The war of searching

黒縁めがね

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コーラス遺跡都市防略

第37話コーラル謀略17/頭が晴れる/尻拭いの始まり/投擲/蠍の尾

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「___何ですか、それは。」
「はぁ?ゲーム機だぞ、ゲーム機。」
それでもアルドラは、わからないようで顔を顰めながら黙り込んでしまった。ハセガワも何が何だかよくわからなくなってしまったようで
同じく黙り込む。数秒の沈黙が、静寂が訪れた。
そして、その静寂を破り去ったのはアルドラだった。アルドラは、何か勘付いたような表情で左手のひらに右拳をぽんと置いて話す。
「もしや遺物の事ですかね。異国ではゲーム機とでも言うのですか?」
「い、遺物…?」
ハセガワは何かがおかしいと思った。
いや、弓や剣を持った兵士達に拘束されている時点ですでに何もかもおかしいのだがハセガワの知識では、あのゲーム機は知らない者などいないと言えるほどに有名のはず。
新型のゲーム機が出たりすると、前のゲーム機の事を遺物という人々もいるが、それはあくまでゲーム機のことを知っているからそう言っているのであって、ゲーム機を知らない人が使う言葉では無い。
「な…なぁ、今は西暦何年なんだ?」
「西暦?さっきから訳の分からないことを言うのですね、貴方は。確か、ミレス帝国は建国してから386年ほどですが。」
ハセガワは困惑した。西暦を聞いたのに、何故か国歴を伝えてきたことに。それと同時に、頭のこの中途半端なモヤが少し晴れるような感覚がした。全てでは無いが、3つ思い出した事がある。
(…コールドスリープ実験…強化人間…研究…)
頭の中に何かが流れ込んでくるような慣れない感覚の苦痛に思わず目を瞑った。アルドラはそれを見ると、何かを察したように何も言わず収まるまで見ていた。

苦痛が、感覚が収まりハセガワは目を開けた。
まだモヤは晴れ切っていない。が、思い出した3つの事からわかった事が一つあった。
(俺は…この時代の人間じゃない…のか…?)
アルドラは、ハセガワの苦痛が収まったのを確認すると口を開いた。
「そういえば貴方、どうして倉庫の中にいたのですかね。そういうギフトですか?」


「ギフト?強化人間について知ってるのか、アンタは?」


~~~



玉座の間。
二つの玉座の前にあるのはかつて皇王だった干からびた一つの死体。それが身につける白銀の王冠をアインは踏み砕いた。そして、そのまま何食わぬ顔で、皇王が座していた玉座へ腰を下ろす。そして執行騎士達と鬼狼は玉座の前に横一列に整列し跪いた。
アインはそれを見ると口を開く。
「始まる。そこの欲に塗れたクソの尻拭いが」


~~~


「3班から5班後退。マイク隊に合流、援護する。」
メネはそう後ろへ下がりながら王国兵達に指示を出した。防壁下で戦う王国兵は3分の2に数を減らし、3分の1はメネと共に後退して行く。
背後に見えるのはただその場に立ち竦む両軍の歩兵・騎兵達とその間にて凄まじい剣戟で斬り合うロビンとマイクがいた。
「一騎打ちか…面倒だなぁ。まぁ仕方ないか、戦争だし。」
メネはそう呟くと隣に立つ兵士のロングソードを右手で掴み取り上げ、槍投げのように逆手に持ち構えると___


___投げる。
投げられたロングソードは弧を描きながら2人に迫り、ロビンの馬の首へ命中した。ロビンの馬は跳ね、飛び、荒ぶりロビンは馬から転げ落ち馬はそれと同時に右に倒れ、そのままぐったりと動かなくなった。その光景に両軍はざわめくとマイク隊の王国兵が、
「げ、下劣な帝国兵の仕業だ!ざまぁみろ!」
と言った。それを皮切りに王国兵は帝国兵を罵倒し始める。だが帝国兵はそれに対し「俺たちはやっていない」や、「お前らがやったんだろ!」と王国兵へ反発する。
メネはその光景を見ると、叫んだ。
「下劣な帝国兵に報いを、突撃!」
メネの隊の兵士達は何食わぬ顔でそれに従い突撃して行った。それにマイクの隊の兵士達も釣られてしまったのか共に突撃してしまう。
「貴様、騙したな!」
「それはそっちだろうが!」
そう罵倒し合い、斬り合い始めるマイクとロビン。メネはその光景を見ると一言。
「奪い、奪われるだけの戦争なのに何やってるんだろ。あの2人」
すると先程メネが取り上げたロングソードを持っていた王国兵が話しかける。
「あの、自分はどうすれば?」
「ん、ありがとうね。」
メネは腰に刺してあったショートソードを引き抜き王国兵に渡す。王国兵はそれを受け取ると、「ありがとうございます」と言い、帝国兵へ突撃して行った。

メネは辺りを"誰か"を探すように見回す。
奪い合う兵士達、響く断末魔と空を舞う血。
その"誰か"は、見つからない。
「…今回は居ないのかな。」
メネは帝国兵の方を向き、歩み始めた。


馬の死体が辺りに転がっている。
どうやら帝国兵の一部は馬を仕留められたようだ。
「うおおおお!」
長槍を持った帝国兵がメネへ迫り、左内太ももを狙い突き出すが、メネはそれを膝で蹴り上げる。蹴り上げられた槍はメネの頭の横の空を突き刺した。メネはすかさず帝国兵の頭を右手で掴みツヴァイヘンダーの剣先を喉に捩じ込み、引き抜く。喉から血の花を咲かせる帝国兵を右へ放り投げた。そして、左から戦斧を持った帝国兵はメネの左首筋を狙い右から左へ大きく薙ぐ。メネはそれをしゃがんで躱し、空いた顎へアッパーをぶち込んだ。帝国兵は後ろにゆっくりと倒れた。
そして___


___大地は揺れる。
「突撃じゃぁぁぁぁぉぁあ!」
そのジャックの掛け声と共に前から迫る多数の騎手が迫る。一矢報いようと奮闘するも蹴散らされていく兵達。歩兵では騎兵の大した相手にもならないのだ。


~~~




「あーあ。増援の援護に行っちゃったなァ黒い悪魔ちゃンッ!」
そう言いながら、大隊長は王国兵の喉笛をブロートソードで切り裂いた。
そして右から新たに迫る王国兵の股関節を狙った槍の突き上げを後ろに動き、空を突き上げた
槍を掴もうと左手を伸ばす。王国兵はそれを嫌がり右半身を引くように槍を隠した。
大隊長は槍から左二の腕に手を伸ばし変え、がっしりと掴み上に持ち上げる。露になった左肋に大隊長はすかさずブロートソードを逆手に空中で持ち変え左肋に水平に刃を捩じ込んだ。
「うぐぶっ」
そう声を上げながら血を吐いた王国兵。
大隊長が止めを刺そうとしたその時、凄まじい三つの殺気が左から迫った。
大隊長はしゃがみ、その殺気を躱す。

迫り来るは三つの流星。
それは王国兵の頭を、腕を、胴を穿つ。粉々になったそれらは鮮血を、肉塊を撒き散らし、じゃじゃらと鎖の音を立てながらその使い手の元に流れ戻る。
「全く、蛮族如きがちょこまかと。」
持ち主の男はそう言い放つ。
その手に握られる棒に鎖で繋がれた三つの鉄球、そのどれもが痛々しい棘が生えていた。
それは何処か星に似て、それが振るわれる様は星のようだった。
「フレイルってやつか?」
大隊長のその問いに、持ち主はニヤリと笑い言った。
「惜しい、スコーピオンテイルです。」

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初めまして、"Mr.後書き伝言"です。

黒縁曰く、"タイトル変更したけれど、下のがわかりづらいから一応しばらく前タイトルつけときます"
だそうです。これからご愛読お願いいたします。
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