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悪役王子だるまにされたけどとうとう一本取り戻す 4
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まだ左腕一本だったが、取り戻せたという事実が嬉しい。筋肉もなにもない弱そうな腕だが、おれの腕だ。
「はーっ、はーっ、喜んで頂けて、幸いです。が、続けての施術は厳しく……」
「良い、下がれ。回復次第、次の施術を行う。こやつを牢ではなく客室に通してやれ。見張りは継続しろ」
イリアスがシャイオをねぎらっているようだったが、おれは久しぶりの腕が嬉しくて、天上にむけて掌を開いたり閉じたりして感激していた。
当たり前のようについていた頃は有難さなんて感じなかったけれど、今は己のパーツの一つでしかない腕が愛しくて仕方がない。
「魔法があってよかった……」
「まるで魔法がない世界から来たみたいなことを言うんだな」
「……信じられないかもしれないけど、おれは、ドゥルマとして生まれる前は魔法のない世界で暮らしていたんだよ」
腕が戻ってきたことで気持ちが緩んでいた。どうせ言っても信じてはもらえないだろうとも思っていた。
「そこに想う相手でも置いてきたのか?」
「え?」
「どうして俺を抱きしめない?」
背後にピッタリくっついているイリアスを振り向けない。急いでイリアスに縋りつけと脳内で警鐘が鳴り響いているのに、こんな時だけ片腕での動きに慣れなくてまごついてしまう。
ぎゅっと縮こまった腕をイリアスが掴んでベッドに押し付けた。痛い痛い痛い、やっと取り戻したばかりの腕を大事にしてくれ。
「ドゥルマ、お前が俺を抱きしめたいと言ったんだ。どうして抱きしめない?」
「か、片方だけじゃ」
「あいつにも同じことを言っていたんじゃないか?『ビッチ』?」
出来立ての腕が、イリアスの体重をかけられてみしみしと軋んでいる。折れるからやめてくれ!
「本当は誰のことも愛していなくて、利用するためだけに俺たちを使った?」
頭のいいやつはこれだから困る! モブに主要攻略キャラを出し抜けるはずがなかった。同じモブのシャイオにすらばれてしまったのに。
モブのおれに主役級の忍耐力が備わっているはずもなく、おれは鬱屈を吐き出してしまった。
「こんな関係は対等じゃない。おれは誰に対しても抵抗なんてできないのに、好き勝手に犯されて……身体は反応してしまったかもしれないが、いつだってお前たちが憎かった!」
おれをオナホ扱いする奴らなんて嫌いだ。腕ができても抱きしめてなんてやらない。おれの腕も体もおれだけのものだ。イリアスも、シャイオも気付かないふりをしてくれていれば、足をゲットするまでは抱きしめてやったのに。
「それが本音か」
「あああああっ!!」
ボキッと音がして腕が折られた。痛みに絶叫し、涙と鼻水でぐちゃぐちゃのおれを、イリアスが犯してくる。快感なんて一ミリもなかった。
苦しそうなイリアスの表情、気持ちよくも楽しくもないなら犯さなきゃいい。おれの心なんて、お前はどうでもよかったんだろう。涙が流れ続けるのは折られた腕が痛いからだ。胸が苦しいのは自由にならない身体を無理やり動かそうとして負荷がかかったからだ。
この世界に、おれに優しい人間なんてどこにもいない。
「はーっ、はーっ、喜んで頂けて、幸いです。が、続けての施術は厳しく……」
「良い、下がれ。回復次第、次の施術を行う。こやつを牢ではなく客室に通してやれ。見張りは継続しろ」
イリアスがシャイオをねぎらっているようだったが、おれは久しぶりの腕が嬉しくて、天上にむけて掌を開いたり閉じたりして感激していた。
当たり前のようについていた頃は有難さなんて感じなかったけれど、今は己のパーツの一つでしかない腕が愛しくて仕方がない。
「魔法があってよかった……」
「まるで魔法がない世界から来たみたいなことを言うんだな」
「……信じられないかもしれないけど、おれは、ドゥルマとして生まれる前は魔法のない世界で暮らしていたんだよ」
腕が戻ってきたことで気持ちが緩んでいた。どうせ言っても信じてはもらえないだろうとも思っていた。
「そこに想う相手でも置いてきたのか?」
「え?」
「どうして俺を抱きしめない?」
背後にピッタリくっついているイリアスを振り向けない。急いでイリアスに縋りつけと脳内で警鐘が鳴り響いているのに、こんな時だけ片腕での動きに慣れなくてまごついてしまう。
ぎゅっと縮こまった腕をイリアスが掴んでベッドに押し付けた。痛い痛い痛い、やっと取り戻したばかりの腕を大事にしてくれ。
「ドゥルマ、お前が俺を抱きしめたいと言ったんだ。どうして抱きしめない?」
「か、片方だけじゃ」
「あいつにも同じことを言っていたんじゃないか?『ビッチ』?」
出来立ての腕が、イリアスの体重をかけられてみしみしと軋んでいる。折れるからやめてくれ!
「本当は誰のことも愛していなくて、利用するためだけに俺たちを使った?」
頭のいいやつはこれだから困る! モブに主要攻略キャラを出し抜けるはずがなかった。同じモブのシャイオにすらばれてしまったのに。
モブのおれに主役級の忍耐力が備わっているはずもなく、おれは鬱屈を吐き出してしまった。
「こんな関係は対等じゃない。おれは誰に対しても抵抗なんてできないのに、好き勝手に犯されて……身体は反応してしまったかもしれないが、いつだってお前たちが憎かった!」
おれをオナホ扱いする奴らなんて嫌いだ。腕ができても抱きしめてなんてやらない。おれの腕も体もおれだけのものだ。イリアスも、シャイオも気付かないふりをしてくれていれば、足をゲットするまでは抱きしめてやったのに。
「それが本音か」
「あああああっ!!」
ボキッと音がして腕が折られた。痛みに絶叫し、涙と鼻水でぐちゃぐちゃのおれを、イリアスが犯してくる。快感なんて一ミリもなかった。
苦しそうなイリアスの表情、気持ちよくも楽しくもないなら犯さなきゃいい。おれの心なんて、お前はどうでもよかったんだろう。涙が流れ続けるのは折られた腕が痛いからだ。胸が苦しいのは自由にならない身体を無理やり動かそうとして負荷がかかったからだ。
この世界に、おれに優しい人間なんてどこにもいない。
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