笑わない風紀委員長

馬酔木ビシア

文字の大きさ
105 / 152

28

しおりを挟む




龍神side





「龍神!!俺と来いっ!!!」




「瑚珀いんちょー、おれと、行こ?」






 おかしい。





 本当におかしい。





 一体なぜこんなことになっているんだろうか。





 右に西連寺、左に尚を視界に入れながら、俺は遠い目をしていた。


















 遡ること30分前、遂に午後最初の競技である借り物競争が始まった。借り物競争は例年人気の高い種目で、競技としてはもちろんだが、観客側からも大きな支持を集めている。見て良し、やって良しの競技というわけだ。



 その名の通り、選手はグランドに置いてあるカードを引き、引いたものを誰かから借りて条件を満たしているものがゴールできるというレース。多分どこの学校にもある定番競技だろう。



 しかし、なぜかこの学園の借り物競争は、異常にお題が人物であることが多い。好きな人、憧れの人、クラスメイト、友達等、幅広い種類の人物像がお題にされていて毎年この競技が発端で付き合い始める者もいるそうだ。もう借り人競争にしてしまえと思うのだが、ちゃんと物に関するお題も入っているのでややこしい。



 なぜ俺がこんなにお題の中身に詳しいのか?それは響がこの競技のお題を決めていることと、去年と一昨年の過去2回、俺は散々この借り物競争に振り回されたからだ。どちらも出場はしていないが、お題に風紀委員長とかクラス指定とか銀髪とか色々ピンポイントなものがありすぎて、生徒達に何度も借りられるということが起きた。観覧どころではない。




 去年であれほど理不尽なお題があったのだから、響が担当する今年なんて
絶対に碌なものではない。確信を持って言える。




 ………俺は出ないのに何故こんなに警戒しなければならないんだろうか。つらい。


 

「さあ、一斉に今走者がスタートしました!個人的にはドキドキのお題を期待してます!」


 

 それで良いのか放送部。


「おっと?立ち止まる人が非常に多いです!!一体どんなお題なんでしよう!」



 その言葉で走者へ目を向けると、確かにカードを引いた後に立ち止まっている生徒が目立った。皆一様に難しそうな顔をして奔走している。



「すいませーん!!誰か……えっと、身長175センチの人いませんかぁ!!」


「え、何これ、自分以外の人が脱いだ靴下って……いやみんな履いてるけど、借りる俺が嫌だ!」


「ゑ??What?白馬の王子様?どゆこと??」


「学年で一番筋肉がある人……盛山君かな、それとも無木君?あ、でも肉丸君も…」




 嬉々として走る生徒以外はみんなおかしいお題に当たってしまったらしい。ちらほら内容が聞こえるのだが、絶対におかしいと言えるものがいくつか混じっている。これらを借りられたとして、一体誰が幸せになるんだろうか。



 ちなみに、靴下は既に貸したので俺は今裸足だ。何も俺のじゃなくても良いだろうと思ったのだが、走者の生徒が、「風紀委員長様の靴下は全く汚くありませんから!!むしろ俺の心も浄化されます!!」という意味の分からない主張をするのでついその迫力に押されてしまった。靴下を仕方なく両足脱いで渡すと、俺がなるべく触らないように言ったにも関わらず拝みながら大切そうに受け取って走って行ってしまった。ゴール後にぜひしっかりと手を洗ってもらいたい。誰のであっても汚いからな。



 しかし、これで俺が借り人として連れていかれると少し困る。



 なぜなら、素足の状態で運動靴を履くのは躊躇われたため、裸足のまま椅子に座っているからだ。今同伴をお願いされたら裸足で歩かなくてはならない。それは流石に……その、ちょっと格好がつかないというか、風紀委員長としてまずい。




 名指しや役職指定のお題が無いことを祈るとしよう。





 地面に付かないように足を浮かせて座って観戦しながら、そう願った。





 はずだった。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

百合豚、男子校に入る。

BL
百合をこよなく愛する男子高校生・眞辺恵。 母の歪んだ価値観により共学への進学を断たれ、彼が入学させられたのは―― 男同士の恋愛が“文化”として成立している、全寮制男子校《私立瑞嶺学園》だった。 この学園では、生徒会長は「抱かれたいランキング」で選ばれ、美貌こそが正義とされる世界。 それでも眞辺は決意する。 生徒会長になり、この学校を“共学”に変え、間近で百合を拝むことを。 立ちはだかるのは、顔面至上主義の学園制度、性に奔放すぎるイケメンな幼馴染、そして彼らに憧れ恋をする生徒たち。 さらに何故か、学園の人気者たちに次々と目をつけられてしまい――。 百合を拝むため男子校を変えようとする異端者が、歪んだ王道学園を改革する物語。

悪役令息ですが破滅回避で主人公を無視したら、高潔な態度だと勘違いされて聖人認定。なぜか溺愛ルートに入りました

水凪しおん
BL
BL小説『銀の瞳の聖者』の悪役令息ルシアンに転生してしまった俺。 原作通りなら、主人公ノエルをいじめ抜き、最後は断罪されて野垂れ死ぬ運命だ。 「そんなの絶対にお断りだ! 俺は平和に長生きしたい!」 破滅フラグを回避するため、俺は決意した。 主人公ノエルを徹底的に避け、関わらず、空気のように生きることを。 しかし、俺の「無視」や「無関心」は、なぜかノエルにポジティブに変換されていく。 「他の人のように欲望の目で見ないなんて、なんて高潔な方なんだ……!」 いじめっ子を視線だけで追い払えば「影から守ってくれた」、雨の日に「臭いから近寄るな」と上着を投げつければ「不器用な優しさ」!? 全力で嫌われようとすればするほど、主人公からの好感度が爆上がりして、聖人認定されてしまう勘違いラブコメディ! 小心者の悪役令息×健気なポジティブ主人公の、すれ違い溺愛ファンタジー、ここに開幕!

とある金持ち学園に通う脇役の日常~フラグより飯をくれ~

無月陸兎
BL
山奥にある全寮制男子校、桜白峰学園。食べ物目当てで入学した主人公は、学園の権力者『REGAL4』の一人、一条貴春の不興を買い、学園中からハブられることに。美味しい食事さえ楽しめれば問題ないと気にせず過ごしてたが、転入生の扇谷時雨がやってきたことで、彼の日常は波乱に満ちたものとなる──。 自分の親友となった時雨が学園の人気者たちに迫られるのを横目で見つつ、主人公は巻き込まれて恋人のフリをしたり、ゆるく立ちそうな恋愛フラグを避けようと奮闘する物語です。

【完結済】俺のモノだと言わない彼氏

竹柏凪紗
BL
「俺と付き合ってみねぇ?…まぁ、俺、彼氏いるけど」彼女に罵倒されフラれるのを寮部屋が隣のイケメン&遊び人・水島大和に目撃されてしまう。それだけでもショックなのに壁ドン状態で付き合ってみないかと迫られてしまった東山和馬。「ははは。いいねぇ。お前と付き合ったら、教室中の女子に刺されそう」と軽く受け流した。…つもりだったのに、翌日からグイグイと迫られるうえ束縛まではじまってしまい──?! ■青春BLに限定した「第1回青春×BL小説カップ」最終21位まで残ることができ感謝しかありません。応援してくださった皆様、本当にありがとうございました。

穏やかに生きたい(隠れ)夢魔の俺が、癖強イケメンたちに執着されてます。〜平穏な学園生活はどこにありますか?〜

春凪アラシ
BL
「平穏に生きたい」だけなのに、 癖強イケメンたちが俺を狙ってくるのは、なぜ!? トラブルを避ける為、夢魔の血を隠して学園生活を送るフレン(2年)。 彼は見た目は天使、でも本人はごく平凡に過ごしたい穏健派。
なのに、登校初日から出会ったのは最凶の邪竜後輩(1年)!? 
他にも幼馴染で完璧すぎる優等生騎士(3年)に、不良だけど面倒見のいい悪友ワーウルフ(同級生)まで……なぜか異種族イケメンたちが次々と接近してきて―― 運命の2人を繋ぐ「刻印制度」なんて知らない! 恋愛感情もまだわからない! 
それでも、騒がしい日々の中で、少しずつ何かが変わっていく。 個性バラバラな異種族イケメンたちに囲まれて、フレンの学園生活は今日も波乱の予感!? 
甘くて可笑しい、そして時々執着も見え隠れする 愛され体質な主人公の青春ファンタジー学園BLラブコメディ! 月、水、金、日曜日更新予定!(番外編は更新とは別枠で不定期更新) 基本的にフレン視点、他キャラ視点の話はside〇〇って表記にしてます!

宮本くんと事故チューした結果

たっぷりチョコ
BL
 女子に人気の宮本くんと事故チューしてしまった主人公の話。  読み切り。

【完結 一気読み推奨】片想いの相手が「そろそろ恋愛したい」と言ったので、用済みの俺はニートになることにしました。

はぴねこ
BL
 高校生の頃、片想いの親友に告白した。  彼はノンケだったから玉砕して友人関係も終わるものだと思っていた。  もしかすると気持ち悪いと軽蔑される覚悟までしていたのに、彼は「今は恋愛をしている時間がないんだ」と自分の夢を語ってくれた。  彼は会社を興した祖父のことをとても尊敬していて、自分も起業したいと熱く語ってくれた。  そして、俺の手を握って「できれば親友のお前には俺の右腕になってほしい」と言われた。  同性愛者の俺のことを気持ち悪いと遠ざけることもせずに、親友のままでいてくれた彼に俺は感謝して、同じ大学に進学して、大学の頃に彼と一緒にゲームを作成する会社を起業した。  あれから二十年間、本当に二人三脚で駆け抜けてきた。  そして、昨年売り出したVRMMOが世界的に大ヒットし、ゲーム大賞を取ったことを祝うパーティーで親友が語った言葉に俺の覚悟も決まった。 「俺もそろそろ恋愛したい」  親友のその言葉に、俺は、長年の片想いを終わらせる覚悟をした。  不憫な拗らせアラフォーが”愛”へと踏み出すお話です。

処理中です...