現代社会とダンジョンの共生~華の無いダンジョン生活

シン

文字の大きさ
1 / 96

しおりを挟む
 世界中に色々な歪みを引き起こした第二次世界大戦。

 俺の住む日本は大日本帝国として参戦し、アジアを大きく席巻したが、最終的には本土の空襲と世界で唯一核爆弾を使用される事になり、敗戦国となった。

 その後はGHQによる占領統治を行われ、日本だけど日本じゃない状態が続いた。

 だが我等が大和民族の先達の方々は、何も無い焼け野原から立派に国を復興してくださり、その甲斐あって短いようで長かったGHQの占領統治を終える事が出来た。

 その後、高度経済成長が訪れ、それに呼応するかの様に全国に[ダンジョン]と呼ばれる、物理法則や生物論を無視するかの様な迷宮が出現した。

 ダンジョンの中には[モンスター]と呼ばれる魔物が生息し、貴重な鉱物が豊富に存在し、モンスター由来の食材や素材も入手出来る、敗戦から立ち直り新たな成長を目指す国家や国民のお腹やサイフを支える、夢の様な場所だった。

 そのダンジョンに入りモンスターと戦い、資源を持ち帰る者達は[探索者]と呼ばれ、当時は一攫千金を目論む卑しい奴らと蔑まれていたが、徐々に職業として認められる事になる。

 そして月日が流れ現代になると、なりたい職業ランキングでは上位に入る事は無くとも、立派な職業として認識されるようになり、ダンジョン探索者組合ーー通称ギルドーーや、探索者を集めた法人が設立され、ダンジョン探索は華々しくは無いが、生活に欠かす事が出来ない重要な役割を担う様になっていた。

 探索者達は漫画やアニメ、ゲームで出て来る様なチートレベルの特殊能力は無いが、命懸けの肉体労働をしている為身体能力は高かった。

 一部例外的にダンジョン内で発見される[スキルオーブ]という、スキルの封入された宝珠を使って、特殊なスキルを得た探索者も居るが、それは探索者1万人に1人レベルの貴重な存在で、スキルを獲得した探索者はギルドや探索者法人で取り合いになる程人気があった。

 例えば無限にアイテムを持つ事が出来る[ストレージ]のスキル、このスキルがあれば補給や運搬の心配をせずに、精神が保つ限り何日でもダンジョン探索をする事が出来るので、収入が倍どころか100倍にも1000倍にもする事が出来る。
 
 だからスキル保持者は貴重な存在で、ギルドや探索者法人で取り合いになるのだ。

 しかし他の探索者は身一つでダンジョンの探索をしていた。

 16歳になると探索者協会に行き、身辺の調査と簡単な試験と運動能力テストを受け、合格すると探索者として登録する事が出来る。
 
 そして探索者協会で武器や防具の購入の許可と、武器の携帯所持を許可される。

 ちなみに購入出来る武器は[刀剣類][槍][棍棒][ナックルダスター][斧][ハンマー]と、飛ばない武器に限定されている。

 銃や弓は所持も持ち込みも許可されていないが、ダンジョン内で犯罪や、災害級のモンスター発生時には、警察や自衛隊が銃器を持ち込み、ここぞとばかりに発砲をする。

 関係法令も厳しく、探索者がダンジョン外で武器を使い何らかの事件を起こして検挙され有罪判決になると、自動的に懲役年数が最低10年、罪科によっては自動的に無期懲役もしくは死刑判決が追加される親切仕様の刑法が整えられた。

 ダンジョン内での犯罪は立件が難しく、ダンジョン専門でパトロールをする警察内組織[迷宮機動隊]が存在しており、24時間365日体制でダンジョン内をパトロールしている。

 それは何故かというと、ダンジョン内はダンジョン由来の物を、大きさで変わってくるが1時間~12時間程放置すると、ダンジョンが吸収してしまうという、謎の性質があるからだ。

 犯罪を立証する証拠が消えるダンジョン内は、【誰かを消したい】犯罪者にとっては、格好の処理場になるからだ。

 それもそうだ。

 消したいモノが消えるまで見つからずに放置出来れば、ダンジョンが吸収してくれる。

 ダンジョン内での諍いも同様に、証拠が残らないのだからやりたい放題になる。

 だからダンジョン探索者の登録時に身辺調査が行われ、ダンジョン内で犯罪を犯させないように迷宮機動隊が常にパトロールをしている。

 まだまだ色々あるが、説明しきれないのでダンジョンの説明はこんな物でいいだろう。

 因みにダンジョンがあるのは世界で日本のみ、そしてダンジョンは多階層になっており、未だに踏破したという話は無い。


 そんな魅力的で危険なダンジョンで、生計を立てようと探索者になり、今日が初めてのダンジョン探索を迎えるのが、俺だ。

 俺は就活が上手くいかず、フリーターとして器用にやって行く自信も無かったので、探索者協会に登録し、職業探索者になる事を選んだ。

 先日高校を卒業したばかりのピチピチの18歳。

 在学中にバイトを頑張り探索者登録費用の5万円と、武器や防具、必要になる装備品や携行品を購入する費用の30万円を稼いで今日に至る感じだ。

 高校を卒業し、「大学の入学まで遊び倒そうぜ!」とか、「就職怠いけど入社式までドライブ行きまくろうよ!」とか、楽しそうにやっている同級生達を尻目に、俺の地元のダンジョン[桜ダンジョン]にやって来た。

 ダンジョン前にあるダンジョンゲート前で、先日購入した武器と防具を装着し、水や食料、救急用品が入っている大型のリュックを背負って、ダンジョンに入る順番を待っている。

 ダンジョンに入る際は、探索者登録証をゲート前の係員に渡し、入退場の管理用に登録証のスキャンと、登録証の真贋判定をされて問題無ければダンジョンに入る事が出来る。

 因みに探索者登録証はカード型で、貢献度によってカードの色が変わっていく。

 初心者は緑色、ある程度貢献すれば青色、結構頑張って銀色、凄い頑張って金色、伝説レベルで黒色となっている。まるで運転免許証のようだ・・・。

 そして色別の扱いだが、緑色は「ふんヒヨっ子が」、青色が「ふーん探索者なんだ」、銀色が「すげー!なんか奢ってよ!」、金色が「探索者様!」となっている様で、黒色にまでなると政府民間問わず超VIP待遇になるらしい。

 因みに俺は「ふんヒヨっ子が」レベルでございます。

 ゲート前に並ぶ事数分、とうとう俺の番がやって来た。

「次の方どうぞ~」

 呼ばれた俺は登録証を係員に渡して入場許可を待つ。

「ふんふん、安達臣さんね。へ~今日が初めてか、・・・・・・良し!問題無し!」

 係員のおじさんはモニターを見ながらブツブツ言っている。

「初めてだから無理しないでね。危ないと思ったら引き返すんだよ!」

 おじさんは満面の笑みで俺に登録証を渡すと「行ってらっしゃい」と送り出してくれた。

 登録証を受け取りゲートに進んで行く、そしてゲートに触れると一瞬の浮遊感と共に俺の視界は歪み、その数瞬後には石造りの通路に立っていた。

 人生初の、ネットや動画でしか見た事がないダンジョンに俺は立っていた。


しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【もうダメだ!】貧乏大学生、絶望から一気に成り上がる〜もし、無属性でFランクの俺が異文明の魔道兵器を担いでダンジョンに潜ったら〜

KEINO
ファンタジー
貧乏大学生の探索者はダンジョンに潜り、全てを覆す。 ~あらすじ~ 世界に突如出現した異次元空間「ダンジョン」。 そこから産出される魔石は人類に無限のエネルギーをもたらし、アーティファクトは魔法の力を授けた。 しかし、その恩恵は平等ではなかった。 富と力はダンジョン利権を牛耳る企業と、「属性適性」という特別な才能を持つ「選ばれし者」たちに独占され、世界は新たな格差社会へと変貌していた。 そんな歪んだ現代日本で、及川翔は「無属性」という最底辺の烙印を押された青年だった。 彼には魔法の才能も、富も、未来への希望もない。 あるのは、両親を失った二年前のダンジョン氾濫で、原因不明の昏睡状態に陥った最愛の妹、美咲を救うという、ただ一つの願いだけだった。 妹を治すため、彼は最先端の「魔力生体学」を学ぶが、学費と治療費という冷酷な現実が彼の行く手を阻む。 希望と絶望の狭間で、翔に残された道はただ一つ――危険なダンジョンに潜り、泥臭く魔石を稼ぐこと。 英雄とも呼べるようなSランク探索者が脚光を浴びる華やかな世界とは裏腹に、翔は今日も一人、薄暗いダンジョンの奥へと足を踏み入れる。 これは、神に選ばれなかった「持たざる者」が、絶望的な現実にもがきながら、たった一つの希望を掴むために抗い、やがて世界の真実と向き合う、戦いの物語。 彼の「無属性」の力が、世界を揺るがす光となることを、彼はまだ知らない。 テンプレのダンジョン物を書いてみたくなり、手を出しました。 SF味が増してくるのは結構先の予定です。 スローペースですが、しっかりと世界観を楽しんでもらえる作品になってると思います。 良かったら読んでください!

異世界だろうがソロキャンだろう!? one more camp!

ちゃりネコ
ファンタジー
ソロキャン命。そして異世界で手に入れた能力は…Awazonで買い物!? 夢の大学でキャンパスライフを送るはずだった主人公、四万十 葦拿。 しかし、運悪く世界的感染症によって殆ど大学に通えず、彼女にまでフラれて鬱屈とした日々を過ごす毎日。 うまくいかないプライベートによって押し潰されそうになっていた彼を救ったのはキャンプだった。 次第にキャンプ沼へのめり込んでいった彼は、全国のキャンプ場を制覇する程のヘビーユーザーとなり、着実に経験を積み重ねていく。 そして、知らん内に異世界にすっ飛ばされたが、どっぷりハマっていたアウトドア経験を駆使して、なんだかんだ未知のフィールドを楽しむようになっていく。 遭難をソロキャンと言い張る男、四万十 葦拿の異世界キャンプ物語。 別に要らんけど異世界なんでスマホからネットショッピングする能力をゲット。 Awazonの商品は3億5371万品目以上もあるんだって! すごいよね。 ――――――――― 以前公開していた小説のセルフリメイクです。 アルファポリス様で掲載していたのは同名のリメイク前の作品となります。 基本的には同じですが、リメイクするにあたって展開をかなり変えているので御注意を。 1話2000~3000文字で毎日更新してます。

唯一無二のマスタースキルで攻略する異世界譚~17歳に若返った俺が辿るもう一つの人生~

専攻有理
ファンタジー
31歳の事務員、椿井翼はある日信号無視の車に轢かれ、目が覚めると17歳の頃の肉体に戻った状態で異世界にいた。 ただ、導いてくれる女神などは現れず、なぜ自分が異世界にいるのかその理由もわからぬまま椿井はツヴァイという名前で異世界で出会った少女達と共にモンスター退治を始めることになった。

異世界に飛ばされた人見知りの僕は、影が薄かったから趣味に走る事にしました!

まったりー
ファンタジー
主人公は、人見知りな占いが大好きな男の子。 そんな主人公は、いるのか分からない程の影の薄さで、そんなクラスが異世界に召喚されてしまいます。 生徒たちは、ステータスの確認を進められますが、主人公はいるとは思われず取り残され、それならばと外に1人で出て行き、主人公の異世界生活が始まります。

最弱無双は【スキルを創るスキル】だった⁈~レベルを犠牲に【スキルクリエイター】起動!!レベルが低くて使えないってどういうこと⁈~

華音 楓
ファンタジー
『ハロ~~~~~~~~!!地球の諸君!!僕は~~~~~~~~~~!!神…………デス!!』 たったこの一言から、すべてが始まった。 ある日突然、自称神の手によって世界に配られたスキルという名の才能。 そして自称神は、さらにダンジョンという名の迷宮を世界各地に出現させた。 それを期に、世界各国で作物は不作が発生し、地下資源などが枯渇。 ついにはダンジョンから齎される資源に依存せざるを得ない状況となってしまったのだった。 スキルとは祝福か、呪いか…… ダンジョン探索に命を懸ける人々の物語が今始まる!! 主人公【中村 剣斗】はそんな大災害に巻き込まれた一人であった。 ダンジョンはケントが勤めていた会社を飲み込み、その日のうちに無職となってしまう。 ケントは就職を諦め、【探索者】と呼ばれるダンジョンの資源回収を生業とする職業に就くことを決心する。 しかしケントに授けられたスキルは、【スキルクリエイター】という謎のスキル。 一応戦えはするものの、戦闘では役に立たづ、ついには訓練の際に組んだパーティーからも追い出されてしまう。 途方に暮れるケントは一人でも【探索者】としてやっていくことにした。 その後明かされる【スキルクリエイター】の秘密。 そして、世界存亡の危機。 全てがケントへと帰結するとき、物語が動き出した…… ※登場する人物・団体・名称はすべて現実世界とは全く関係がありません。この物語はフィクションでありファンタジーです。

異世界でリサイクルショップ!俺の高価買取り!

理太郎
ファンタジー
坂木 新はリサイクルショップの店員だ。 ある日、買い取りで査定に不満を持った客に恨みを持たれてしまう。 仕事帰りに襲われて、気が付くと見知らぬ世界のベッドの上だった。

異世界でゆるゆるスローライフ!~小さな波乱とチートを添えて~

イノナかノかワズ
ファンタジー
 助けて、刺されて、死亡した主人公。神様に会ったりなんやかんやあったけど、社畜だった前世から一転、ゆるいスローライフを送る……筈であるが、そこは知識チートと能力チートを持った主人公。波乱に巻き込まれたりしそうになるが、そこはのんびり暮らしたいと持っている主人公。波乱に逆らい、世界に名が知れ渡ることはなくなり、知る人ぞ知る感じに収まる。まぁ、それは置いといて、主人公の新たな人生は、温かな家族とのんびりした自然、そしてちょっとした研究生活が彩りを与え、幸せに溢れています。  *話はとてもゆっくりに進みます。また、序盤はややこしい設定が多々あるので、流しても構いません。  *他の小説や漫画、ゲームの影響が見え隠れします。作者の願望も見え隠れします。ご了承下さい。  *頑張って週一で投稿しますが、基本不定期です。  *本作の無断転載、無断翻訳、無断利用を禁止します。   小説家になろうにて先行公開中です。主にそっちを優先して投稿します。 カクヨムにても公開しています。 更新は不定期です。

現代錬金術のすゝめ 〜ソロキャンプに行ったら賢者の石を拾った〜

涼月 風
ファンタジー
御門賢一郎は過去にトラウマを抱える高校一年生。 ゴールデンウィークにソロキャンプに行き、そこで綺麗な石を拾った。 しかし、その直後雷に打たれて意識を失う。 奇跡的に助かった彼は以前の彼とは違っていた。 そんな彼が成長する為に異世界に行ったり又、現代で錬金術をしながら生活する物語。

処理中です...