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第二部 オッドアイの行方ー失われた記憶を求めて
長
しおりを挟む「お前、誰だよ。」
俺は不躾を承知で聞いた。
「私ですか?私は彼の…家族の様なものです。」
少し狼狽した男が躊躇いながら言った。俺は彼の発した言葉に苛立ちを覚えた。
家族の様な、ってなんだよ。俺だってカイに家族より信頼してるって言われたんだ。俺の方こそ家族みたいなもんだ!
「カイは家族は日本に居るけど居ないも同然だと言ってた。関わりたくないって。本当はアイツの何だよ?」
コイツらがカイの家族だとは思えない。こんなに裕福そうなのに、カイは何故あんなに大変そうなんだ?カイの情報を聞き出して何か悪い事を考えているんじゃないだろうな。
俺の訝しげな様子を見て三人は相談をし始め、三人が同意をした様に各々頷いた後それぞれ名刺を取り出し、それを女性が纏めて俺に渡すと中国語で話し出した。
「信用して頂きたいので誤解が生じない様正直に説明します。鹿波海静は我々の家系の長《おさ》なのですが、ある日突然姿を消してしまいました。我々は三年間彼を探し続けています。彼の無事をこの目で確認したい、その一心で日本中を探し、ここ香港までやって来ました。こちらは側近の染谷良臣、同じく石原拓海、私は東志津香と言います。彼の無事を見届けて話ができれば後は彼の望む通りに過ごして頂ければいいと思っています。彼が幸せに暮らしているのか、それを確認したい。どうかご協力頂けませんか?」
真剣な表情で訴える様子の三人に王さんが口を開いた。
「カイには…随分と世話になってます。彼が居てくれたからワシは亡き妻の悲しみから救われた気がするんです。面倒見の良い奴で、いつもこのフィンとつるんで酒を飲んでます。そして今も私の娘を救おうとしてくれている…。
あなた方がもし悪意を持って彼を探し出そうとしているのであれば今すぐここを出て行ってほしい。だが本当に彼が君達の言う長であるならばその証拠を見せて貰えないか?そうすれば彼の居場所を教えましょう。安否を確認したいとそう言ったね?彼には今少し危険な事を頼んだ所だから…。」
三人は顔を見合わせる。危険な事を頼んだと、王さんがそう言った瞬間に三人は血色を変えた。
「証拠は有りません。身分の証明が必要であればパスポートをお見せしましょう。私達の務めは彼を護る事。彼に会えるのならどんな事も厭いません。彼の為ならこの命を投げ打つ覚悟です。それは証拠になりませんか?もし彼が危険な目に遭う事が分かっているのなら即刻教えて頂きたい。彼の事を守れなければ香港まで来た意味が無い!」
ヨシオミと言う男はさっきまでの落ち着いた様子とは打って変わって顔を蒼くしている。カイの身に危険が及ぶのを本当に怖がっているようだ。王さんも同じ事を感じ取ったようで、彼らはカイにとって安全な人達なのだと判断した。
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