【JK百合】人工呼吸

りつ

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人工呼吸

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「ココロが死んでると、らくちんかも」
 ユリエは嘯いた。こってりと口紅を塗った唇だった。
「どうして?」
「なんにも痛くないから」
 制服のスカートから伸びる足は大胆に胡座をかいていて、ぱんつが見えていた。赤くて、レースがいっぱいついていて、なんだか瘡蓋みたいなのだった。
「だから、いっぱいお金が稼げる」
「ふうん」
 ユリエは昔からときどき部屋を訪ねてきては、きれいなベッドでないと眠れない、という。今日も突然やってきてベッドを占領したと思ったら制服のまんま眠ってしまった。わたしが宿題を終わらせるころ、ぱちんと目を覚ました。
「ココロが死んで、大変なことは?」
「大変なこと」
「ないの」
 ユリエは首を傾げた。茶色く傷んだ髪が斜めに流れた。
「ある」
 ノートを閉じた。ユリエの隣に腰掛ける。ユリエは少しだけわたしのほうに身体を寄せた。
「生きてるやつを、殺したくなる」
「すてき」
 思わずぽんと手を合わせる。
「なんだかそれって、生きてるみたい」
 生きているのは、いいことだ。ユリエが生きていると嬉しくなる。
「ねえ」
 ユリエが袖を引いてくる。幼子のように無防備に目を閉じるので、望みはすぐに理解した。
(人工呼吸)
 生きているのは、いいことだ。わたしはいつものように唇を寄せ、ふうっと息を吹き込んだ。



(了)190118
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