人を生きる君

爺誤

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15 ここに入れたいから

「どうしても俺としたいなら神格を得た方がいい。なんでもできる」
「っう……なんでも…したい、ふぅっ……」

 勃ちあがったものではなく、その奥の窄まりを舌でぐりぐりとこじ開けるようにいじめられて、トーカは我慢できずに自分で前を握った。

「ここに、俺を入れたいんだろう。そのためにオサヒグンラに手紙を出した」
「はぅ、ん……そ、そうだ、よ。虎穴に入らずんば虎子を得ず、って言うし」
「よく勉強をしている。偉いな」
「ふぅっ……あっ」

 褒められたことと、侵入してきた指が弱いところを抉ったから、あっけなく絶頂したトーカが恨めしげにリナサナヒメトを睨んだ。

「そんな色っぽい顔で睨まれたら、もっといじめたくなる」
「おれが神格を得たら、ヒメサマがひんひん言うまで搾り取ってやるからな」
「それは楽しみだ」

 言い終わると同時に猫の姿に戻ったヒメサマと、脱ぎ散らかした服の中で全裸のままのトーカだった。

「まだ夕飯も食べてないのに、また服着なくちゃならないじゃないか」
『我慢できないトーカが悪い』
「入れてくれないくせに毎回おれを弄んで。この童貞猫!」

 驚いたヒメサマの毛が逆立って、倍ほどの大きさの毛玉になった。

『どこでそんな言葉を』
「ヒメサマの屋敷には地上全ての書物があるんだろ。こういうのが読みたいって思うと出てくるの、便利だったな。サラリが優秀なのかな」
『こういうの……』
「えっちなやつ」
『む……』

 今生は初めてだが、創世からの記憶を知識として持っているリナサナヒメトは、自分が教えるつもりだったことのどこまでをトーカが知ったのかと思案した。トーカの好奇心が暴走して、口がうまい人間に実践されてしまっては危険だ……というか、嫌だった。そして、危険なのは人間だけではない。

『トーカ、オサヒグンラが危険なことはわかっているな』
「うん。地下の神、闇の招き手、またの名を堕落の神。地上からその名を記した書物は失われた。いまは神殿の壁画に悪夢として描かれているのみ」

 中庸の地にあるリナサナヒメトの屋敷には地上の書物全ての複製が集められていた。原本が失われても、一度作られた本は残されていた。その中にはオサヒグンラが地上に介入した記録もあった。

『地上と地下は繋がっている。綺麗事だけではつまらないから、あれの存在も必要ではあるんだが』
「ヒメサマとの関係もだいたいわかってるつもりだよ。ま、おれの場合は本当に危なくなったらヒメサマが助けてくれるだろ?」
『うむ』

 パッと笑ったトーカは、考えても答えの出ない問題を考えることを放り捨てた。街に来るのに緊張したし、運動﹅﹅もしたから。

「愛してるよ、ヒメサマ。腹減ったから、酒場に行こう。酒も飲んでみたいな」
『酒はだめだ! 目的がある時に酔ってしまっては事がうまく運べなくなる』
「そう? いつか一緒に飲もうな。そうだ、季馬の件がうまくいったら、祝杯だ」
『ああ、楽しみにしていよう』

 旅装全てを着る必要はないと判断したトーカは、簡易な服に替えて銀髪をゆるく結び直した。

「フードは、いるかな」
『必要だ。そういう教義の国から来たことにすればいい』
「教義って、神様はここにいるのにな。人間の国にはなんで神様がたくさんいるんだ?」

 ふいっとヒメサマが目を逸らした。

「もしかして、生まれ直すたびに宗教が増えてるとか?」
『毎回じゃない。嫁取りを円滑にしようとすると神と名乗ったほうが簡単だから』
「とんだ浮気者の後始末をさせられる気分」

 ヒメサマの首根っこを片手で掴んでぶら下げて、毛に埋もれたキンタマを突くトーカ。

『浮気はしていない! 今生の俺はトーカひとすじだ!』
「それは知ってる。もしかして子孫がいたりする?」『……ちょっと賢くなりすぎじゃないか』

 尻尾で股の間をガードしたヒメサマが、にゃーんと普通の猫の真似をした。

「いるんだ。神の子かぁ」
『人間だ。俺は子を持てない』
「じゃあ子を名乗ってる人間がいたら嘘ってこと?」
『いや、人間を拾って子として育てたことがあるから』
「ふーん」

 季馬を捕えることが難しそうなら去勢してしまおうか、と物騒なことを考えるトーカを察したヒメサマの耳が後ろを向いた。

『トーカ』
「ふ、怒ってないよ。可能性を考えてる。何が来ても動揺しないように」
『気になることがあれば何でも言ってくれ』
「うん。夕飯を食べたらブラッシングしような」
『ああ』

 腹が満たされ、ブラッシングをすることでトーカの機嫌が直りますように、と願う情け無い神だった。
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