The war of searching

黒縁めがね

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テリウス砦攻防戦、"短"

第9話交渉、①

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正門城壁前の広場。ロビンは王国兵の喉に右手に持つグレイブの刃を当て、グレイブのしたから左手を王国兵の左肩を掴み、腕をクロスしながら前に突き出したような状態になった。
「まっ___」
王国兵は身動きが取れず、何かを喋ろうとしたがそれを無視してロビンは腕を元に引き戻した。王国兵の喉には深い"溝"ができ、そこから鮮血が舞う。
砦館内前から言葉が聞こえた。
「さあ、お前は奪うか?」
聞こえた方を見ると黒の悪魔とアメリナ、そしてアメリナの手には"例の兵"の頭が握られていた。
「始まった、ジャック行くぞ。」
ロビンはそういうと砦館前まで走っていく。
ロビンの後ろにいるジャックは頭から血まみれになり、左手にはサーベルが、右手には血の滴る苦痛に表情を歪めた王国兵の首が握られていた。
「うん、行っど」
短く肯定の意を述べると走るロビンの背をジャックは追った。

~~~


「デイビッドを人質に取って、何をする気だ。お前等は」
「まあ、そう睨まず、落ち着いて。
私は話がしたいだけだ。」
メネはアメリナを睨みつけながら言うがアメリナは煽るように宥める。
そして宥める時アメリナとメネの目があった。
「貴様…そんな交換条件に乗ると思ったのか!」
メネは何かを知ったように喋る。
「ああ。お前のギフトは確か、"目が会ったら相手の考えている事が分かる"、だよな。
なら断ればコレがどうなるかも、分かるよな。」
アメリナは不敵な笑みを浮かべた。
するとアメリナへ1人の王国兵がメイスを持ち背後から斬りかかる。だがそれは横から飛び出した影が、グレイブの柄で受けることにより失敗に終わる。グレイブを持った帝国兵…ロビンだった。ロビンは左半身を突き出しながらメイスを流すと石突で王国兵の側頭部を殴打、よろめいた王国兵の首をグレイブで斬る。
王国兵は血を撒き散らしながら地に沈む。
「えりゃァァァァァァァぁ!」
続いてアメリナに迫ったのは大槌を持った王国兵、大槌を振り上げながらアメリナめがけて突進していた。が、横からジャックが飛び出し鎧のない右肘と左肘にサーベルを振り下ろす。
見事に切断し、二つの腕が宙を舞う。
「アアアッ!」
悲鳴を上げながら右に倒れ込み、身を捩らせる王国兵。
「不意打ちは良うなかど。」
そう言い倒れ込んだ王国兵の胸を右足で踏みつけ、喉にサーベルを差し込んだ。王国兵は動かなくなる。
「そう言う訳だ、邪魔はお互いはいらない。
さあ、あと10秒以内に選べ。コレか、首か。
10、9、8、7、6、_____________」
メネの瞳が震えている。だらだらと汗をかく、ツヴァイヘンダーを持つ手が震えている、隠しきれない動揺、10秒では正解できない問題…
だが、正解はできなくとも最善の決断は出せる。
「5、4、3、2、_____________」
「わ、わかった。投…降、投降するから、だから、デイビッドは…」
そう涙声になりながらメネは兜を取り外し、ツヴァイヘンダーを地面に置き、跪く。
その顔は涙でぐしゃぐしゃだった。
(…私も乗った提案とは言えども、気分が悪いな。)
実際、アメリナのやることは道徳のどの字も無いような下劣で卑怯なやり方。
だがそれを咎める者は皆、戦争で死んだ。
そしてそのやり方が最も戦場に適したやり方なのだから、手を染めない訳にはいかない。
「…いいだろう。」
「遅れてすまん。お、成功したみたいだなあ。」
「大隊長、縛ってもらっても?」
大隊長がやってきた。
どうやらここに来るまでに複数の王国兵とやり合ったらしく、返り血で汚れた鎧、どれも浅いが形の違う傷が大腿や肘にある事がその量を物語っている。
大隊長は腰のベルトにあるポーチから紐を照り出すと、跪ずいたメネの手に縛ろうとする。

_____________砦館二階が崩れ、炎が噴き出す。その炎は朝焼けに似て、赤だけではなく、橙や桃、青、紫、複数の色が入り混じっている。炎の中から人影が見える、バケツ形の兜の両側面には羽のプレートの装飾が施されている。ただの鎧では無く、鱗のように一枚一枚重なった鎧___スケールアーマーを装着し、肘当てや膝当てなど、関節を守る防具を装着していた。そう、全て元凶の騎士、払暁だった。
手にはツーハンドソードが握られている。
その鎧をきた人影は剣を二階から地面へ投げ捨てた。
「エルドル様…」
メネは呟く。
続いて人影は飛び降りると着地すると同時に衝撃を体から逃せるように転がる。
「こんなのありかよ…」
大隊長はそう言いながらブロートソードを引き抜き、構える。
「なぜ"払暁"がここに…!」
アメリナは驚く。
払暁は地面に刺さったツーハンドソードを引き抜く。そのツーハンドソードには、花とその花の目の彫り物が施されていて、それは鍔元から剣先へ向かうほど小さく、細くなっている。
払暁は、突如として燃え始める。
頭、首、胴…一瞬にして全身が燃えた。
払暁はメネの方を向いた。
すると大隊長と目が合った。
「そこを、退け。」
払暁はそうとだけ大隊長に命令する、
だが大隊長は一向に退く気配を見せない。
だが、手は震え冷や汗を垂れ流している。怖いのだ、これだけの戦力がいながら恐怖を感じていた。
「退く気のないようならば、話を変えよう。
帝国の犬ども、貴様らを人質に取る。」
払暁はそう言った。馬鹿げた言葉だが、そこには嘘は無く全てが本気である事が、放たれるさっきから感じ取れる。
「殺されたくなければ、今すぐ退くといい。私も悪魔では無い、命までは取らぬ。
が。もし退かないのならば貴様らにはここで死んでもらう」
冷や汗が、止まらない。大隊長、アメリナ。ロビン、ジャック。その場の全員が感じた、本能が訴える恐怖。
しばらくの沈黙、それを破ったのはジャックだった。
「…退きもんそ、大隊長。」
大隊長は反論することも無く、相槌を打つわけでも無く、ただ頷いた。
そして、ゆっくりとアメリナの方へ下がって行った。するとジャックは撤退の2文字を叫んだ。
「撤退いィィィィィィ!」
帝国兵はそれを聞くと、門に押しかけ皆走り逃げる。アメリナは掴んでいるデイビッドを脇に抱え、大隊長たちと門へ走る。王国兵たちは勝鬨を上げていた。
「!、おい待て、デイビッドを___________」
遮るように払暁は手をかざした。
「あの子供は生きている、貴様も生きている。
足し引きはこれで元通り、零だ。
これ以上は、望むまい。」
払暁はそういうとメネに手を貸した。


テリウス砦攻略戦は失敗に終わった。


~~~


「なぜ逃げ仰たのですカ?」
黒い剣士はテリウス砦の右にある森の中、テントの金具を地面に差す鎧をとった農民服のアンに問いかけた。アンは手を止めて、黒い剣士の問いかけに応じる。
「陛下の命は、正しくは"味方ともども死せぬ程度に奮闘すると良い"なので。それにあなたにはまたやってもらいたい事がありますし、ここで死なれると困るのです。」
黒い剣士は呆れたようにため息を吐いた。
「…給与は払って下さいヨ。」
黒い剣士はそうとだけ言った。
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