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第二部 オッドアイの行方ー失われた記憶を求めて
イけないキス 2
しおりを挟む空調が効いて肌寒い室温にカイが身震いをし、目に毒なその妖艶な身体にタオルを掛けようとした時カイの体が何だかあちこち黒いのに気づいた。汚れ、痣?否、黒いんじゃないな…赤いんだ。傷の様に見えたのは無数のキスマークだった。
怒りで頭に血が昇っていくのが自分でもわかる。手がわなわなと震えだしグッと拳を握りしめて憤る衝動を抑える。
何されてんだよ、カイ…お前、怪我してるのに、こんなに沢山キスマークつけられて無防備に寝て、俺の気も知らないで…。
――俺の気も知らないで…か…。
そう言えば面と向かって好きだと言ったことがあっただろうか。
カイに「好きな奴が傍にいればいい」とか「大事に思ってる」とか言葉尻に含ませて好意を伝えてはいても、直接言ったこと無かったんじゃ無いか…。
「俺はバカだな…。」
触ってはならない聖域に触れる様に、俺は一度拒絶された親指で彼の唇をそっと触った。すると口元がふっと緩く開く。ちらりと動く舌が見え、誘われるように親指をそのまま中に少しだけ入れると不意にその指を舐められ背筋に電気が走った。寝込みを襲っているという背徳感を持ちつつも我慢できずその舌の柔らかさにたまらなくなって俺は口唇を寄せた。
「カイッ…。」
上下の唇を何度も優しく味わう様に舐めると、はぁっと吐息が漏れ出す。その吐息だけで全身が痺れる様だった。濡れた口に恐る恐る舌先を入れると誘われて彼の舌が呼応する。愛しさに耳がじりじりした。動かす粘膜が運ぶ蜜の甘さに俺は夢中で口の中を舐め回す。
「…キスってこんなに美味しいもん…なのか…。」
舌を吸うと息が上がり、零れる唾液を絡め取ると身じろいで腰を動かす。こんなに甘く、こんなに無防備にあいつに甘えるのか…。
俺と判らずキスを許す彼を奪っている自分が嫌いで、揺り起こして俺だぞと言ってしまいたくなる。けれど俺と判れば拒絶されてもうキスが出来ないのなら、このまま全て奪ってしまおうかと邪な考えがよぎる。いっそ嫌いになれたら良かったのに…。
「――お前が好きだ。」
起きて欲しい、でも起きないで欲しい。俺は複雑に交差する気持ちのまま彼の胸に口づけを落とした。
「…っはっ…んぅ…ゃっ…。」
艶かしい声を出されて理性が吹っ飛びそうだ。細い体を抱きしめ乳首を舐めるとビクンと体が跳ねた。自分を制御しようとするが、綺麗な体につけられた無数にある愛撫の証を見るとそれらを上塗りせずには居れなかった。その証を消すように俺は強く痕を吸う。
「っイッ…っ…、イタイ…良臣…。」
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