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156.割れ鍋に綴じ蓋の小話(day14「裏腹」) #ノベルバー
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ちょっとまずいのかもしれない、ときどきそう思わないわけじゃない。僕の要るものと要らないものはあんまりにもはっきりしている。墨を含ませた筆を半紙に置いたとき、そこには墨の黒と半紙の白、その中間の灰色があるものだけれど、僕の中には黒と白しかないみたいだ。
「悟りを開いたひとみたいじゃない? 晴海がいれば大体それでいいんだよね、僕は」
「何にもいらねー級まで至ったら悟りなんじゃねえの? 湊にはオレが要るんだから悟りはまだだろ。っつーか悟んなよ、捨てられたら泣くぞオレは」
「一理ある」
「まあこの場合、オレも湊がいればそれでいいから平和じゃん。割れ鍋に綴じ蓋ってやつ」
「よろしくないねえ」
言葉とは裏腹に僕たちは笑っていた。一番大事なものが一致している。それがよろしくなくても構わないのだ。
(了)211114
「悟りを開いたひとみたいじゃない? 晴海がいれば大体それでいいんだよね、僕は」
「何にもいらねー級まで至ったら悟りなんじゃねえの? 湊にはオレが要るんだから悟りはまだだろ。っつーか悟んなよ、捨てられたら泣くぞオレは」
「一理ある」
「まあこの場合、オレも湊がいればそれでいいから平和じゃん。割れ鍋に綴じ蓋ってやつ」
「よろしくないねえ」
言葉とは裏腹に僕たちは笑っていた。一番大事なものが一致している。それがよろしくなくても構わないのだ。
(了)211114
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