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装備品制作

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昨夜はよく眠れました。

自覚は無いんだけど結構疲れてたのかな?横になったら一瞬で眠てしまったぞ、俺が目覚めた時に朝食が用意されていた事に感激した。

朝食と呼んでいいのかな?

・「みんなおはよう。」

時間の感覚が鈍っているので朝なのか夜なのかサッパリわからん、唯一ミズキの持つ魔法具で時間が解るのだという。

時計みたいなもんか?

・ミズキ
「今日は私が作ってみました。
あなた、お口に合いますでしょうか?」

ミズキの料理か、隠密と言えば非常食ってイメージがある。しかし今回用意してくれた料理は寝起きに優しい柔らかパンと野菜のスープ、とっても家庭的な味がします。

・「美味すぎる、、、」

思わず目を瞑りながら天を仰ぐ、例えるなら柔らかなパンはまるで肉まんの生地のようだ。それを口に含むと優しい香りが鼻の奥を刺激する、心地の良い香りで思わず鼻から大きく息を吸ってしまう。そしてスープは野菜の旨味と調味料がベストマッチ、お互いの長所を引き出しながら自身を主張する。食材と調味料ってこんなにも調和が取れる物なのか?

・セリス
「美味すぎる。」

・マルチ
「美味!」

・リーシュ
「今度作り方を教えて。」

ミズキが少し照れくさそうにしている。
誇っていいよ。
これ程うまい料理は初めてだ。
野菜がこんなに美味いとは思わなかった。

・「幸せだ、、、」

思わず口に出てしまった。

・ミズキ
「良かった。」

ミズキは料理を何処で覚えたんだろうかね?この旨さなら現代日本で超有名な店でも開けそうだ、俺も教えて貰おうかな。

とても幸せな一時でした。


~野営地撤収後~

・「今日はもう少し下の階層まで進んで良い感じの狩場を見つけたら同じ様にLV上げをする、チーム分けは昨日と同じで良いかな?」

異論は特に無かった。

・「そうだ、ミズキにはこれを。」

俺はミズキに鉄製のクナイを渡す、LV上げの最中に鉄鉱が取れたのでサクサクっと作っておいたのだ。ミズキはクナイを遠距離攻撃で使用する、敵を倒した後に回収するが使い物にならなくなったらそのまま破棄していたのだ。
消耗品だから補充も必要だろう。

・ミズキ
「ありがとう。」

ミズキは嬉しそうに受け取った。

・ミズキ
「大事に保管しておきます。」

・「いや、使ってください。」

使わなきゃ意味無いでしょうよ。

・ミズキ
「何か勿体無い気がする。
夫からのプレゼントですもの。」

いや、使ってくださいね?
ドンドン作りますので。

・セリス
「私も何か欲しい。」

・マルチ
「私も。」

・リーシュ
「ライオット、、、」

解ってますって。
少し時間をくださいな。

・「それぞれ考えてる物があるから少し待っててくれ、大切な人には良い物を贈りたいから時間をかけて作りたい。妥協はしたくないからさ。」

せっかくミスリルが取れたからミスリル製のアクセサリーを作ろうと思うんだ。

一行はダンジョン深くに進んで行く。
8層まで進んで良い狩場を確保できた。

敵の方はかなり強くなっているが倒せない程でもない、この辺で良いかな?

・セリス
「なかなか深いダンジョンだな。」

・ミズキ
「こんなに深かったのね。」

・マルチ
「でも敵は倒せるよ。」

・リーシュ
「まだ進む?」

ダンジョン攻略に時間が掛かるという事が実感できたよ、探索も行ってると更に時間が掛かるしね。

・「要領は昨日と一緒で交代制にするね、最初の休憩が入るまでセリスチームは戦闘に不参加で良いから敵の特徴を見破ってくれ。」

まずはミズキチームが戦闘に出る。
セリスに敵の弱点を見破ってもらおう。

こうして再びLV上げが開始される。
この階層の敵はなかなか強敵だ。
お陰で一回の戦闘が長く掛かる。
その分負担も大きくなる。

・「少し火力を上げてみようか、その代わり休憩PTとの交代タイミングを早めよう。」

長時間の戦いになると理解していると無意識に加減してしまうよね、俺の癒しの鼓動の性能は身を持って体験してるんだしもう少し火力を上げさせても大丈夫だろう。

・セリス
「加減とか出来る相手じゃないし早めに休憩PTと交代するのは賛成だ、後は弱点さえ判ればこの階層でも同じ様なLV上げが可能だろう。」

セリスの分析によれば出来るらしい。
こういう時は実戦経験が物をいうよね。
本当に頼もしい仲間だな。

・「じゃあ無理しない様に戦っていこう、俺は少し集中したいから周りの警戒はマルチに頼んでも良い?ミズキチームが帰って来るまでには終わらせるから。」

・マルチ
「任せて!マップオープン。」

能力の共有って本当に便利だね。
これで俺も集中できる。
さて、何から作ろうかなぁ。

ライオットの加工スイッチが入った。


~数時間後~

・???
「、、、っと、、、、ラ、、、おっと。」

誰かの声がする。

・リーシュ
「ライオット!大丈夫?」

あれ?いつの間に入れ替わったんだ?
さっきまでマルチと話してた気がしたが。

・ミズキ
「信じられない程の集中力ですね。」

この世界に来てから度々起こる現象だ。
周りの事が全く見えなくなる。
昔はこんな事なかったのにな。

・リーシュ
「セリスに休憩に入る時にライオットを呼び戻してくれと頼まれました、これで良かったかな?」

顔を傾けて聞いてくるリーシュ。
はい!とっても良かったです。
お陰で無駄に元気が出たよ。
リーシュは可愛いね。

・「休む前に渡しておくよ、役に立つと良いけど。」

約束していたミスリル製の防具、アクセサリーに魔具生成術を施してみました。俺の持っている技術を全て叩き込んだのだ、魔石は豊富にあるので練り込みまくってます。

そして名前も付けておいた。
名前から連想出来れば使いやすいと思ってね。

・「ミズキには『風のグローブ』能力は風魔法、魔力を込めれば勝手に風属性に変換して手の平から風魔法を使用できるようになる。使い方は敵を倒すというより移動に向いてるかな?空中で方向転換したり急激なスタートダッシュとかね。もちろん込める魔力量で攻撃にも使えるよ!」

何度も失敗して完成しました。
まさに自信作です!

・リーシュ
「神器の魔防具?」

そんな立派な物ではないです。
俺はミズキにプレゼントを渡す。
ミズキは大事そうに抱き抱えた。

・ミズキ
「ありがとう、とっても嬉しい。」

たまに見せるこの表情が堪りません。
抱きしめたくなっちゃう。

いかんいかん、次はリーシュだ。

・「リーシュにはこれ。」

俺はピアスを取り出した。

・「『防魔のピアス』って言ってね、魔法攻撃から身を護る様リーシュを常に薄い魔力の膜で覆う様に設計した。これも魔力で展開するんだけど不意打ちにも対応できるように魔力吸収も付与したんだ、これで気付かない角度からの魔法攻撃もある程度防御できる。あくまで予備の防御なので魔法以外の攻撃には反応しない、だから過信は出来ないけど少しは役に立つと思う。」

魔力に反応して防護幕を張るシールドみたいなものだ。誰の魔力にも反応して展開するから後ろからの不意打ちにも対応するが魔力を帯びない物には反応しない。

流石にそこまでは対処できなかった。
今後の課題と言えるでしょう。

・リーシュ
「ありがとう、ライオット。」

少し顔が赤くなってるね。
大丈夫かな?

・「新しい戦闘区域だから無理しないようにね、疲労が少しでも大きいと感じたら直ぐに言うんだよ?」

二人はアクセサリーを身に着ける。
お互いに効果を試している様だ。

この辺は流石だね、初めて身につけたものは使用しないと理解できないだろうから性能のチェックと使用時の相性チェックは大事な事です。

・「チェックが終わったら休むんだよ。」

俺は俺の仕事に戻る。
この階層でもやる事は同じだ。
マップのチェックと採掘作業。
武具の制作に入ると周りが見えなくなるから我慢なのです、片手間に出来るインゴット造りと後ろからくる魔物退治、この階層でも順調にLV上げが出来そうだ。


~更に数時間後~

・セリス
「厄介なのが居た、逃げられちまった。」

珍しく悔しそうなセリス、セリスとマルチのコンビでが仕留めきれないとはなかなかの強敵と見た。

・マルチ
「厄介だった、魔法が効かない。」

ほほぅ、そんな敵もいるんだね。
それは魔法使いにとって相性が悪すぎる。
何か対策を考えておかなきゃな。

・セリス
「んで、私達にも何かくれるんだろ?」

・マルチ
「うんうん。」

交代の時にミズキに自慢されたらしい。
珍しくリーシュもドヤ顔だったと聞いた。

リーシュのドヤ顔か、見たかったな。

・「もちろん作っておいたよ。」

考えてみればこれが対応策になるか?

・「セリスには『氷滅剣』だ。分裂の魔石をコアに使用して術式を埋め込んだから魔力を込めれば剣のコピーを作成可能、魔力で作成した剣だから魔力で自在に操れる。セリスは魔力操作が抜群だから分裂させた剣を遠隔操作で動かせば物理攻撃が出来るだろう?本体があればコピーはいくらでも製作可能だし魔力操作が上手ければ何本も一気に操作できる。魔法が効かない相手でも魔力で物理全方位同時攻撃が出来る。」

少し早口になってしまった。
興奮しているのは俺の方だろう。

・セリス
「神器よりも凄くないか?能力アップの恩恵ってレベルを超えてるぞ、本当に貰っても良いの?」

・「もちろんだよ、後で少し試してくれ。少しでも役に立つと嬉しい、ちなみにコピーの剣は魔力で作成されるが材質はミスリルと同じだ、コピーする段階で工夫すれば大きさも変えられる。この辺りはマルチと相談して色々試してほしい。」

マルチも凄腕の職人だ、俺の気付かなかった角度でアドバイスしてくれると信じよう。

・「最後にマルチはこれ。」

俺は指輪を取り出した。

・マルチ
「夫婦の証!」

指輪ってこの世界でもそうなのか?
チョイスを不味ったかもしれないな。

・セリス
「指輪だと、、、。」

セリスが手を止めてこちらを見ている。
腕輪辺りにしておけば良かった。

・「えっとこれは『魔強の指輪』って言ってね、って聞いてる?」

何だかマルチがフワフワしています、セリスが悔しそうにしているのはスルーしておこう。

・「説明するので聞きなさい。」

・マルチ
「はぁい!」

怒られても嬉しそうなマルチ。
大丈夫かしら?

・「簡単に言えば魔法の威力を上げるものだよ。魔力を自動回復できるマルチだから渡せる代物かな?普段より少し魔力の消費量が上がる代わりに威力を上乗せ出来るようにしてある。」

・マルチ
「私にピッタリだね!」

それは性能の事?
それともサイズの事?

嬉しそうに指輪をはめるマルチ。
伸縮性があるのでどの指でもピッタリなのだ。

・セリス
「ライオットよ、、、」

どうしたセリス?

・セリス
「悪い事は言わない、特に性能とか関係なくて良いから人数分作っておけ。そして私にも指輪を頂戴。」

マルチの姿を見てるとこのまま何も作らなかった時の未来が何となく想像できる。どこかのタイミングでみんなの分の指輪を作ろう、そしてマルチにはもう一つ何か作ってあげよう。

謎の危機感を覚えるライオットであった。
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