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194.チェシャ猫の涙:撫でる・足音・安堵 #言の葉パレット #幼なじみのハルミナト
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学校の近くのバス停で知った顔を見掛けた。千佳子が部長を勤める書道部の、部員――の幼なじみである。ベンチがあるのに座りもせず、むっつりとした顔つきでスマートフォンを弄っている。
「こんにちは」
「――あんた」
月島晴海が目線を上げた。千佳子は晴海の脇を抜け、ベンチに腰を下ろす。
「バス乗んの」
「そう。だからここで待たせてもらいます」
利用者なのだから当然の権利だ。嫌がられる可能性も考えて強く主張してみたが、晴海は何を言うでもない。千佳子からスマートフォンに視線を戻そうとし、けれど聞こえてきた足音にぴくりと反応した。
「遅え」
「ごめんね」
箱崎湊が晴海の傍らに立っていた。いつの間にか、ごく自然に。晴海はどこか安堵しているように見えた。千佳子と二人きりで気詰まりだったせいというより、湊が本当にそこにやってきたことにほっとしているようだった。「待て」と言われた犬のところにようよう主が帰ってきて、変わらぬ手つきで撫でてくれたらこんな表情が浮かぶ気がする。
「先輩、お疲れさまでした。また明日」
湊は丁寧に頭を下げる。両手をポケットに突っ込んで、晴海も「じゃーな」と挨拶をした。二人は同じところへ帰るのだろう。幼なじみであることを差し引いてもそう感じさせるような後ろ姿だった。
(了)211222
「こんにちは」
「――あんた」
月島晴海が目線を上げた。千佳子は晴海の脇を抜け、ベンチに腰を下ろす。
「バス乗んの」
「そう。だからここで待たせてもらいます」
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「遅え」
「ごめんね」
箱崎湊が晴海の傍らに立っていた。いつの間にか、ごく自然に。晴海はどこか安堵しているように見えた。千佳子と二人きりで気詰まりだったせいというより、湊が本当にそこにやってきたことにほっとしているようだった。「待て」と言われた犬のところにようよう主が帰ってきて、変わらぬ手つきで撫でてくれたらこんな表情が浮かぶ気がする。
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