【幻想小説】跋渉

りつ

文字の大きさ
1 / 1

跋渉

しおりを挟む
 そこはみなそこ。

 柔らかな砂を踏み踏み僕はゆく。珊瑚礁を潰さぬよう、ノレソレの住み処を毀さぬよう。生き物を避けるにはコンクリートを渡るのが良いのだ。青みがかって横たわる校舎を踏み切り板のように使う。僕はふうわりと浮く。足下からやってきた魚群が僕の身体を螺旋状に巡った。僕の頭のてっぺんで、大魚のようだった群れは左右二手に分かれて消えた。
(ここはとっても静かです)
 鉄棒に着地する。強く蹴る。ジャングルジムに着地する。強く蹴る。登り棒の隙間を猫鮫が横切っている。鉄は全て腐食して赤黒い。新雪のような藻に僕の足跡は残らなかった。
(耳の奥がキンとする)
 わぁん、わぁん、泣き声のように反響する。朽ちかけた縁側、物干し竿を辿る。洗濯物はきっと流れて行ってしまった。
 僕はそのときのことを覚えていない。
(ある日突然)
 前触れがあったかも、自分がどこにいたのかも、分からない。
(沈んでしまった)
 気が付いたら此処で揺蕩(たゆた)っていた。白いワイシャツの袖がゆらゆらするのをどんなに眺めていても息苦しくならなかった。静かだった。水面を透かして陽光が差す。いつしか暗く冷たくなる。光陰は繰り返した。静かだった。僕は取り残されたのだ、と思った。
(仕方がないことだったんだ)
 波に巻かれて歩き出した。それから歩き続けている。どこまでも僕はゆく。
(この星の海はただ広い)

 そこはみなそこ。



(了)150329
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

身体交換

廣瀬純七
SF
大富豪の老人の男性と若い女性が身体を交換する話

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

リボーン&リライフ

廣瀬純七
SF
性別を変えて過去に戻って人生をやり直す男の話

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

いまさら謝罪など

あかね
ファンタジー
殿下。謝罪したところでもう遅いのです。

還暦の性 若い彼との恋愛模様

MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。 そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。 その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。 全7話

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

使い捨て聖女の反乱

あんど もあ
ファンタジー
聖女のアネットは、王子の婚約者となり、瘴気の浄化に忙しい日々だ。 やっと浄化を終えると、案の定アネットは聖女の地位をはく奪されて王都から出ていくよう命じられるが…。 ※タイトルが大げさですがコメディです。

処理中です...