笑わない風紀委員長

19

　競技を終えて自陣のテントに戻ると、同じ赤組はかなりの盛り上がりを見せていた。俺達3Sを見つけ、とりわけ大きく歓声が上がる。


「さすが生徒会長様と風紀委員長様です！！」

「これは勝てる！勝てるぞぉ！！！」

「お二人の尊い絵が……二人三脚ありがとう」

「3年Sクラスばんざーい！！」

「俺達も頑張らなくては！！！」



　各々火がついた者ややる気を出した者もいるようで、俺と西連寺の頑張りは無駄ではなかったと思わされる。



　二人三脚は、俺達Sクラスが勝利した。樋口と白男川ペアの追い上げもあり少しヒヤッとする局面もあったが、最終的には俺と西連寺が一位をキープしたままゴールできた。



　これにより、赤組518点、白組410点で俺達はリードすることとなった。



　
「まるで英雄だな」



　

　隣で西連寺が苦笑して溢した言葉に、俺は同調した。まだ巻き返しただけだがお祝いムードにある。近くにいた響もうんうんと頷いた。


　
「まあ、高校最後の体育祭だしねー。みんななんだかんだ言って楽しみにしてたんだよ」

「そうだな………準備した甲斐があったと感じさせてくれる」

「ああ」

「なんかここだけしみじみした空気になりそう……あ、次の競技って何だっけ」



　周りとは逆の雰囲気になりそうだと察知した響が話題を振る。西連寺が即座に答えた。


「15分休憩挟んで1年の綱引きだ」

「あ、そういや学年種目2連チャンだったね」



　会話が一旦終わったのを確認し、俺は二人に声を掛けた。



　
「見回りに行ってくる」

「早く帰って来いよ」

「お、いてらー」

「ああ」



　西連寺と響はそれぞれ反応を返して俺を見送り、俺はそれに短く答えながら身を翻した。




　競技に出られるように自分の学年以外が競技中の時しか必然的に見回りが担当にならないようになっている。次の綱引きでは俺が見回りの担当だ。


　クラステントから風紀テントに向かうべくグランドを歩く。今は休憩時間なのでみな自由に過ごしていた。その流れに逆らって進んでいると、不意に誰かに手首を掴まれた。




　
「っ！」



　



　少し驚いて振り返ると、そこにいたのは風紀委員にして3年最大の問題児である御法川だった。そのまま俺の手首を掴んだまま人をかき分けて進んでいく。


　
「っ、おい！」


　

制止の声を上げるが、御法川は何も言わずにどんどん進んでいく。慌てて足を動かし到着したのは人気のない用具テントの裏。



「こんなとこまで来て、俺に何の用だ」





　訝しむ俺に御法川は素早く周囲を見回し誰もないことを確認すると、俺の耳に唇を近づけた。少し身構えるが、御法川の言葉は俺の予想しなかったものだった。


　

「あのさ。一年にさ、茂みみたいな頭のセンス無い子、いるよね」


　


漫画のダサメガネみたいなの掛けた、と続けて情報を出され、それが誰を指すのかわかってしまった俺は思わず顔を歪めた。そんな一年は1人しかいない。