濡れた瞳を復讐の色に変えて ~紅き魔眼の魔剣使いは魔術学院にて全てを蹂躙する~

岡田リメイ

文字の大きさ
3 / 19

大剣使いの少年

しおりを挟む

 見上げるほど巨大な校門。
 その学院までを繋ぐ長い一本道。
 その道の端には様々な魔法植物が植えられており、各々新入生達を歓迎していた。
 そして、新入生にやたら絡んでいる植物の姿も目に入る。

「魔ーくれくれくれ!  魔力くれ!  お前らのみみっちい魔力全部くれ!」

 ふと腕を捕まれたような感覚。
 視線を腕に向けると、植物の蔓のようなものが巻き付いている。
 蔓の先を見れば、口の付いた巨大な花の姿があった。

「マクレ草か」

 マクレ草。
 一部を除き大陸全土の至る場所で見られる魔法植物の一種だ。
 彼らは人間と同じ言葉を話し、人間の子供程の知性を持つ。
 そして、生きる為には魔力が必要であり、大気中の魔素を吸い取るか、他者から魔力を流して貰う事で寿命を伸ばす特性も持つ。
 この特性を活かし、マクレ草はペットや使い魔のように扱われる事が多い。

 きれいに配置された彼らを見るに、きっと人々がわざと植えたものだろう。
 人々は魔力を供給し、マクレ草は人々に付き従う。
 このような共生関係を保ちながら現代まで彼らは分布を広げてきたのだ。

「魔力をあげるから放しておくれよ」

 アインは捕まれた右手から魔力を注ぎ込む。

「ん......!  魔力きた......。お前いい奴?」

「まだ足りないみたいだな」

 アインは先ほどよりも強く魔力を流した。

「んん!  しゅき......もっとくれ......」

「あぁ、それじゃ全力でいくよ」

 アインの右手が青白く発行する。
 それと同時に大量の魔力がマクレ草に流された。

「あ、あぁ!!  お前......大しゅき......」

 マクレ草はすっとアインから蔦を放す。
 先ほどの威勢は何処に行ったのやら、とても汐らしくなったマクレ草。
 現金な奴だなんて思うかもしれないが、これが彼らなりの生存戦略なのだ。

「あんまり他の新入生を怖がらせちゃダメだよ?   皆緊張しているからね」

「はい......お前大しゅき......お前の言うこと聞く」

 こう見れば可愛いものだ。
 アインはマクレ草の花弁を優しく撫でた。

 ──自分に従順な使い魔か。
 人間の特性を良く理解している。
 進化の過程で何があったのか。
 この様子を見れば想像に難くない。

「あ~~!  なんなんだこいつら!  俺はお前らに用はないっての!」

「チョーダイ!  魔力チョーダイ!  魔力チョーダイチョーダイ!」

「ベ、別にあんたの魔力なんて欲しくないんだからねっ!」

 アインは声の方に視線を向ける。
 そこには二匹のマクレ草に絡まれる大柄の少年の姿があった。
 アインは苦笑いを浮かべながら、少年を助けるべく近づいた。

「マクレ草にモテモテだね。君は不本意みたいだけど」

 アインは両腕で二匹のマクレ草を掴み魔力を流す。

「アッー!  魔力イッパイ!  魔力イッパイイッパイ!」

「あ、あんた何かの魔力!  嬉しくなんてないんだからっ!」

 そう言いながら、マクレ草達は少年から蔓を放した。

「すまん助かった。初めて見た植物だったもんで困ってたんだ」

 アインは少年を見る。
 赤色の無造作に揃えられた短髪。
 自分より一回り大きいであろう体格。
 自身の背丈ほどの太い剣を背負っており、一目で大剣使いだと分かる。
 そのニカッとした笑みに親しみやすさを覚える。

「それは良かったよ。先ほどの言動からするに、君はガルド地方の出身かな?」

「おう!  俺はガルド地方から来たシルバ・ゴルディドールだ。気軽にシルバって呼んでくれ」

「僕はコーネル山脈の向こうから来たアイン・フォーデン。同じくアインって呼び捨てで呼んでくれると嬉しい」

「わかった。よろしくなアイン!」

 アインとシルバは握手を交わした。

「で、この変な花はなんなんだ?  いきなり腕を掴まれてよ。こんな植物俺の土地にはいなかったぜ?」

「あぁ、それはマクレ草って言う魔法植物なんだ。魔素の少ない土地には基本的に生息していないからガルド地方にはいないかもね」

「なるほどなぁ。俺の地方にはバカでかいサボテンばっかりでよ。こんな植物初めて見たもんだから、ビックリだったぜ」

「バカでかいサボテンも気になるけど......。取り敢えず魔力を流してみると良いよ。面白いものが見れると思うから」

「魔力をか?」

「目一杯注ぎ込んでやるといい」

「何が起こるんだ?  まぁアインがそう言うならやってみるか」

 シルバは不思議そうな顔をしながらマクレ草に触れる。
 そして、魔力を注ぎ込んだ。

「 「しゅ、しゅき~~!」 」

「なんだこいつら!?」

 魔力を込めた途端媚びるような態度を取るマクレ草。
 シルバは顔をひきつらせながらアインの方を向く。

「マクレ草は魔力を流してくれた人に付き従う特性があるんだ。だから魔力を貰うために君に絡んでいたんだと思うよ」

「はぁ~。なんだそれ。現金な奴らだな」

「まぁそこがチャーミングなんだけど。でもあまり長居はしない方がいい。魔力が空になるまで絡まれ続けるかもしれないからね」

「それは怖ぇ......早く学院内に入っちまおうぜ」

 マクレ草を嫌そうに見つめるシルバと共に、アインはフラワーロードを足早に通り過ぎるのであった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

最強スライムはぺットであって従魔ではない。ご主人様に仇なす奴は万死に値する。

棚から現ナマ
ファンタジー
スーはペットとして飼われているレベル2のスライムだ。この世界のスライムはレベル2までしか存在しない。それなのにスーは偶然にもワイバーンを食べてレベルアップをしてしまう。スーはこの世界で唯一のレベル2を超えた存在となり、スライムではあり得ない能力を身に付けてしまう。体力や攻撃力は勿論、知能も高くなった。だから自我やプライドも出てきたのだが、自分がペットだということを嫌がるどころか誇りとしている。なんならご主人様LOVEが加速してしまった。そんなスーを飼っているティナは、ひょんなことから王立魔法学園に入学することになってしまう。『違いますっ。私は学園に入学するために来たんじゃありません。下働きとして働くために来たんです!』『はぁ? 俺が従魔だってぇ、馬鹿にするなっ! 俺はご主人様に愛されているペットなんだっ。そこいらの野良と一緒にするんじゃねぇ!』最高レベルのテイマーだと勘違いされてしまうティナと、自分の持てる全ての能力をもって、大好きなご主人様のために頑張る最強スライムスーの物語。他サイトにも投稿しています。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

地味な薬草師だった俺が、実は村の生命線でした

阿里
ファンタジー
恋人に裏切られ、村を追い出された青年エド。彼の地味な仕事は誰にも評価されず、ただの「役立たず」として切り捨てられた。だが、それは間違いだった。旅の魔術師エリーゼと出会った彼は、自分の能力が秘めていた真の価値を知る。魔術と薬草を組み合わせた彼の秘薬は、やがて王国を救うほどの力となり、エドは英雄として名を馳せていく。そして、彼が去った村は、彼がいた頃には気づかなかった「地味な薬」の恩恵を失い、静かに破滅へと向かっていくのだった。

魔法筆職人の俺が居なくなったら、お前ら魔法使えないけど良いんだよな?!

川井田ナツナ
ファンタジー
俺は慈悲深い人間だ。 だから、魔法の『ま』の字も理解していない住民たちに俺の作った魔法筆を使わせてあげていた。 だが、国の総意は『国家転覆罪で国外追放』だとよ。 馬鹿だとは思っていたが、俺の想像を絶する馬鹿だったとはな……。 俺が居なくなったら、お前ら魔法使えなくて生活困るだろうけど良いってことだよな??

二十年仕えた王女が私を敵に売った。それでも守ることにした

セッシー
ファンタジー
二十年間、王女殿下の護衛騎士として仕えた。その殿下が、私を敵に売った。 牢の中で事実を知り、一分考えて——逃げることにした。殿下の目的を、まだ果たしていないから。 裏切りの真相を確かめるため、一人王都へ戻る護衛騎士の話。

処理中です...