不遇ステータス《魅力》に極降りした結果、《姫》になりました

俊郎

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19 真のプリンセスへの挑戦権

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 俺達の狩りは、休憩を挟みつつ計二時間程続いた。
 午後一時を周ったところで、お昼ご飯タイムということで一時解散となった。
 他二人はそのまましばらくイン出来ないそうだ。

 リリィは夕方、サンゾウは夜にまた来ると言っていた。
 さて、いつもの如く俺は起きてすぐにご飯を食べてしまっている。
 まだご飯を食べるには早いだろう。

 他のフレンドもまだログインした感じはない。
 せっかくの日曜日だっていうのに何をやってるんだか。

 まぁ、ガチ勢にゴミ呼ばわりされてる極振りをしてる時点で、みんなスタートダッシュとか気にしないまったり勢なのは間違いない。
 俺も楽しめればいいと思ってるし。

 それじゃあこれからどうするか。
 一人での狩りは正直厳しい。
 選択肢が兎を撲殺するしかないからなぁ。
 流石に気が滅入りそうだ。

 しかし、忘れてはいけない。
 丁度一週間後には初のイベントがあり、そこで≪藻屑兄弟≫と戦わなければいけない。
 ガチ勢に勝てる気はしないけど、やるからには勝ちたい。
 勝てなくても、出来るだけのことはしたい。

 だから戦力強化が必要だ。
 そうなると……よし、決まりだ。
 ひさしぶりに、あいつに会いに行こう。





 凶悪なモンスターひしめく東の森。
 その中央付近へとやってきた。
 戦闘になれば即死間違いなしなので、なるべくエンカウントしないようにこっそりと。

 それでも見つかってしまった場合は、箱で閉じ込めてる間に離脱。
 お陰で、死ぬこと無く辿り着くことが出来た。

 開けた空間の中央に、一人の騎士の姿があった。
 トラストルだ。
 相変わらず、お墓の前で佇んでいる。

「こんにちは」

「これは、姫。このような危険なところへ、どうなさったのですか?」

「あ、えっと、お話しに来ました」

「なんと、お心遣いに感謝いたします」

 まさか装備を寄越せとは、NPC相手でも言えない。
 適当にそれっぽい言葉が口から出た。
 特に気にした様子もなく、むしろ嬉しそう

「しかし姫、ここは危険です。街までお送りしましょう」

「あ、はい」

 しかし、流石にここでお話する気にはならなかったようで、移動を提案された。
 前回と同じ流れでパーティーを組んで、街の手前まで戻ってきた。
 相変わらずこのイケメン騎士は強い。
 
 何もしてなくても経験値とドロップアイテムがぼろぼろもらえる。
 うまいうまい。
 延々とこれだけとなるとすぐ飽きるだろうけど、たまのご褒美と思うと喜ばしい限りだ。

「ここまで来ればもう安全です」

「ありがとうございます」

「しかし、あそこまで一人で来られるとは、強くなりましたね」

「はい、お蔭様で」

 今回もレベルが上がりました。
 しかも、もう22なのに短時間で2も。
 前回送ってもらった時よりもモンスターの数が多かった気がするし、すげー高効率だ。

「それに、私の為にあそこまで会いに来てくれた勇気、そして優しさ。とても感銘しました。貴女には、これを手にする資格があると、きっと神の元へと誘われた姫も、思っていることでしょう」

 ピロン。
 
 トラストルが何かを差し出すような動きをすると同時に、アイテム獲得のログが。
 よし、アイテムゲット!
 今回は何をくれたんだろうか。

 ストレージを開き、見慣れないアイテムに意識を向ける。
 詳細が新しいウインドウとなって展開された。

≪プリンセスワンド≫
武器/杖 レア度:A 品質:A
Atk:10 Matk:200
魅力+50
≪プリンセス≫のクラススキルのスキルディレイ-20%
王女が愛用していた魔法の杖。所有者の持つ魅力を引き出し、増幅させる力を持つ。先端の宝石を覆うように飾られた一対の翼は、どこまでも羽ばたいて行ける無限の可能性を表現していると言われている。

 おー、なんか強そう。
 スキルディレイっていうのは、スキルを使用した後に発生する固有の≪間≫のことで、設定された時間が経過するまではスキルの使用が一切出来ない。
 基本的には強力なスキルになればなるほど、長くなる傾向にあるらしい。

 いいものをもらってしまった。

「そしてもう一つ。姫、貴女ならば真のプリンセスを目指すことが可能です。なのでこれを貴女に」

 トラストルはよりいっそう真面目なイケメン顔になった。
 そして、片膝をつき、両手でうやうやしく何かを差し出すような体勢になった。
 え、なんか今までと違う。

 ピロン。

 何かを受け取ったらしい。
 一体何を?
 確認、確認だ。

≪プリンセスドレス≫
防具/鎧 レア度:S 品質:S
Def:20 Mdef:20
魅力+50
≪プリンセス≫のクラススキルの消費MP-20%
≪プリンセス≫とつく装備品の効果を、(対象となる装備品の数)倍する。
王女が愛した勝負服。プリンセスの力を増幅するこのドレスは、真のプリンセスとなった時、その真価を発揮する。ピンクを基調とした可愛らしくも圧倒的な存在感は、王女の持つ可憐さを表現していると言われている。

 なんかとんでもないもの出てきた。
 前のワンピースもそうだったけど、これ絶対序盤で手に入れるレベルの装備じゃないでしょ。
 どう考えても最終装備のたぐいだよ。

 戦力強化が目的ではあったけど、こんなのもらっちゃって本当にいいの?
 ゲームバランス崩壊しない?

「姫、是非とも身に着けた御姿を、私に見せてください」

 トラストルはスッと立ち上がり、期待のこもった視線をぶつけてくる。
 また生着替えをご所望か。
 ゲームじゃなければどんなプレイだよって感じだぞ全く。

 どうせ無限ループだから、素直に着替えることにする。
 ウインドウからワンタッチ。
 それだけで、装備の変更が完了した。

 瞬間、ぶわっと広がりふんわり落ちるスカート。
 上半身は身体にピタッと合わさって、女の子のボディラインがはっきりとしている。
 腰の辺りからボリュームを増して落ちていく。

 少し動いてみる
 針金とかは入ってない感じなのに、不思議な力で形が固定されている。
 なんというか、お姫様、って感じのドレスだ。
 
 基本ピンクで所々白い。
 レースやフリルもいっぱいある。
 可愛過ぎて、俺の語彙力じゃもう説明できない。

「おお、まさに、貴女はプリンセスです……!」

「あ、ありがとうございます」

「本来の持ち主へと返っただけのこと。お礼を言われることではありません」

「あ、はい」

「私が持つプリンセスの装具はそれだけです。真のプリンセスを目指すのならば、世界に散らばる装具を、探し出して下さい。大丈夫、貴方なら出来ます」

「はい。がんばります」

「それでは、私はこの辺りで失礼します。お困りの際には、必ず力となることを約束いたします」

「ありがとうございました」

 トラストルは、晴れやかな顔で去って行った。
 やばい、思った以上の収穫だった。
 だけどまぁ、ちゃんと管理した上でのことだろうし、NPCがくれたんだから問題ないよな。
 大丈夫大丈夫。

 真のプリンセスとやらは、追々目指していこう。
 おっさんだけど。
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