The war of searching

黒縁めがね

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ベルム闘争戦

小休憩

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デイビッドはベッドから起き上がる。
寝癖がひどく、両側頭部の髪は犬の耳のようになっていた上に、朝日が眩しいのか睨んだような目___
いわゆるジト目になっていた。
「…ん、朝…」
立ち上がり目を擦る。さらに伸びてみたが、全くと言っていいほど眠気が取れない。
こんこんとドアを誰かが叩いたようだ。
「デイビッド、起きない!開けるわよ!」
「……………うん。」
力無く答えると、ドアは豪快に開けられた。
ポーチを下げているハイミルナンは元気いっぱいの様子、一方となりのヨーストはボサボサの頭と糸のように細めた目で小さくデイビッドにおはようと挨拶をした。鎧を脱いだ彼は少し細長く見える、さらにハイミルナンに叩き起こされたであろうその様子はまるで萎れたもやしだ、見るに耐えない。
ハイミルナンはデイビッドを見るなり笑で噴き出しながら
「何よその髪としかめっ面!毛の手入れをしてない狼みたいな髪型ね、アハハハハッ!」
と言った。好きでこんな悲惨な髪型と顔をしているわけじゃ無い。そこまで思ったが口にはしなかった。
まあ、少なくとも彼女がここまで馬鹿にしたり、騒いだり、こんな悲惨な格好ができるのはこのレイジェナードが未だ安全である事の物証なのだろう。
ヨーストとデイビッドをベッドに座らせると
彼女はポーチから櫛を取り出した。
デイビッドの前に立つハイミルナン。デイビッドはやはりまだ眠いようで頭をガクッ、ガクッ、ガクッと揺らしていた。
「髪型なんとかしてあげる」
そう言うと彼女は、デイビッドの頭に櫛を通して髪型を整えていく。髪が硬いせいか、時々引っかかるがその度に力ずくでひっぱるので、デイビッドは度々「いたっ」と声をあげる。
痛みのおかげで目が覚めてきた。
デイビッドの目はジト目ではなくなり、いつもの目になった。
デイビッドの髪を整え終えると、ヨーストへ近づくが、ヨーストはデイビッドのやられ方を見てハイミルナンに手を差し出しながら
「俺は自分でやるよ……」
そう眠そうに言い、ハイミルナンはヨーストに
櫛を渡した。
「今日は2人は何するんだ。」
ヨーストは髪を整えながら2人に問う。
「僕は、ちゃんとした武器が欲しいから役所に行くよ。」
デイビッドのロングソードは、先の二戦で刃が欠け、ボロボロだった。ではなぜ役所に行くかと言うと、兵士は武器などを欠損や紛失などをした時、役所に紛失届を出すと役所が武器を一つ、支給してくれるからだ。
「私は、ちょっと行かなきゃ行けないところがあるから…あ、場所は秘密よ。」
ハイミルナンは意味深に言う。が、意味を聞く理由も無い。
「そういうヨーストは?」
デイビッドは聞いた。ヨーストは2人にニヤリと笑いながら自慢するように答えた。
「予約した娼館で一発___
乾いた破裂音が、宿の一室に響いた。


「じゃあ、また宿で。」
デイビッドはハイミルナンと、ハイミルナンによって付けられたビンタの跡が左頬に痛々しく残るヨーストに言い、2人は頷く。
デイビッドはレイジェナードの中心地に向けて歩き出す。それを見送る2人。
デイビッドが道の角を曲がり見えなくなるとヨーストは口を開いた。
「なぁ、俺もう行っていい?つーかなんで叩いたし。」
ヨーストの問いにメネは目を合わせる事なく気怠げに答える。
「この街じゃ娼館は職についた二十歳以上じゃ無いと利用できないわよ。
それに取り締まりしているとは言え、最近は未成年にも予約させてぼったくりとか濡れ衣着せてくる娼館多いらしいからね。あんたが予約したのもまさにそれじゃ無いの?」
「じゃあなんで叩いた!つーかそういう事なら早く言えよ、てかなんで知ってるんだよ!」
メネの予想外の答えにヨーストは驚きながら言う、メネはさらに追加で答える。
「私のママとパパが出会う前、私のパパが旅行に来た時に引っかかりかけたのよ。
叩いたのは、なんとなく。」
「えぇ…」
ヨーストはその言葉を聞くと、ハイミルナンの父に同情すると同時になんとなくで人を叩く彼女の人間性に驚く。
「それじゃ、私も行くからまた宿で会いましょう!」
先程の気怠げさとは一変いつも通りの明るい声に切り替わりそう言うとデイビッドの向かった方とは逆に歩いて行った。ヨーストはハイミルナンが道を曲がるまで見送ると、ヨーストは呟いた。
「レストランでも行って、暇潰すか…」
ヨーストは自業自得で散々な朝だと思いながら
ため息をついた。
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