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蜜月
終わりの始まり
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「お姉様ー、お姉様ー!どこにいかれたのですかー!?あ、ダンカン。お姉様を見なかった?」
「ブレンダ殿・・・アレクシア殿ならば、先ほどあちらに向かわれましたぞ」
「あらそう?もうっ、お姉様ったら!まだ安静してないといけないのに、勝手に出歩いて!!配給なら私が貰ってくるって言うのに、自分で行くって聞かないんだから!」
一人で佇むダンカンの背中に、キンキンとした声が響いてくる。
彼がそちらに目を向ければ、青髪の少女ブレンダが先ほど立ち去ったばかりのアレクシアを探している所であった。
「それは・・・アレクシア殿にも思うところがあったのでござろう。妹御の世話になってばかりにもいられないとか・・・」
「もうっ!そんな気を使わなくてもいいのに、お姉様は!病人は大人しくしているのが仕事なんだから!」
ダンカンからアレクシアがここへとやってきた事を知らされたブレンダは、そんな彼女の振る舞いに対して苛立ちを募らせている。
それは姉を想っての怒りと考えれば可愛らしいものであったが、女性のしかも思春期の少女の激しい怒りに、ダンカンはどうしたらいいのかと困った表情を浮かべていた。
「そ、それよりもブレンダ殿、一つお尋ねしたいのですが・・・この肉をわしらが食べることは可能でござろうか?」
「肉ぅ?何の肉よ、一体?」
「あぁ、ストレイドッグの肉ですな」
「はぁ?あの魔物の?そんなの無理に決まってるじゃない!!」
地面を激しく踏みしめては怒り心頭という様子を見せるブレンダに、ダンカンは当り障りのない話題を振っていた。
それを彼が口にしたのは、たまたま先ほどアランが放って投げたストレイドッグの肉が目に入ったからだろう。
「い、いやそうではござらん!わしとしたことが重要なことが抜けておった!この肉をアラン殿から口移しで食べさせられた場合、毒はどうなるかと聞きたかったのでござる!」
「あいつから口移しでぇ!?そんなの駄目に・・・うん?どうなんだろう?ギフトの力は時に論理を超えて効力を発揮するし、もしかすると・・・」
「おぉ!ではもしかするとこの肉も食べられると!!いやぁ、肉など何時ぶりでござろうか!!」
毒に汚染された世界を普通に生きる魔物の肉など食える訳がない、それはこの世界の常識であった。
そんな当たり前のことを今更聞いてきたダンカンに、ブレンダは呆れた表情を見せている。
その表情に自分が見当違いの事を聞いてしまったと気付いたダンカンは、慌てて彼女に本当に尋ねたかった事を聞き返していた。
「うん?しかしそういう訳にもいかんでござるか?それをするにも一度は試してみないことには・・・して誰がその役を?生きるためとはいえ、わしは嫌でござるなぁ・・・ブレンダ殿、試してみては?」
「私も嫌よ!!」
「うむむ・・・それは困ったでござるなぁ」
アランから口移しで食べさせられたものならば毒は無効化されているかもしれない、ブレンダはその可能性について真剣に考える。
ダンカンはそんな彼女の様子に喜びの声を上げるが、それを確かめるには実際にアランから口移しで何かを食べさせられる必要がある。
それを思い描いて何とも言えない表情を見せたダンカンは、それをブレンダへと勧めるが、彼女もすぐにはっきりとした口調で拒絶を告げていた。
「ダンカンさん、ダンカンさーん!大変です!!」
「うん?何でござろうか・・・?おーい、こっちだー!!」
有用な手段も、それを確かめる方法を誰もやりたがらなければどうしようもない。
そんな方法をブレンダとダンカンが互いに押し付けあっていると、慌てた様子の村人がダンカンを探して駆けこんできていた。
「っ!ダンカンさん、それにブレンダも!聞いてください大変なのです!!」
「大変なのは分かったから、早く聞かせなさいよ!何?また魔物でも襲ってきたの?そんなのはアランにでも―――」
「井戸が、井戸が・・・!!」
「井戸が、どうしたって言うのよ?まさか枯れたなんて言うんじゃ・・・」
大柄なダンカンの姿は、遠くからでもよく見える。
それが手を振っているのだから、彼にもそれはすぐに見つけられるだろう。
駆け寄ってきた村人は、慌てた様子で大変なことが起きたと叫んでばかりいる。
そんな彼に、ブレンダは早くそれを教えろと急かしていた。
「そ、その通りです!!井戸が、井戸が枯れてしまいました!!」
「・・・はぁ!?」
焦り取り乱した様子の村人に、ブレンダは考えられる限りで最悪の事態を口にしている。
毒に汚染された世界で、飲み水の確保は最重要事項だ。
それを彼らは、メイヴィスの女神像の効力の範囲内に存在する井戸によって担っていた。
それが枯れてしまえばどうなるか、それは想像に難くなかった。
「うむむ・・・これは困ったことになりましたな」
村人の言葉に信じられないと目を見開いて、ブレンダは固まってしまっている。
その横で腕を組み唸り声を漏らしているダンカンもまた、顔を俯かせては眉を顰めていた。
彼らは、この村を支えている中心人物といっても差し支えない。
その二人がそうなってしまう光景に、それがいかに深刻な事態であるかは明らかであった。
「ブレンダ殿・・・アレクシア殿ならば、先ほどあちらに向かわれましたぞ」
「あらそう?もうっ、お姉様ったら!まだ安静してないといけないのに、勝手に出歩いて!!配給なら私が貰ってくるって言うのに、自分で行くって聞かないんだから!」
一人で佇むダンカンの背中に、キンキンとした声が響いてくる。
彼がそちらに目を向ければ、青髪の少女ブレンダが先ほど立ち去ったばかりのアレクシアを探している所であった。
「それは・・・アレクシア殿にも思うところがあったのでござろう。妹御の世話になってばかりにもいられないとか・・・」
「もうっ!そんな気を使わなくてもいいのに、お姉様は!病人は大人しくしているのが仕事なんだから!」
ダンカンからアレクシアがここへとやってきた事を知らされたブレンダは、そんな彼女の振る舞いに対して苛立ちを募らせている。
それは姉を想っての怒りと考えれば可愛らしいものであったが、女性のしかも思春期の少女の激しい怒りに、ダンカンはどうしたらいいのかと困った表情を浮かべていた。
「そ、それよりもブレンダ殿、一つお尋ねしたいのですが・・・この肉をわしらが食べることは可能でござろうか?」
「肉ぅ?何の肉よ、一体?」
「あぁ、ストレイドッグの肉ですな」
「はぁ?あの魔物の?そんなの無理に決まってるじゃない!!」
地面を激しく踏みしめては怒り心頭という様子を見せるブレンダに、ダンカンは当り障りのない話題を振っていた。
それを彼が口にしたのは、たまたま先ほどアランが放って投げたストレイドッグの肉が目に入ったからだろう。
「い、いやそうではござらん!わしとしたことが重要なことが抜けておった!この肉をアラン殿から口移しで食べさせられた場合、毒はどうなるかと聞きたかったのでござる!」
「あいつから口移しでぇ!?そんなの駄目に・・・うん?どうなんだろう?ギフトの力は時に論理を超えて効力を発揮するし、もしかすると・・・」
「おぉ!ではもしかするとこの肉も食べられると!!いやぁ、肉など何時ぶりでござろうか!!」
毒に汚染された世界を普通に生きる魔物の肉など食える訳がない、それはこの世界の常識であった。
そんな当たり前のことを今更聞いてきたダンカンに、ブレンダは呆れた表情を見せている。
その表情に自分が見当違いの事を聞いてしまったと気付いたダンカンは、慌てて彼女に本当に尋ねたかった事を聞き返していた。
「うん?しかしそういう訳にもいかんでござるか?それをするにも一度は試してみないことには・・・して誰がその役を?生きるためとはいえ、わしは嫌でござるなぁ・・・ブレンダ殿、試してみては?」
「私も嫌よ!!」
「うむむ・・・それは困ったでござるなぁ」
アランから口移しで食べさせられたものならば毒は無効化されているかもしれない、ブレンダはその可能性について真剣に考える。
ダンカンはそんな彼女の様子に喜びの声を上げるが、それを確かめるには実際にアランから口移しで何かを食べさせられる必要がある。
それを思い描いて何とも言えない表情を見せたダンカンは、それをブレンダへと勧めるが、彼女もすぐにはっきりとした口調で拒絶を告げていた。
「ダンカンさん、ダンカンさーん!大変です!!」
「うん?何でござろうか・・・?おーい、こっちだー!!」
有用な手段も、それを確かめる方法を誰もやりたがらなければどうしようもない。
そんな方法をブレンダとダンカンが互いに押し付けあっていると、慌てた様子の村人がダンカンを探して駆けこんできていた。
「っ!ダンカンさん、それにブレンダも!聞いてください大変なのです!!」
「大変なのは分かったから、早く聞かせなさいよ!何?また魔物でも襲ってきたの?そんなのはアランにでも―――」
「井戸が、井戸が・・・!!」
「井戸が、どうしたって言うのよ?まさか枯れたなんて言うんじゃ・・・」
大柄なダンカンの姿は、遠くからでもよく見える。
それが手を振っているのだから、彼にもそれはすぐに見つけられるだろう。
駆け寄ってきた村人は、慌てた様子で大変なことが起きたと叫んでばかりいる。
そんな彼に、ブレンダは早くそれを教えろと急かしていた。
「そ、その通りです!!井戸が、井戸が枯れてしまいました!!」
「・・・はぁ!?」
焦り取り乱した様子の村人に、ブレンダは考えられる限りで最悪の事態を口にしている。
毒に汚染された世界で、飲み水の確保は最重要事項だ。
それを彼らは、メイヴィスの女神像の効力の範囲内に存在する井戸によって担っていた。
それが枯れてしまえばどうなるか、それは想像に難くなかった。
「うむむ・・・これは困ったことになりましたな」
村人の言葉に信じられないと目を見開いて、ブレンダは固まってしまっている。
その横で腕を組み唸り声を漏らしているダンカンもまた、顔を俯かせては眉を顰めていた。
彼らは、この村を支えている中心人物といっても差し支えない。
その二人がそうなってしまう光景に、それがいかに深刻な事態であるかは明らかであった。
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