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企画開始

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コーティング技術を伝授して数日後の事。
話し合いが行われた。
場所は相変わらず俺の屋敷になる。
今回のメンバーを紹介しておこう。

・企画指揮
ライオット
ロイヤル・カインズ(貴族代表)

・企画補佐
セント・カーティス(貴族)
セリス(ギルド代表)

・製造指揮
サリーヌ(裁縫部門)
ドーン(武器部門)

・協力者
マルチ
ミズキ
ネネ(教会神官)

軍関関係者は来なかった。
ロイヤルの根回しで、この企画はカインズ家の指揮で行うことになったからだ。
なかなか、したたかな爺さんだなぁ~。
ミズキの話では、相当なお金が流れたらしい。
先行投資ってやつかな?

・ロイヤル
「では、進行状況を聞こう。」

・「技術の伝授は完了いたしました。
今後は企画時の裁縫担当にサリーヌさん。
企画後の武器担当ではドーンさんに指揮を取って頂きます。
また、技術を伝えるにあたりマニュアルを作成しました。これにより指導者の数を減らす事が可能になります。
更に適性試験用の用具を作成しました。
適性のある有望な技術者を選考する事で無駄な経費を削減します。」

・ロイヤル
「マニュアル?」

・「はい、いわゆる教科書です。
この教科書に沿って習っていけば習得できる様になっています。」

・ロイヤル
「なるほど、秘伝書と言う訳か、、、
この短期間でよく作成できたな。」

・「ただし、ワザと難しく作ってあるので適性のない人には作れない様にしてあります。
技術の希少価値を上げる為にそうしました。
この辺のさじ加減はお任せします。」

・ロイヤル
「ふむ、、、、、お主は?
企画後はどうするつもりだ?」

・「私はただの冒険者です。
ビジネスを続けるつもりはありません。
企画での技術を全てをお譲り、、、
全て売却いたしましょう。」

あぶねぇ、あまり無欲なところを見せちゃダメだ。
欲深い人間は無欲の人間を信用しないからな。

・ロイヤル
「売却か、、、、企画後も顧問として好きな時に手伝ってくれると嬉しいな。
相談役でも良い。
お主を拘束するつもりはない。
ただ、お主と言う才能を手放したくはない。
自由を約束しよう。
困った時にだけ助けてくれればいい。
どうだ?」

そう来たか、、、
想定はしてたけど、そこまで評価されているとは。

・ロイヤル
「この条件を飲めないと言っても今回の企画はやり遂げよう。
成功した時の報酬として、お主の商才が欲しい。
、、、正確にはライバルに渡したくない。
手元に置いておきたいだけだ。
お主の生活に必要以上に干渉しないと誓おう。」

技術の独占をしたいって所かな?
ん~、どうしようかな。

・「その条件になりますと、、、
私もこの技術を使ってもいいと?」

・ロイヤル
「他国に売り渡さなければ好きに使えば良い。
ただし、使用するときには『ロイヤルブランド』と広めてくれれば良い。」

喰えない爺さんだ。
ここら辺が落としどころかな、、、
交渉術では爺さんの方が上だからな。
向こうが本気を出す前に折れておくか。

・「解りました。ではその条件を飲みましょう。
今後、私は相談役として何かあった際に協力いたします。」

2人の話し合いは終了した。
結局、俺はロイヤルの商売仲間となったわけだ。
孤児を助けるための代償と言ったところかな?

・セリス
「話はまとまったな?
ロイヤル爺さん、アタシから一言言っておく。
必要以上にライオットを頼るんじゃねぇぞ?
ライオットを傷つけたらアタシがあんたを潰す。
いいな?」

セリスの言葉に驚くロイヤル。
しかし、すぐに笑って了承した。
この辺の器のデカさがハンパねぇな。
どうやら爺さんも落とし所を決めていた様だ。
その後、話し合いが続く。
そして、ついに結構の日取りが決まった。
決まってからが早かった、、、、
決行日は3日後。
実は用意する服は既に作ってあるのだ。
お陰でLVが上がりまくって私は満足です。
折角なのでステータスをご紹介しましょう。
日々、せっせと裁縫にいそしんだ結果を!

ライオット レベル28 手持金 10万c
筋力 131 補正値 60  計 191
知力 152 補正値 280 計 332
敏捷性148 補正値 60  計 208

スキル
チートマップ・精神自動回復・順応力

魔法
風属性 41 水属性 33 炎属性31

技能(補正値は装備時のみ発動)
剣術 22 補正LV4 筋力8 敏捷性8
杖術 20 補正LV4 知力20
盾術 21 補正LV4 筋力20
槍術 20 補正LV4 筋力12 知力4
体術 20 補正LV4 筋力10 敏捷性12
射撃 31 補正LV6 筋力12 敏捷性12

特殊技能(補正値は常時発動)
採取 31 補正LV6 筋力30 知力30
採掘 11 補正LV2 筋力10 敏捷性10
魔装 43 補正LV8 知力80
操舵 27 補正LV5 敏捷性50

加工技能(補正値は常時発動)
裁縫 42 補正LV8 知力80
鍛冶 10 補正LV2 筋力20
錬金 10 補正LV2 知力20
魔生 38 補正LV7 知力70

どうですか!
素晴らしい成果だと思いませんか?
レベルも2上がり、各々の武器レベルを20辺りにしてみました。
手あたり次第に石を投げまくってたら射撃が予想以上に上がってる事に驚きましたがね。
そして、採取・裁縫・魔生が上がりまくりました。
地味に操舵も上がっています。
移動には毎回馬車を使ってましたからね。
そして、、、、何よりお金がエグイ。
ロイヤルからの資金提供と虹糸の購入で恐ろしい金額が屋敷に振り込まれていました、、、
俺が家主なのになぜ知らない?
サリスが色々と裏で動いていたみたいです。
そして、セリスが10万cまで入る財布を渡してきたのだ。

・セリス
「とりあえず、常に10万は携帯していろ。
困ったときは好きに使えば良い。
ギルドにはお前名義で多額の資金があるから無くなったら言ってくれ。
金額の詳細はサリスに聞けば教えてくれるぞ。
個人が好きなだけ使っても余るくらいあるらしいからな。」

と言う、なんともカッコいい一言と共に。
いつの間にかお金持ちになっていたらしい。
お金の必要性も余り感じないから放置で行くか。
では、企画に話を戻しましょう。
事前の準備は万端だ。

イベント当日。
準備会場はロイヤルの屋敷となった。
そこで、俺は初めて5大貴族の1人『バーバラ・カインズ』と逢う事になる。

~カインズ邸~

・バーバラ・カインズ
「はじめまして、ライオット殿。
貴殿の話はお爺様より伺っている。
今回は我が一族の為に色々と動いてくれたらしいな、礼を言おう、感謝する。」

いえ、別に貴方がたの為ではないのですが、、、
でも5大貴族って言うくらいの大物が簡単にお礼を言ったぞ?
なかなか話の分かる人なのかもしれないな。
俺は軽く挨拶をしてバーバラに企画説明をする。
企画内容はこうだ。
企画開始と同時に城から拡声魔法での放送が入る。
放送で話す人物はなんと王様だ。
何だかんだで王様まで引きずり出したロイヤル。
やはり、かなりのやり手だった。
事前に告知を受けていた国民は家の前にて整列。
そこでレプリカの服を配るのだ。
全ての国民に行き渡る様、既に隠密部隊が家族構成などをまとめた資料を部隊に展開済みである。
そこにバルドロスト率いる部隊が区画ごとに別れて配っていく事となっている。
上手くいくかはバルドロストの手腕次第かな?
一方、貧民街と孤児についてだが、、、
こちらは結構苦労した。
なんせ何処に誰が居るのか解らないからね。
しかし、そこは俺のマップ機能が有効に働いた。
ミズキの厳選した隠密部隊に、使用回数制限を掛けたマップ機能を使わせたのだ。
それっぽい道具をダミーとして渡して『一回限定の道具』として騙しておいた。
スキルだと知れたら面倒な事になりそうだったし。
当日も同じ様に『マップ道具』を各部隊の代表に渡すつもりだ。
これは魔道具生成の実験過程で『マップ受け渡し』の機能を付属した道具の開発に成功した物を渡すつもりだ。
俺の魔力が道具に仕込んであり、使用者の魔力と結合してスキルが発動するのだ!
お陰で今回は前みたいに魔力での受け渡しをしなくて済む。
この技術も今後、役に立ちそうな気がするなぁ~。

準備も終わりを迎え、バーバラが全員を集めた。
、、、、すっごい数の人がいるのですが。
主に兵隊さんがいっぱいだね。

・バーバラ
「皆の者、準備ご苦労だった。
イベントの成功は各々の活躍に掛かっている。
企画成功後は報酬も支払うと約束しよう。
既に半額が各々のギルドカードに支払われている。
頼むぞ、諸君。」

詳しい金額は知らないが、結構な額が支払われていると聞いた。
兵隊さんの動きがキビキビしていたのはそう言う事なんだろうな。
抜け目ないなぁ~、ロイヤル爺さん。

・バーバラ
「それではこれより、今回の企画者であるライオット殿の挨拶を。」

なっ!!!
ちょっと聞いてませんが!
逃げようとする俺を、いつの間にか表れていたロイヤル爺さんが止める。
くっそ、いつの間に居やがった?

・ロイヤル
「ふふふ、どんな挨拶をするか楽しみじゃな。
ほれ、さっさと行かんか。」

こんのジジイ、、、楽しんでやがるな。
ニマニマしている顔を殴ってやりたい、、、

・バーバラ
「では、ライオット殿。」

バーバラもニマニマしてる、、、
この似たもの親子め、覚えてろよ?
仕方なく俺は壇上に向かった。

・「えっと、、、どうもライオットです。」

想像以上の人の数に恐れおののく俺。
こわいなぁ~、こわいなぁ~。

・「あの、今回は私の企画に賛同して頂き、、
その、、、誠にありがとうございましゅ。」

あ、、、噛んだ。
この緊張感がキツイ、、、
壇上下で笑ってる爺さんと娘が目に入る。
あの二人、、、、後で覚えてろ。

・「え~~~~、、、」

ダメだ、、何も出てこない。
頭が真っ白に、、、

・???
「今回の企画は国民の皆様に日頃の感謝を届ける為の企画です。
勿論、お手伝い下さった皆様にも同じように感謝をお届けする事も誓いましょう。
日頃から命を懸けてこの国を守っている。
そんな兵士の方々にまずはお礼を言わせて下さい。
ありがとうございます。
そして、この国を支えるすべての国民に、
ありがとうございます。
この企画で、この国がさらなる発展を遂げる事を願っています。
ここに宣言します。
『クリスマス大作戦』これより開始します。」

少しの静寂の後、盛大な歓声が沸く。
不思議だ、、、
俺の挨拶なのに他人事の様に観ている感じがする。
まるで映画でも見ている様だ、、、

・???
「相変わらずだな。
今回は意識があるみたいだが、、、、
前の様に無茶するんじゃないぞ。」

壇上で声援に応えながら独り言を言う俺。
俺、、、だよな?
その後、壇上を降りた時、突然痛みが走る。
頭を殴られたような衝撃の後、元の俺に戻った。

・「今のは、、、何だった?
前の様に、、、、?」

考えようとすると更に頭が疼き出す。
頭痛は次第に激しい痛みに変わる、、、、
余りの痛みに吐いてしまう。
そしてそのまま倒れ込んでしまった。
倒れる瞬間、俺は見た。
誰よりも早く駆けつけて支えてくれたセリスの姿。
心配そうに抱き留めてくれたマルチの姿を。
俺の吐き出した汚物を気にも留めすに抱きしめてくれた2人の感触。
その感触に安堵を感じたのだけは覚えている。
 

~主な登場人物~
・ライオット(主人公)
自分の中の謎の人物にはっきりと気付く。
しかし、その事を考えようとした時に耐えがたい頭痛に襲われて倒れてしまう。

・セリス(ライオット夫人の1人)
ミズキとマルチに女神の事を聞いて、ライオットの事を心配する。
ギルドの事よりライオットの事を気に掛けようと考えている。

・マルチ(ライオット夫人の1人)
特にやることが無い時でもライオットの近くに居る人物。
常に傍にいると言う女神との約束を忠実に守っている。
本人曰く『ライオットの傍に居たいから』らしい。

・バーバラ・カインズ(5大貴族の1人)
現カインズ家を取りまとめる人物。
ロイヤルの娘であり、商才はなかなかのもの。
似たもの親子でもある。
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