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2 新人研修
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「う……、なんか変な感じ……」
「最初だからね。気持ちいいところはこの奥だから」
やはり思ったとおり初めてだった彼の後ろは、中々簡単には解れてくれない。前は萎えたりしていないのに、未だどこか緊張しているからだ。そこを触る前に行うマッサージでも彼の緊張は解けなかった。
最高級とはいかないが、ここもそこそこいいお店なのでそれなりの魔術薬を使っている。僕が魔術師だったら魔力を流してみたりしてもっと有効に使えそうなものだが、ただの一般人にはどうにもできない。
「前触ろっか。ちょっと失礼」
「う、ん、あっ…、やめ、やめてくれ」
「ん? 気持ち悪い? どこか辛い?」
「…………わるくないけど」
そうかまだ羞恥心はあるよな、と反応を見ながら作業を進めていった。耳が赤い。もういっぱいいっぱいという顔だ。お客さんと店主としてしか付き合いのなかった、高い階層から落ちてきた宝物。幾人もの手垢がついても、少し磨くだけでまた輝きを取り戻すだろう。金色の塗料で覆ったクズ鉄ではない。中まで本物の地金は時が経ってもなお美しい。
「もっ……、ダメっ、…………ダメだっ、ダメだ!!」
「いやそんなにダメじゃないよ、さっきより少し──」
良くなってきたから、と言いかけたところで彼が突然大きく動いた。元が付くが、プライドの高いであろう階級の子だ。あまりに刺激が強すぎて、何か思い出したのかもしれない。
もしここでゴネられたら厄介だ。訴えられたらサインを盾に訴え返すしかない。勝つ自信はあるが、非常に面倒だ。仕事に穴を空けるわけには。
突然彼の顔と天井が見えた。埃を完璧に取り去ったいつもの白い石膏彫刻。一瞬沈んだ自分の身体。覚えのあるベッドとシーツの感触、石鹸の匂い。
その中で僕はなぜ唇を奪われている。リカルド、君はどうしたんだ。さっきまで、怯えた子供のようだったのに。
「んっ……!? えっ、リカ……んっ、んん!!」
「…………はっ、…………はあっ、」
どうした。なにがトリガーだ。何に対して興奮しちゃったんだ君は。前は最大の弱点だったか。それは僥倖だ、お客さんに触れられて感じやすい子は人気が出る。じゃなくて今だ、今のこの状況をどうしよう。
彼の力は凄かった。飛馬に乗っていただけのことはある。あの魔獣は馬より速く走れるし、空まで駆ける生き物だ。それについていくための姿勢維持にはそれなりに筋力を必要とする。
剣なんかの稽古もつけてもらっていたのかもしれない。この腕力に物を言わせて、もしお客さんを襲ったら。殴ったら。とてもまずい。しっかり躾を入れなければ。
「…はあっ、やめなさいリカルっ……んっ……!!」
「はぁ、はぁ、ふっ…………!!」
ヤバいヤバいヤバい、完全にマウントを取られている。この子正気じゃない。理性がどっかいっちゃってる。僕のシャツを邪魔とばかりにたくし上げたし下の前釦を外す音までするぞ。どこまでやるんだ。その先どうするかわかってないだろ君は!!
何度抵抗してもまるで効果がなく、大声を出そうとも聞こえやしない。入室時、遮音魔道具のスイッチを入れてしまったことを思い出す。ここの男の子はみんな耳飾りに偽装した警報魔道具をつけているが、僕はつけていない。こんなことは想定外だったからだ。
もう何度口づけられただろう。唇が切れてしまうかと思うくらいまた強く噛まれたが、さっきとは様子が違う。熱い酒のようなものがトロトロと入ってくる。何だよこれ、おかしくないかと思っているうちに熱いものが口から喉、腹、手足まで体内を舐めまわすように広がってゆく。
その熱の広がりと共に、ピリピリとした痺れのような刺激も広がってゆく。頭がぼんやり霞がかってきた。息が上がってきた。これは抵抗したせいではない。それじゃない何か。手に力が入らなくなってきた。魔術薬か。まさか魔薬か。そんな素振りはなかった。一度裸に剥いたのに。どうして。
「レオさん……、挿れたい、挿れさせて」
「はああ!? ダメだって!! 僕は店主!! 君は従業員!! もう忘れちゃったの!?」
「忘れた…。覚えてない…」
「ダメダメダメダメ!! 怒るよ、本当にっ……あっ、あ、あ、ダメだって…ダメっ…………君クビにするよ!!」
得物を前にした獣のような目つきで僕を見下ろし、さっきより大きくしたモノを握って当たり前のように僕の後孔にこすりつけていた彼は、『クビ』の一言でピタッと止まった。君ねえ、ここまでやっといて……それは効くのか。
──────
「何が良くなかったか言ってごらん」
「……すみません。興奮し過ぎました」
「僕は店主。君は?」
「……従業員です」
「もし僕が、さっきみたいなプレイは望んでいないお客さんだったらどうなると思う」
「プ、プレイ……、お怒りになると思います…」
僕はまだクラクラする頭を抱えて懇々と諭した。お客さまをサービスで喜ばせ、自分はお金をいただいて喜ぶ。そういう仕事であるのだと。勿論程度はあるが、自分という商品で楽しむのはお客さんの特権だと。自分も楽しめるならそれはとても良いことだが、まずお客さんが最優先だと。
大金を戴いているのだ。等価交換だ。何が楽しくて何がお嫌なのか、しっかりと聞いて察して楽しませて差しあげるのが仕事だ。明らかにやめろと僕は言っていたぞ、と。
彼はシュンとした顔をしてうなだれていた。元気なのは股間だけだった。
ちょっと幼いかなあ。記憶がなくなったとはいえ、身体はもう子供じゃない。すでに出来上がっている若者なのだ。身体に精神が追いついていない状態なのかもしれない。
でもせっかくの上玉だ、多少の苦労は仕方ない。今日のことはひとまず置いといて、しっかり磨いて働いて貰おう。僕はそう固く決意した。
「最初だからね。気持ちいいところはこの奥だから」
やはり思ったとおり初めてだった彼の後ろは、中々簡単には解れてくれない。前は萎えたりしていないのに、未だどこか緊張しているからだ。そこを触る前に行うマッサージでも彼の緊張は解けなかった。
最高級とはいかないが、ここもそこそこいいお店なのでそれなりの魔術薬を使っている。僕が魔術師だったら魔力を流してみたりしてもっと有効に使えそうなものだが、ただの一般人にはどうにもできない。
「前触ろっか。ちょっと失礼」
「う、ん、あっ…、やめ、やめてくれ」
「ん? 気持ち悪い? どこか辛い?」
「…………わるくないけど」
そうかまだ羞恥心はあるよな、と反応を見ながら作業を進めていった。耳が赤い。もういっぱいいっぱいという顔だ。お客さんと店主としてしか付き合いのなかった、高い階層から落ちてきた宝物。幾人もの手垢がついても、少し磨くだけでまた輝きを取り戻すだろう。金色の塗料で覆ったクズ鉄ではない。中まで本物の地金は時が経ってもなお美しい。
「もっ……、ダメっ、…………ダメだっ、ダメだ!!」
「いやそんなにダメじゃないよ、さっきより少し──」
良くなってきたから、と言いかけたところで彼が突然大きく動いた。元が付くが、プライドの高いであろう階級の子だ。あまりに刺激が強すぎて、何か思い出したのかもしれない。
もしここでゴネられたら厄介だ。訴えられたらサインを盾に訴え返すしかない。勝つ自信はあるが、非常に面倒だ。仕事に穴を空けるわけには。
突然彼の顔と天井が見えた。埃を完璧に取り去ったいつもの白い石膏彫刻。一瞬沈んだ自分の身体。覚えのあるベッドとシーツの感触、石鹸の匂い。
その中で僕はなぜ唇を奪われている。リカルド、君はどうしたんだ。さっきまで、怯えた子供のようだったのに。
「んっ……!? えっ、リカ……んっ、んん!!」
「…………はっ、…………はあっ、」
どうした。なにがトリガーだ。何に対して興奮しちゃったんだ君は。前は最大の弱点だったか。それは僥倖だ、お客さんに触れられて感じやすい子は人気が出る。じゃなくて今だ、今のこの状況をどうしよう。
彼の力は凄かった。飛馬に乗っていただけのことはある。あの魔獣は馬より速く走れるし、空まで駆ける生き物だ。それについていくための姿勢維持にはそれなりに筋力を必要とする。
剣なんかの稽古もつけてもらっていたのかもしれない。この腕力に物を言わせて、もしお客さんを襲ったら。殴ったら。とてもまずい。しっかり躾を入れなければ。
「…はあっ、やめなさいリカルっ……んっ……!!」
「はぁ、はぁ、ふっ…………!!」
ヤバいヤバいヤバい、完全にマウントを取られている。この子正気じゃない。理性がどっかいっちゃってる。僕のシャツを邪魔とばかりにたくし上げたし下の前釦を外す音までするぞ。どこまでやるんだ。その先どうするかわかってないだろ君は!!
何度抵抗してもまるで効果がなく、大声を出そうとも聞こえやしない。入室時、遮音魔道具のスイッチを入れてしまったことを思い出す。ここの男の子はみんな耳飾りに偽装した警報魔道具をつけているが、僕はつけていない。こんなことは想定外だったからだ。
もう何度口づけられただろう。唇が切れてしまうかと思うくらいまた強く噛まれたが、さっきとは様子が違う。熱い酒のようなものがトロトロと入ってくる。何だよこれ、おかしくないかと思っているうちに熱いものが口から喉、腹、手足まで体内を舐めまわすように広がってゆく。
その熱の広がりと共に、ピリピリとした痺れのような刺激も広がってゆく。頭がぼんやり霞がかってきた。息が上がってきた。これは抵抗したせいではない。それじゃない何か。手に力が入らなくなってきた。魔術薬か。まさか魔薬か。そんな素振りはなかった。一度裸に剥いたのに。どうして。
「レオさん……、挿れたい、挿れさせて」
「はああ!? ダメだって!! 僕は店主!! 君は従業員!! もう忘れちゃったの!?」
「忘れた…。覚えてない…」
「ダメダメダメダメ!! 怒るよ、本当にっ……あっ、あ、あ、ダメだって…ダメっ…………君クビにするよ!!」
得物を前にした獣のような目つきで僕を見下ろし、さっきより大きくしたモノを握って当たり前のように僕の後孔にこすりつけていた彼は、『クビ』の一言でピタッと止まった。君ねえ、ここまでやっといて……それは効くのか。
──────
「何が良くなかったか言ってごらん」
「……すみません。興奮し過ぎました」
「僕は店主。君は?」
「……従業員です」
「もし僕が、さっきみたいなプレイは望んでいないお客さんだったらどうなると思う」
「プ、プレイ……、お怒りになると思います…」
僕はまだクラクラする頭を抱えて懇々と諭した。お客さまをサービスで喜ばせ、自分はお金をいただいて喜ぶ。そういう仕事であるのだと。勿論程度はあるが、自分という商品で楽しむのはお客さんの特権だと。自分も楽しめるならそれはとても良いことだが、まずお客さんが最優先だと。
大金を戴いているのだ。等価交換だ。何が楽しくて何がお嫌なのか、しっかりと聞いて察して楽しませて差しあげるのが仕事だ。明らかにやめろと僕は言っていたぞ、と。
彼はシュンとした顔をしてうなだれていた。元気なのは股間だけだった。
ちょっと幼いかなあ。記憶がなくなったとはいえ、身体はもう子供じゃない。すでに出来上がっている若者なのだ。身体に精神が追いついていない状態なのかもしれない。
でもせっかくの上玉だ、多少の苦労は仕方ない。今日のことはひとまず置いといて、しっかり磨いて働いて貰おう。僕はそう固く決意した。
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