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カイ・リンデンバウムの恐ろしき計画
リタ・エインズリーは勇者である 3
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『おいおい・・・こんなちんけな火の粉程度が、俺様に効くと思ってんのかぁ?随分、舐められたもんだなぁ!!』
「そんな・・・があぁぁぁぁぁっ!!?」
その頭髪の先端を僅かにチリチリと燃やしたセッキは、絶望に目を見開いているマーカスに対してニヤリと笑って見せている。
彼がダメージを負った様子がないのは、炎に絶対の耐性を備えているからか、それとも単に実力差がありすぎてダメージを与えることが出来なかったのか。
何の事はない、彼はそれをやせ我慢して見せていただけだった。
元々赤みが帯びている彼の肌は、火傷に熱を帯びてもそれが分かり難いだろう。
唇を歪めたセッキの表情はその実、痛みに耐えて奥歯を噛み締めたのを誤魔化すものであったが、圧倒的強者のオーラを放つ彼の表情に、マーカスはその嘘を見抜くことなど出来はしない。
自らの渾身の攻撃が無意味だと知り絶望するマーカスは、その表情のまま力を込めたセッキによって握り潰されようとしていた。
「・・・せ、・・せよ・・」
余りの激痛によってその杖さえ取り落としてしまったマーカスにはもはや、抵抗することすら出来ないだろう。
ミシミシと響く骨の軋む音が、彼の命があと残り僅かである事を示している。
それはもはや覆すことの出来ない、現実なのであろうか。
その時、どこかから囁くような、願うような呟きが聞こえてきていた。
「そいつを、放せよぉぉぉぉっ!!!」
壁へと強かに打ちつけられ、ようやくその身を起こした所である彼女の意識はまだ、はっきりとはしていないだろう。
それでも叫び声を上げて駆け出したリタの足は早く、一瞬の間にその距離を詰めていた。
『お、ようやくお目覚めかい?そんじゃ、後はお前らに任せっぞ』
こちらへと突進してくるリタの姿に嬉しそうな表情を見せたセッキは、あっさりとマーカスの身体を解放すると、それを二体のトロールの下へと放り投げていた。
『ま、任せろ!』
『おでだち頑張る!頑張って、こいつボコボコにする!!』
セッキからマーカスを受け取ったトロール達は、彼の命令に気合の篭った返答を返すと、早速とばかりにその身体を殴りつけ始めている。
万全な状態であるならば、その技術と立ち振る舞いによって彼らの猛攻を凌げたマーカスも、今や見る影もない。
余りにも一方的に殴られ続ける彼に、聞こえてくるのは肉を潰すような打撃音ばかりであった。
『いや、だからよぉ・・・殺すなって言ってんだろ・・・って、おっと!いけねぇいけねぇ、忘れる所だったぜ勇者様よぉ!!』
先ほどやり込められた反動だろうか、明らかに張り切ってボコボコにしている様子のトロール達に、セッキはそのまま殺してしまわないかと心配を漏らしていた。
さっきあれほど言い聞かせた事をもう既に忘れている様子の彼らに、頭を抱えているセッキの横を何者かの影が猛スピードで通り過ぎてゆく。
しかしその存在に気づき、すぐさま振るったセッキの腕はさらに速い。
速さ重視でそれほど力の篭っていない腕は軽く、それに弾き飛ばされた影もすぐ傍へと落ちる。
地面へと静かに降り立った勇者、リタはそのまま体勢を立て直す事なく再び走り始めていた。
「そこを・・・どけぇぇぇっ!!!」
再び走り出した彼女の標的は、もはやセッキではない。
今も殴られ続けているマーカスを助けようと駆けているリタは、彼を取り囲んでいるトロール達に向かって進もうとしている。
しかしそんな彼女の振る舞いを、セッキが許す筈もない。
彼女が先に進むよりも早く、そのルートへと立ち塞がるセッキは、その巨大な体躯を生かして両手を広げては彼女の行く手を遮っていた。
『だからさぁ・・・それじゃ無理だって。よっと!』
このままではいつまで経ってもマーカスの下には辿りつかないと悟ったリタは、先にセッキを無力化しようと彼に飛び掛ってゆく。
しかし聖剣を手にしていない彼女など、彼の相手にもなりはしない。
軽くあしらうように振るった腕に、またも弾かれてしまった彼女は、今度は大きく吹き飛ばされてしまっていた。
「くそっ、もう少しだったのに!っ!?・・・?何のつもり?」
大きく弾かれ、ようやく地面へと降り立ったリタが悔しさを噛み締める間もなく、何かが猛烈なスピードで彼女へと迫っていた。
予感した危険に、大きく飛び退いた彼女はしかし、地面へと突き刺さったそれに疑問を感じてしまう。
空間を切り裂くようなスピードで飛来してきたそれは、彼女が担うべき聖剣アストライアであった。
『くれてやるよ。やっぱ勇者様は、それを使わねぇとなぁ?』
「・・・舐めるなぁぁぁっ!!!」
明らかにそれを投げつけた姿でリタへと目を向け、早くそれを手に取れと示しているセッキに、言葉は伝わらずともその意図は明白だ。
事実、それを手に取らなければ戦いにもならない実力差があるのは確かだろう。
しかしその余りにも舐め腐ったセッキの態度に、怒りを感じないほどリタは純粋ではなかったし、自らの実力に自負もあった。
『ははっ!!なんだよ、やれば出来るじゃねぇか!!!』
セッキが先ほど放った自らの得物である金棒を拾う、その僅かな時間に飛び掛ってきたリタのスピードは、先ほどまでのものとは比べ物にならないほどに速い。
それは彼女が、その手に聖剣を握っているからか。
飛び掛り、その刃を振るう彼女のそれを、セッキは何とか弾き返している。
しかしそれは余りに不安定な体勢から放った一撃であり、リタの剣を完全に弾き返すほどのものではない。
そうして彼が体勢を立て直すよりも早く、その刃を振るった彼女によって、セッキの身体は浅く切り裂かれてしまっていた。
『いいねいいねぇ!!この痛み、この熱さこそが戦いよ!!なぁ、そうだろぉ!!勇者様よぉ!!!』
致命的な隙を晒しながらも、浅い傷を受けただけで済んだのは、彼が咄嗟に体勢を立て直すことを諦めてその場に転がったからだろうか。
跳ねるようにしてその体勢から跳ね起きたセッキは、両手を広げると全身で喜びを表している。
彼のその脈動する肉体は、これこそが望んでいた戦いだと大いに奮えて表現していた。
「マーカス君、今行くから!!」
しかし彼女は、そんなセッキに関心など見せずに、その横を通り過ぎようとしていた。
彼女が目指しているのは、今もトロール達に嬲り殺されようとしているマーカスの下だろう。
今の彼女の力であるなら、そんなトロール二体程度、一瞬のうちに退けてしまえる筈だ。
『おいおい、つれねぇじゃねぇか・・・もっと楽しもうぜぇ!!!』
「くっ、この・・・邪魔を、するなぁ!!」
しかし、そうはならない。
自らの横を通り抜けようとしたリタに、セッキはその手の得物を全力で振り下ろしている。
その鋭さは、咄嗟に受け止められるような威力ではない。
リタが何とか身を躱しながら放った刃は、セッキの得物を僅かに切り裂いていたが、着地した彼女はマーカスからまた一歩、遠ざかってしまっていた。
『俺を倒さなきゃ、あいつを助けにはいけねぇぜぇ!!もう腹を括って、俺と殺り合おうぜぇ、勇者様よぉ!!!』
払った閃光が、弾けて消える。
なにものをも切り裂く聖剣に、それと打ち合わなければならないセッキは、その得物の振るい方に慎重さを求められるだろう。
しかしそのハンデキャップこそが、彼をこの戦いへの喜びへと導いていた。
「そんな・・・があぁぁぁぁぁっ!!?」
その頭髪の先端を僅かにチリチリと燃やしたセッキは、絶望に目を見開いているマーカスに対してニヤリと笑って見せている。
彼がダメージを負った様子がないのは、炎に絶対の耐性を備えているからか、それとも単に実力差がありすぎてダメージを与えることが出来なかったのか。
何の事はない、彼はそれをやせ我慢して見せていただけだった。
元々赤みが帯びている彼の肌は、火傷に熱を帯びてもそれが分かり難いだろう。
唇を歪めたセッキの表情はその実、痛みに耐えて奥歯を噛み締めたのを誤魔化すものであったが、圧倒的強者のオーラを放つ彼の表情に、マーカスはその嘘を見抜くことなど出来はしない。
自らの渾身の攻撃が無意味だと知り絶望するマーカスは、その表情のまま力を込めたセッキによって握り潰されようとしていた。
「・・・せ、・・せよ・・」
余りの激痛によってその杖さえ取り落としてしまったマーカスにはもはや、抵抗することすら出来ないだろう。
ミシミシと響く骨の軋む音が、彼の命があと残り僅かである事を示している。
それはもはや覆すことの出来ない、現実なのであろうか。
その時、どこかから囁くような、願うような呟きが聞こえてきていた。
「そいつを、放せよぉぉぉぉっ!!!」
壁へと強かに打ちつけられ、ようやくその身を起こした所である彼女の意識はまだ、はっきりとはしていないだろう。
それでも叫び声を上げて駆け出したリタの足は早く、一瞬の間にその距離を詰めていた。
『お、ようやくお目覚めかい?そんじゃ、後はお前らに任せっぞ』
こちらへと突進してくるリタの姿に嬉しそうな表情を見せたセッキは、あっさりとマーカスの身体を解放すると、それを二体のトロールの下へと放り投げていた。
『ま、任せろ!』
『おでだち頑張る!頑張って、こいつボコボコにする!!』
セッキからマーカスを受け取ったトロール達は、彼の命令に気合の篭った返答を返すと、早速とばかりにその身体を殴りつけ始めている。
万全な状態であるならば、その技術と立ち振る舞いによって彼らの猛攻を凌げたマーカスも、今や見る影もない。
余りにも一方的に殴られ続ける彼に、聞こえてくるのは肉を潰すような打撃音ばかりであった。
『いや、だからよぉ・・・殺すなって言ってんだろ・・・って、おっと!いけねぇいけねぇ、忘れる所だったぜ勇者様よぉ!!』
先ほどやり込められた反動だろうか、明らかに張り切ってボコボコにしている様子のトロール達に、セッキはそのまま殺してしまわないかと心配を漏らしていた。
さっきあれほど言い聞かせた事をもう既に忘れている様子の彼らに、頭を抱えているセッキの横を何者かの影が猛スピードで通り過ぎてゆく。
しかしその存在に気づき、すぐさま振るったセッキの腕はさらに速い。
速さ重視でそれほど力の篭っていない腕は軽く、それに弾き飛ばされた影もすぐ傍へと落ちる。
地面へと静かに降り立った勇者、リタはそのまま体勢を立て直す事なく再び走り始めていた。
「そこを・・・どけぇぇぇっ!!!」
再び走り出した彼女の標的は、もはやセッキではない。
今も殴られ続けているマーカスを助けようと駆けているリタは、彼を取り囲んでいるトロール達に向かって進もうとしている。
しかしそんな彼女の振る舞いを、セッキが許す筈もない。
彼女が先に進むよりも早く、そのルートへと立ち塞がるセッキは、その巨大な体躯を生かして両手を広げては彼女の行く手を遮っていた。
『だからさぁ・・・それじゃ無理だって。よっと!』
このままではいつまで経ってもマーカスの下には辿りつかないと悟ったリタは、先にセッキを無力化しようと彼に飛び掛ってゆく。
しかし聖剣を手にしていない彼女など、彼の相手にもなりはしない。
軽くあしらうように振るった腕に、またも弾かれてしまった彼女は、今度は大きく吹き飛ばされてしまっていた。
「くそっ、もう少しだったのに!っ!?・・・?何のつもり?」
大きく弾かれ、ようやく地面へと降り立ったリタが悔しさを噛み締める間もなく、何かが猛烈なスピードで彼女へと迫っていた。
予感した危険に、大きく飛び退いた彼女はしかし、地面へと突き刺さったそれに疑問を感じてしまう。
空間を切り裂くようなスピードで飛来してきたそれは、彼女が担うべき聖剣アストライアであった。
『くれてやるよ。やっぱ勇者様は、それを使わねぇとなぁ?』
「・・・舐めるなぁぁぁっ!!!」
明らかにそれを投げつけた姿でリタへと目を向け、早くそれを手に取れと示しているセッキに、言葉は伝わらずともその意図は明白だ。
事実、それを手に取らなければ戦いにもならない実力差があるのは確かだろう。
しかしその余りにも舐め腐ったセッキの態度に、怒りを感じないほどリタは純粋ではなかったし、自らの実力に自負もあった。
『ははっ!!なんだよ、やれば出来るじゃねぇか!!!』
セッキが先ほど放った自らの得物である金棒を拾う、その僅かな時間に飛び掛ってきたリタのスピードは、先ほどまでのものとは比べ物にならないほどに速い。
それは彼女が、その手に聖剣を握っているからか。
飛び掛り、その刃を振るう彼女のそれを、セッキは何とか弾き返している。
しかしそれは余りに不安定な体勢から放った一撃であり、リタの剣を完全に弾き返すほどのものではない。
そうして彼が体勢を立て直すよりも早く、その刃を振るった彼女によって、セッキの身体は浅く切り裂かれてしまっていた。
『いいねいいねぇ!!この痛み、この熱さこそが戦いよ!!なぁ、そうだろぉ!!勇者様よぉ!!!』
致命的な隙を晒しながらも、浅い傷を受けただけで済んだのは、彼が咄嗟に体勢を立て直すことを諦めてその場に転がったからだろうか。
跳ねるようにしてその体勢から跳ね起きたセッキは、両手を広げると全身で喜びを表している。
彼のその脈動する肉体は、これこそが望んでいた戦いだと大いに奮えて表現していた。
「マーカス君、今行くから!!」
しかし彼女は、そんなセッキに関心など見せずに、その横を通り過ぎようとしていた。
彼女が目指しているのは、今もトロール達に嬲り殺されようとしているマーカスの下だろう。
今の彼女の力であるなら、そんなトロール二体程度、一瞬のうちに退けてしまえる筈だ。
『おいおい、つれねぇじゃねぇか・・・もっと楽しもうぜぇ!!!』
「くっ、この・・・邪魔を、するなぁ!!」
しかし、そうはならない。
自らの横を通り抜けようとしたリタに、セッキはその手の得物を全力で振り下ろしている。
その鋭さは、咄嗟に受け止められるような威力ではない。
リタが何とか身を躱しながら放った刃は、セッキの得物を僅かに切り裂いていたが、着地した彼女はマーカスからまた一歩、遠ざかってしまっていた。
『俺を倒さなきゃ、あいつを助けにはいけねぇぜぇ!!もう腹を括って、俺と殺り合おうぜぇ、勇者様よぉ!!!』
払った閃光が、弾けて消える。
なにものをも切り裂く聖剣に、それと打ち合わなければならないセッキは、その得物の振るい方に慎重さを求められるだろう。
しかしそのハンデキャップこそが、彼をこの戦いへの喜びへと導いていた。
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