種族スキル
≪魅惑≫ ≪美しい毛並≫

クラススキル
≪魅力上昇≫ ≪魅了≫ ≪治癒の願い≫ ≪プリンセス・ボックス≫
≪フェイクモーション≫ ≪障壁強化≫ ≪チャーミングショット≫

称号
≪箱入り娘≫ ≪詐欺師≫ ≪守り手≫ ≪お転婆≫

 レベルは、昨日ようやく1上がって22になった。
 流石にこのレベルだと、東の森以外では全然上がらないな。

 ≪種族スキル≫は≪美しい毛並≫をゲット。
 何となく髪の質感が、艶やかさを増した気がする。

 うん、やはり俺は≪魅力≫特化で魅力的になる道しかない。
 今の俺なら出来る気がする。
 ひいき目抜きにしても、可愛いし。

 気になるのは、昨日取得したスキル。
 効果は単純で、遠距離攻撃スキルのようだ。
 説明がこちら。

≪チャーミングショット≫
クラススキル/アクティブ
威力:400%
≪魅力値≫依存の遠距離攻撃を行う

瞳に乗せた貴女の魅力でハートを射抜く
マジカワアタック、キメちゃうゾ

 なんかあれな説明文だけど、その威力は≪魅力≫に依存するらしい。
 これは有用なスキルかもしれない。
 ただ、どうにも説明文がアレだ。
 これを書いた奴がキメちゃってるようにしか思えない。

 まぁいいや。
 これでステータスとスキルの確認は完了。

 今日はどうしようかな。
 相変わらず一人だけど、攻撃用のスキルも手に入れた。
 それを試すのも良いかもしれない。

 だけど、なんとなくそんな気分じゃないな。
 どっちかというと気ままにブラブラしたい。

 困った時のヘルプだ。
 まだまだ初心者の俺にとっては、有益な情報が沢山載っている。

 ふむふむ。
 NPCに話しかけたりすると、イベントやクエストが発生することがあるのか。
 よし、今日は観光しながらクエストをやっていこう。

 恒常クエストは、≪冒険者協会≫というところで受けられるらしい。
 住民たちからの依頼があって、まさに異世界!
 だけど、今日は観光も兼ねている。

 街中をぶらぶら周って、転がっているクエストをクリアして報酬を得るのだ。
 もしかしたら戦闘力に不安のあるキャラはそうやって序盤の経験値を稼ぐのかもしれない。

 噴水広場から、なんとはなしに歩き出す。
 街並みは相変わらずのファンタジー。
 異世界ものの街並みをそっくりそのまま再現したような感じ。

 現代社会とは違う風を感じる。
 ゲームではあるけれど、ここも一つの異世界だよなぁ。

 ドンッ。

 なんて思っていると、何かにぶつかった。
 痛みはなく、軽い衝撃を受けた。
 見上げると、大きな人影が前にあった。
 アイコンの色的にNPCのようだ。

「すみません、大丈夫ですか?」

「おうおう、どこ見て歩いて――か、可愛い」

「え?」

「お嬢ちゃん、良かったらこいつをやるよ。何、ぶつかっちまった迷惑料だと思ってくれ」

「あの」

「それじゃあな」

「ちょ」

 戦士風のNPCは口を挟む余地も無く、足早に去って行った。
 俺の前には、経験値と初級ポーションを入手したログが表示されている。
 
 もらえるものはもらっておくけど、なんだこれ。
 微妙に釈然としないまま、散策を再開する。
 
「うええええええええ! ぶえあああああああ!!」

 突然の泣き叫ぶ声に視線を向けると、一人の幼女NPCがいた。
 大号泣だ。
 近くの人は誰も相手にしていない。

 と思ったら、二人のプレイヤーがやってきて話しかけた。
 先をこされたのは残念だけど、助けてもらえて良かった。

「びぎゃああああああああ!!!」

 と思ったら、また泣き叫びだした。
 二人のプレイヤーは慌てた様子で走り去って行く。
 なんだろう、失敗したのかな。
 もしくは、何かを要求されて探しにいったのかもしれない。

 となれば、俺も話しかけてみよう。

 しかし、女の子への話しかけ方ってどうするんだ。
 そんなの俺が知ってる訳がない。
 どうしよう、どうしよう。

「すみません」

「……」

 結局、普通に敬語で話しかけた。
 大丈夫。エクスキューズミーは世界共通の筈。

 少女はピタッと泣き止んで、まだ涙の残る瞳で俺を見つめてくる。
 何か間違えたか、と思った瞬間、幼女は抱き着いてきた。

「え? え?」

「大好き!」

 少女に抱き着かれて慌ててしまう。
 これ事案では? 普通に逮捕案件では?

 なんてパニックになりかけていたら、まさかの追撃。
 大好き宣言である。
 こんなの、貢いだ直後にしか言われたこと無い。

 なんだこの幸福感は。
 これがVRMMO……なんて素晴らしいんだ≪CPO≫!

「これ、あげる! 街の中で拾ったの!」

「あ、ありがとう」

 幼女から差し出されたのは、古ぼけた袋。
 中に何かが入っているようで、それなりに重量感がある。

「ばいばい!」

 幼女は元気いっぱいに駆けて行った。
 え、何これ。
 俺何もしてないんだけど、クエストってこういうものなの?

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