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parade1 石神井high school ーTADASHIー
しおりを挟む東京都立石神井高等学校(とうきょうとりつ しゃくじいこうとうがっこう)は、東京都練馬区関町北四丁目にある公立高等学校。男女共学。
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おれの名前は関新一。高校1年生。おれの行っている高校は、大西高校っていういわゆる進学校(通称西高)。医者に弁護士、企業の重役に世界をリードする研究者。未来のリーダーを育む教育理念のもと、主体的な学びを行なっている、らしい。こんなの西高の校長くらいしかイチイチ覚えてないんじゃないか。とにかくおれはそこそこ学力があるってこと。
自慢じゃないけど、中3のときの駿台模試じゃ総合3位だったこともあるんだ。塾長のお気に入りだっただけじゃなく、中学のダチからの羨望の目も半端なかった。多摩地域なら数学でおれの右に出るものはいなかった。でもおれは学力で人を見定めるやつが大嫌いなんだ。だって、いくらムズイ方程式を解けるよりも、人間に必要なものってあるよな。だからおれの仲がいいメンツは成績不善なやつが多い。
久野忠もそのうちの1人。背はけっこうデカくて、運動神経抜群。あいつは昔っからキレやすくて、起こした喧嘩の数ならピカイチだった。制服のボタンなんてつけたことがない。先生との個人面談は日常。入ってたバスケ部も顧問を殴って一発退場。けどほんとは、タダシはすごくいいやつなのだ。これを読んでるあんたらにもわかってほしいから、やつの優しさを象徴するエピソードを1つ。
あれは中3になったばかりのたしか5月だったな。うちの学校は治安が悪かったから、校舎の外には地元の高校生(?)がウロウロしていた。もちろん被害にあうやつはでてくる。事件現場はうちの学校の下駄箱をでたところ、正門の目の前。大根2本分くらいの図太い腕の高校生2人が、うちのクラスメイトを恐喝していた。脅されてたのは細田幸治郎ってやつ。背もちっさいし、黒く光るメガネはあふれる弱々しいオーラを強調している。おれは教室で昼寝をしていて、窓からその様子を見ていた。やばそうだったら助けにいってやろうかな。そう思っていたとき、タダシが下駄箱からでてきたのだ。そして一言、
「邪魔だからどけよ。」
やつの185センチの体格にびびったであろう高校生たちは、簡単には引かない。
「お前なめてんの。じゃあてめぇも金出せよ」
高校生の背のでかい方がタダシのみぞおちを殴ろうとした。なかなかのスピード。だがそのビックな拳がみぞおちに到達することはなかった。タダシはヒラリと右に体をスライド。すかさず殴り返すと、次の瞬間には高校生は倒れているではないか!
もう片方の高校生は急に弱々しい顔になり、でかいほうを担いで逃げていった。よくいるよな、だれか強い仲間がいると、自分も強いって思い込むやつ。虎の威を借る狐。
細田は高校生2人を撃破した大男をおそるおそる見ていた。なんせタダシも中学校で恐れられているのだ。するとタダシが信じられないことを言った。
「…とられてないか…?」
「え?」
「だから、金。…おまえんち弟がたくさんいてやりくり大変だって言ってたから…。」
細田はタダシを見直したのだそうだ。
おれは後でこのやりとりを細田から聞いた。
なにが言いたいかっていうと、あいつは気性が多少(?)荒くても、やるときはやる仲間思いのやつだってこと。余談だが、やつは意外にもノリがいいのだ。おれも学校ではサボりまくってた人間だったから、やつと仲良くなるのにそう時間はかからなかった。退屈な授業になると、おれたちはよく2人で近くの公園に行った。公園の目の前のセブンで菓子パンでも買って、いろんな話をしたものだ。
もちろん、日本経済がどうとかって話じゃない。タダシはいろんな遊びをおれに教えてくれた。夜遅くまでゲーセンに残ったり、火遊び禁止の公園で爆竹をしたり。おれには少々刺激が強かったが、とんでもなく楽しかった(何度か地元の警察の方々にはお世話になった)。
それでも夏になると、中3だったおれたちには受験勉強が押し寄せてきた。タダシはなにをして過ごしてたのかは知らないが、おれは塾の夏期講習で夜遊びどころではなくなった。何度かサボったこともあったけど、塾での勉強は基本的にはまじめにやってた。こう見えてもおれは、一度本気で立てた目標は追いかける熱いタイプなのだ。ストイックマン・シンイチ。
なんでおれがそんなに受験に燃えていたかっていうと、ある先輩が西高にいたからなんだけどここで話すと長くなるので省略。
そんな感じで受験の冬がやってきた。当日のことはよく覚えてないけど、追い込みに追い込み抜いたおれは東京でトップの西高に余裕で合格。そして驚くことに、タダシも都立高校を受験していたのだ。あいつが見事合格した高校は、都立石神井高校ってとこ。目の前にはコンビニと丸源ラーメンっていうラーメン屋。モットーは文武二道で部活動も盛ん。
正直勉強にはノータッチだったタダシが行けるとは思えないような学校だった。これには3B担任の高野もびっくり。
高校生になってからも、おれとタダシは連絡を取り合っている。退屈をしのぐのには、こいつほど面白いやつはいないんだ。
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