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おっさんと戦い
ルーエvs魔人
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「ほら、爆発魔術を好きなだけ使える場所に飛ばしてやったんだ。気合いを入れるといい」
そう言った瞬間、魔人は自らの獲物をルーエめがけて投げ飛ばした。
「意外性で勝負ということか? それなら……」
指を動かして大剣の軌道を逸らすと、正面にいたはずの魔人の姿が消えている。
トマス……贄との同期が済んだことで、魔人は先ほどよりも遥かに優れたスピードを手にしていたのだ。
彼は大剣を隠れ蓑にしてルーエの意識を逸らしている間に、風のように彼女の背後へ回り込んでいた。
そして、握りしめた右の拳で彼女の心臓を貫くべく――。
「最初の勝負は私の勝ちということでいいな?」
音を置き去りにして放たれた拳は、それがピッタリと収まるような黒い「空間」によって止められる。
「心臓を狙うというのは良い判断だが、少しばかり安直すぎじゃないか? あいにくだがジオ以外に触れられたくはないし、ヤギ頭の魔人は賢いと聞いたことがあったが……もしや創作だったか」
人間の言葉を理解しているかは定かではないが、魔人はルーエの言葉に耳を貸さず、地面に炎の弾を放つことで砂煙を上げる。
「距離を取ったか。さて、次はなんの勝負にする?」
接近戦では分が悪いと踏んだのか、魔人は遠距離から炎の弾を発射する。
「ふむ」
ルーエが指で弾の軌道を逸らすと、それは地面に触れた瞬間に弾け飛んだ。
「爆発を圧縮させて飛ばしているのか。なかなか良い威力をしているな」
続けて爆裂弾が放たれた。
1発でも凄まじい威力を秘めているそれを連射するが、ルーエは涼しげな顔をしている。
彼女の周囲に無数の黒い球体が出現し、その一つ一つが高速で爆裂弾に向かっていく。
黒球は爆裂弾と衝突するが爆発は起きず、そのまま貫通して魔人の身体を貫いた。
「しかし、中心に火種があることが弱点にもなっている。私の球が全て削り取ってしまったぞ」
ルーエの魔術によって出現した球は、攻撃範囲こそ狭いが触れるもの全てを削り取る性質を持っていた。
そのため、爆裂弾の格たる火種を削り、その機能を奪ったのだ。
さらに、削り取ることで速度の低下もなく、油断していた魔人の身体に無数の風穴が開くことになった。
「……治癒能力があるのか。これはまた厄介だな」
風穴はみるみるうちに塞がり、なんのダメージにもなっていないようだった。
「そろそろ最後の勝負にするか? 見せてくれよ、奥の手があるのなら」
余裕の態度を崩さないルーエに業を煮やしたのか、魔人は耳をつんざくような咆哮をあげると、爆破魔術の連打をルーエに放った。
爆発に砂埃が舞い、やがて晴れると無傷の姿が。
「……これで終わりか?」
そう言って首を傾げるルーエの背後。
魔人が無くしたはずの大剣を再び投擲する。
「……得意な爆破呪文を陽動に使うのは見事だな。視界を奪っている間に獲物を回収し、油断したところに投げる……か」
大剣は地面から伸びる黒い柱に阻まれ、その勢いを失った。
ルーエは振り向き、万策尽きた魔人の姿を確認する。
「そんなに動揺することじゃない。酷く震えているじゃないか――」
いや、違う。
魔人は恐怖で震えているのではなく、その存在そのものが揺れていた。
「しまった――」
背後から伸びる手刀がルーエの身体を貫く。
「……油断したのはお前の方だ。私の奥の手は爆破魔術ではなく分身。お前は自らの驕りが故に死ぬのだ」
魔人の腕は彼女の身体を貫通している。
「そ……うか。最後の勝負は……」
「あぁ。強大な力を持ちながら受けに徹していたお前と、着々と準備を進めていた私。真の勝者は――」
「――私ということか」
振り返り、邪悪な笑みを浮かべるルーエを見て、魔人の背筋が凍りつく。
彼が視線を落とすと、確かに手刀は相手の身体を貫いているが、本来通っているはずの液体は流れていない。
「お前が腕を突っ込んでいるのは私の身体じゃなくて『闇』だよ。そら、抜いてみるといい」
必死にもがくが、一度闇に囚われた腕はぴくりとも動かない。
ルーエが前へ歩き出すと、真っ黒に染まった魔人の腕だけが空間に固定されていた。
「さて、最後に二つアドバイスをやろう」
魔術によって魔人を半透明の球体で覆うと、ルーエはそれに手をかざす。
「まず一つ。お前の爆破魔術は無駄が多い。このように威力が逃げないようにしてやれば……」
魔人が何かを叫んでいるが、その声は球体の外には聞こえない。
やがて爆発が空間内を覆い尽くし、視界が確保できた頃には何一つ残っていなかった。
「治癒能力も意味をなさない。そして二つ……」
ルーエは焼けこげた一部分に背を向けて歩き出す。
「魔人が魔王に勝てるわけがないだろう」
そう言った瞬間、魔人は自らの獲物をルーエめがけて投げ飛ばした。
「意外性で勝負ということか? それなら……」
指を動かして大剣の軌道を逸らすと、正面にいたはずの魔人の姿が消えている。
トマス……贄との同期が済んだことで、魔人は先ほどよりも遥かに優れたスピードを手にしていたのだ。
彼は大剣を隠れ蓑にしてルーエの意識を逸らしている間に、風のように彼女の背後へ回り込んでいた。
そして、握りしめた右の拳で彼女の心臓を貫くべく――。
「最初の勝負は私の勝ちということでいいな?」
音を置き去りにして放たれた拳は、それがピッタリと収まるような黒い「空間」によって止められる。
「心臓を狙うというのは良い判断だが、少しばかり安直すぎじゃないか? あいにくだがジオ以外に触れられたくはないし、ヤギ頭の魔人は賢いと聞いたことがあったが……もしや創作だったか」
人間の言葉を理解しているかは定かではないが、魔人はルーエの言葉に耳を貸さず、地面に炎の弾を放つことで砂煙を上げる。
「距離を取ったか。さて、次はなんの勝負にする?」
接近戦では分が悪いと踏んだのか、魔人は遠距離から炎の弾を発射する。
「ふむ」
ルーエが指で弾の軌道を逸らすと、それは地面に触れた瞬間に弾け飛んだ。
「爆発を圧縮させて飛ばしているのか。なかなか良い威力をしているな」
続けて爆裂弾が放たれた。
1発でも凄まじい威力を秘めているそれを連射するが、ルーエは涼しげな顔をしている。
彼女の周囲に無数の黒い球体が出現し、その一つ一つが高速で爆裂弾に向かっていく。
黒球は爆裂弾と衝突するが爆発は起きず、そのまま貫通して魔人の身体を貫いた。
「しかし、中心に火種があることが弱点にもなっている。私の球が全て削り取ってしまったぞ」
ルーエの魔術によって出現した球は、攻撃範囲こそ狭いが触れるもの全てを削り取る性質を持っていた。
そのため、爆裂弾の格たる火種を削り、その機能を奪ったのだ。
さらに、削り取ることで速度の低下もなく、油断していた魔人の身体に無数の風穴が開くことになった。
「……治癒能力があるのか。これはまた厄介だな」
風穴はみるみるうちに塞がり、なんのダメージにもなっていないようだった。
「そろそろ最後の勝負にするか? 見せてくれよ、奥の手があるのなら」
余裕の態度を崩さないルーエに業を煮やしたのか、魔人は耳をつんざくような咆哮をあげると、爆破魔術の連打をルーエに放った。
爆発に砂埃が舞い、やがて晴れると無傷の姿が。
「……これで終わりか?」
そう言って首を傾げるルーエの背後。
魔人が無くしたはずの大剣を再び投擲する。
「……得意な爆破呪文を陽動に使うのは見事だな。視界を奪っている間に獲物を回収し、油断したところに投げる……か」
大剣は地面から伸びる黒い柱に阻まれ、その勢いを失った。
ルーエは振り向き、万策尽きた魔人の姿を確認する。
「そんなに動揺することじゃない。酷く震えているじゃないか――」
いや、違う。
魔人は恐怖で震えているのではなく、その存在そのものが揺れていた。
「しまった――」
背後から伸びる手刀がルーエの身体を貫く。
「……油断したのはお前の方だ。私の奥の手は爆破魔術ではなく分身。お前は自らの驕りが故に死ぬのだ」
魔人の腕は彼女の身体を貫通している。
「そ……うか。最後の勝負は……」
「あぁ。強大な力を持ちながら受けに徹していたお前と、着々と準備を進めていた私。真の勝者は――」
「――私ということか」
振り返り、邪悪な笑みを浮かべるルーエを見て、魔人の背筋が凍りつく。
彼が視線を落とすと、確かに手刀は相手の身体を貫いているが、本来通っているはずの液体は流れていない。
「お前が腕を突っ込んでいるのは私の身体じゃなくて『闇』だよ。そら、抜いてみるといい」
必死にもがくが、一度闇に囚われた腕はぴくりとも動かない。
ルーエが前へ歩き出すと、真っ黒に染まった魔人の腕だけが空間に固定されていた。
「さて、最後に二つアドバイスをやろう」
魔術によって魔人を半透明の球体で覆うと、ルーエはそれに手をかざす。
「まず一つ。お前の爆破魔術は無駄が多い。このように威力が逃げないようにしてやれば……」
魔人が何かを叫んでいるが、その声は球体の外には聞こえない。
やがて爆発が空間内を覆い尽くし、視界が確保できた頃には何一つ残っていなかった。
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