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30 イベントの賞品からの次の目標
しおりを挟むイベントが終了した。
俺とレンは見事もずく兄弟に打ち勝ち、何故か気に入られたらしく、レンは慰謝料代わりに杖をもらうことになった。
人気の少ないところに連れ込まれて、あれやこれや要望を聞きだされたらしい。
ぐったりしていたが、杖の完成は楽しみらしい。
今俺達がいるのは、街の中心から少し外れたところ。
夜のイベントは皆参加しなかったようで、地べたに座って駄弁っていた。
MMO的にはこうして地面に座っていても特におかしいことではないらしく、街の至る所で同様の光景を見ることが出来る。
流石に汚れとかは付かないみたいだ。
こんなに可愛くて綺麗なドレスで、直接地面に座っても気にならない。
まぁ、俺とリリィはリリィが用意してくれた布の上に腰を下ろしている訳だけど。
「あんた達も入賞したんでしょ。何をもらったの?」
「よく聞いてくれました。僕が選んだのは、≪筋力の素≫です」
「オレぁ≪体力の素≫だぜ!」
「……効果は?」
「筋力の基本値に+5です!」
「それの体力バージョンだ!」
「なるほど、あんた達らしいわ」
「そうでしょう。みて下さいこの筋肉、よりいっそう立派になったと思いませんか!?」
「おいおい、オレのこの腹筋と大胸筋も見てくれよ! こいつぁ最早、フィッシュリバー・キャニオン並じゃねぇか!?」
「あの大渓谷になぞらえるとは、やりますね! それでは私の広背筋も見てもらいましょうか!」
「ぎゃー! むさい筋肉を近づけないでよ!」
ダイナとダリラガンが、自慢の筋肉を見せつけようとリリィに迫った。
リリィは悲鳴を上げて距離を取った。
その分だけ、筋肉がずずいと迫る。
自然とその隣に座っていた俺にも接近するわけだが、確かにすごい筋肉だ。
前との違いは分からないが、男なら一度は憧れてしまう。
「えーっと、サンゾウさんも入賞したんだっけ」
「うむ。拙者は昼の部のソロ部門で見事、入賞を果たしたでござる!」
「さすがサンゾウさん」
「すごいですね!」
「いやーははは、照れるでござる。これも姫から賜った≪霞の短剣≫と≪朧の短剣≫のお陰でござるよ」
「サンゾウさんの実力ですよ」
「うん、僕もそう思うよ」
謙遜するサンゾウに、俺とレンで畳み掛ける。
どれだけ武器が強くても、自動的に殴ってくれるわけでもないこの世界では、使いこなせなければ何の役にも立たない。
身体を動かして操作する都合上、プレイヤースキルの割合はどうしても大きくなる。
勿論、ゲームである以上数値も重要なのだが。
サンゾウはこのメンバーの中だと、恐らくソロ性能が一番高い。
高い≪敏捷≫で攻撃は全て避け、攻撃力は武器の性能でカバーしている。
スキルも回避に重点を置いたものが揃っているから、攻撃が当たったと思っても平然としていたりするからな。
始まって十日のこのゲームで、百人以内に収まるのはサンゾウなら余裕だろう。
「夜の部には参加しなくて良かったんですか?」
「各個撃破出来てる内は大丈夫にしても、乱戦は不得手でござるからな。姫や皆と共に過ごす時間を取ったでござる」
夜の部は全員参加のサバイバル。
三回死んだら脱落で、生き残った五百人に賞品が渡されるらしい。
合流出来るかも分からないサバイバルでは、ここの皆は誰も持ち味を活かせない。
だからこうして全員揃っているわけだ。
「しかし、昼の部で良いものをもらったでござる」
「そういえば何をもらったんですか?」
首を自然と傾げてしまった。
おっさんがやると気持ち悪いが、ケモミミ美少女がやったとなれば可愛いが溢れる筈。
実際、サンゾウもレンも嬉しそうにしている。
一番反応しそうなリリィは筋肉二人を杖でしばいていて、気付いていないようだ。
二人とも叩かれてちょっと嬉しそうなのはなんでだろうな。
「ふっふっふ、明日実装されるという、ギルドを作る為に必要な素材の一つでござる!」
「ギルドの!? そんなのもあったんだ、あー、もっとちゃんと見ておけば良かった」
「ギルド? って、ゲームでよくあるシステムですか?」
「そうだよ。今までなかったけど、明日実装されるって公式に載ってたんだけど、そっか、姫ちゃんはそういうの見ない人だったね」
「あはは」
「僕ももらっていればすぐにでもギルドを作れたかもしれないのに」
レンはギルド作成の為に必要な素材が欲しかったらしい。
あの時もずく兄弟に詰め寄られてて大変だったみたいだからな。
じっくり選ぶ余裕もなくて、眼についた武器の素材をもらってもずく兄弟に渡したらしい。
「まぁまぁ、これらの素材も比較的簡単に揃えられるらしいので、そんなに気にしなくても大丈夫でござるよ」
「そうですよ。それにしても、レンさんやサンゾウさんがギルドを作りたいなんて、意外でした」
「え?」
「うん?」
レンを慰めつつ素直な感想を呟いたら、何故か不思議そうな顔をされてしまった。
何故だろう。
だって、この二人がそういうことをしたがるタイプだとは思ってなかったんだ。
そう思ってたのは俺だけだったんだろうか。
気付けば、リリィや鬼コンビですら驚いたような、『何言ってんの?』的な顔をしている。
そうか、そうだったんだな。
どちらかでも、俺も入れてくれたらいいんだけど。
しかし、この空気はどうしよう。
とりあえず聞くしかないか。
そして有耶無耶にしてしまおう。
「えっと、どうかしました?」
「姫、拙者の素材は姫に献上する為に入手してきたものでござるよ」
「え?」
「僕も、姫ちゃんにあげたくてもらえば良かったなって思ったんだよ」
「そうなんですか?」
「お姉様、私達が自分でギルドを設立するなんて、するわけないじゃないですか。お姉様の下でお姉様を姫と崇めて働きたいんですよ!」
「そうですね。僕の筋肉は姫様の為にあります」
「そうだぜ姫さん。あんたがオレ達の大将だ」
「おお……」
皆の中で俺がギルドマスターとしてギルドを作ると、いつの間にか決定事項になっていたようだ。
俺がギルドマスター?
そんな、人の上に立ったり引っ張ったりするような性質じゃないんだけど。
出来る事なら、ゆるーいところで比較的自由にさせて欲しいタイプだ。
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可愛い女の子がギルドマスターの方が、絶対楽しいしな!
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