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新たな仲間

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~オルドラ王国上空~

グランが無数の飛行する影に追われている。

・魔族
「威勢が良いのは最初だけですか?」

地上では戦闘が始まって結構な時間が経つ。
その様子を眺めながら飛ぶグラン。

・グラン
「そうだね、僕も飽きてきた所だよ。」

魔族にそう答えるグラン。

・グラン
「そろそろ良い頃合いかな?」

そう言い放ち魔力を開放する。
魔族だけに向けられた魔力。
鋭くとがって突き刺さる。
そんな感じがした。

・魔族
「貴様、ただ者ではないな?」

警戒し始めた魔族。
眷属の魔物を自身の周囲に呼び戻す。

・グラン
「さて、そろそろ終わりにしようか。
僕もやりたい事が増えたしね。」

空中で浮遊しながら魔族に手を向ける。

・魔族
「何をする気だ、、、」

警戒心が高まった魔族は動かない。
その様子を見たグラン。

・グラン
「あれ?さっきまでの勢いはどうしたの?
威勢が良いのは最初だけかな?」

魔族に言い返す。
その言葉に魔族はキレた。

・魔族
「小僧!後悔するなよ。
いけぇぇぇ。」

魔族の合図で魔物が一斉に襲い掛かる。

・グラン
「自分で来いよ。
全く、最近の魔族はこの程度か。」

グランの纏う空気が変わる。

・グラン
「『冥魔法・特異点』」

グランが魔法を展開。
すると前方に居た魔物が吸い寄せられる。

・魔族
「何だ?何が起こっている?」

凄まじい勢いで吸い寄せられる。
あれ程いた魔物がグランに襲い掛かった瞬間に消え去る、グランの手に吸われている?

・グラン
「まだ全力には程遠いぞ?
ほら、頑張って逃げてみろ。」

非常事態、それだけは理解できる。
魔族と魔物は逃れようと飛ぶ。
しかし吸い込む力が強すぎる。

・魔族
「一体何なんだこれは。」

・グラン
「冥途の土産だ、教えてやる。
ブラックホールって知ってるか?
高密度で強烈な重力持つ謎の天体だそうだ。
そこでは光すら吸い込まれるという。
俺は知らないがな。」

懐かしそうに語るグラン。

・グラン
「この魔法の真骨頂は超重力だ。
吸い込まれれば塵よりも小さく潰される。
死に物狂いで逃げるんだな。」

血の気が引いて行く魔族。
どれだけ逃れようとしても逃れられない。

・グラン
「さぁ、もう終わりにしよう。」

グランの魔力が高まる。
その瞬間、前方に居る全てを飲み込む。
一瞬にして魔物の群れが消え去った。

・グラン
「ランバート、君が教えてくれた魔法だ。
君を騙した人間を助ける為に使うとはね。
何とも皮肉な話だ。」

何も居なくなった空でグランは呟く。
その姿はとても悲しそうだった。

・グラン
「しかし驚いた、あいつらが来ているとはな。
さて、懐かしい顔に逢いに行くか。」

グランはその場から消える。

こうしてオルドラ上空の危機は去った。
たった一人の力によって。


~南海門防衛戦・前線~

・ベルガル
「クラス様、何なりとご命令を。」

そんなベルガルの姿に困り果てるクラス。
ニュートは現在意識が無い。
キロスも魔力枯渇に耐えきれず意識を手放した。

・クラス
「えっと、とりあえずニュートを運んで。
キロスと共に寝かせたいと思います。」

・ベルガル
「御意。」

ベルガルはクラスに従順だ。

・クラス
「どうしたら良いかしら?」

状況に付いて行けないクラスであった。
その時、

・ベルガル
「何奴!」

一瞬でクラスの前に立つ。
まるで主人を守る衛兵のようだ。

・グラン
「相変わらず感覚が鋭いみたいだな。」

グランが姿を現す。

・ベルガル
「まさか、、、、いや、ありえん。
しかし、この魔力は、、、」

混乱中のベルガル。
考えられない事が起こっている。
そんなベルガルをよそに。

・クラス
「グラン、無事だったのね?
良かった、心配したのよ。」

グランに話しかけるクラス。

・グラン
「こっちも無事に済んだんだね。
来るのが遅くなっちゃってごめんよ。」

クラスとグランのやり取りを見守るベルガル。
とてもベルガルが想像する人物とは思えない。
だが本能が叫んでいる。
この人物は紛れもなく我が主だと。

・ベルガル
「お久ぶりでございます。
魔王グランツァー様。」

・グラン
「グランツで良いよ。
何か人間にはそう伝わってるらしいしね。
、、、じゃなかった、今はグランだ。
もう魔王じゃないから普通に接してくれ。」

・ベルガル
「しかし、、、」

ベルガルはどうしたらいいか解らない。

・グラン
「んで、状況説明して貰えるか?」

グランは早くそこが知りたい。
まだ行かなければならない所がある。

・ベルガル
「はっ!ご報告いたします。
現在5カ所にて王国に襲撃中。
魔族は3人、魔貴族が2人。
こちらは今しがた人間に敗れました。」

・グラン
「へぇ~、お前を倒すなんて凄いな。
想像以上に成長したなニュート君。」

魔族が来るとは予想していた。
だが想定外の事が起きていた。
ニュートの相手は元魔王四天王。
ベルガル・ゾートだったからだ。

だからこそグランは今の状況が解らない。

・グラン
「性格上、お前は手加減をしない。
迷いはあったと思うがな。
だが四天王のお前が本当に負けたのか?」

どうしても聞いてしまう。
ベルガルの強さは良く知っているから。

・ベルガル
「恥ずかしながら冒険者ニュートに敗れました。
その折、散りゆくだけとなったこの命をクラス様に救って頂きました、そして我はクラス様の盾となる事を決意した次第であります。」

・グラン
「凄い展開だな。
流石にここまでは読めなかった。
ではここは任せていいんだな?」

・ベルガル
「はっ!お任せください。」

グランは安心した。
完全にベルガルがこちら側に着いた。
敵だと恐ろしいが味方だと頼もしい。
任せても大丈夫だろう。

・グラン
「クラス、ベルガルをよろしく頼む。
こう見えて優しい奴だ。
きっと君の助けになるだろう。
僕はまだ行かなきゃいけない所がある。
ここを任せて良いかな?」

グランはクラスに尋ねる。

・クラス
「とりあえず危機は去ったと思う。
ベルガルさんも居てくれるみたいだし。
こっちは大丈夫だよ。」

その言葉にグランは笑顔になる。
そして最後にこう伝えた。

・グラン
「魔王四天王ベルガル・ゾート。
我がグランの名において盟約を解除する。
以降クラス・カーティスを護る盾となれ。
あと、人間の姿で傍に居ろよ?
魔族とバレると色々面倒だからな。」

義を重んずるベルガルの事だ。
俺の生存を知って揺れるかもしれん。
ならば先に手を打っておけばいい。
お前の隙に生きろ、ベルガル。

・ベルガル
「ありがたき幸せ。」

ベルガルが頭を下げる。

・ベルガル
「これで罪悪感が無くなりました。
魔王様は亡き者だと思っていたしな。
そうだ、魔王様。
もう一人四天王が居ます。
彼女も救ってやってください、貴方と言う存在を無くし自暴自棄になってます。」

・グラン
「解った何とかしよう。
あの時、何も告げずに消えた事を詫びる。
すまなかったな、ベルガル。」

きっと二人にしか解らない何かがある。
クラスはその様子を黙って見つめていた。

そしてグランが目の前から消えた。
次の場所に向かったのだろう。

・ベルガル
「さぁ、クラス様。
我々は我々のすべき事を。」

ベルガルが人の姿に変身した。
魔貴族ともなるとこんな事も出来るんだね。
クラスは感心していた。

ベルガルはニュートを運ぶ。
これでここはもう安心だ。

『南海門』防衛戦は幕を閉じた。
強力な仲間が増えるという結果を残して。


~南海門防衛戦・後日~

・ニュート
「ぅぅん、、、」

ニュートが目覚めた。
ここはどこだろう?
見た事のない部屋だ。

・???
「目覚めたか。
ではすぐに主を呼んで来よう。」

俺が目覚めるとすぐに声を掛けてきた人物。
見た事ない人だったな。
この部屋は誰の部屋だろう?
それに主と呼んでいた。
名の知れた貴族の方かな?

俺はとりあえず状況を整理する。

・「俺がこうして無事だという事は、、、
ベルガルは倒せたのか?
クラスとキロスは無事かな?」

俺は立ち上がる。
そして窓の外を見て驚いた。

・「あの門、、、クラスの家?
じゃあここはカーティス家の一室か。
入った事のない部屋で解らなかった。
成る程、あの人が言った主とはセントさんの事か。
あの人は新しい使用人の方かな?」

確かに来ていた服もそんな感じだったな。
状況は理解した。
あとはクラスとキロスの安否だけだ。

あの時、俺は完全に気を失った。
ベルガルの一撃を受けて死んだと思っていた。
こうして生きているのなら、、、

・「クラスの治療魔法以外考えられないか。」

様々な仮説が立てられる。
そんな事を考えていると。

・クラス
「入ります。」

クラスが部屋に入って来る。
良かった、クラスは無事だ。

・クラス
「ニュート、無事でよかった。」

・ニュート
「クラスこそ、無事でよかったよ。」

二人は見つめ合う。
そして先程の使用人が入ってくる。

・使用人
「お互いに無事でよかったな。
全てはクラス様のお陰だ。」

お互いに?
この人は俺と誰の事を言ってるのかな?
ちょっと混乱してきた。

・クラス
「ベルガルの秘宝のお陰だから。
あの時、貴重なアイテムをありがとね。」

ベルガル?今、ベルガルと呼んだ?
俺は咄嗟にクラスの前に飛ぶ。
庇う様に立ちはだかった。

・ベルガル
「ふむ、そこまで動けるのならば安心だな。
信じがたいと思うが、、、まあ聞け。
我はクラス様に従える盾となった。
今後はお前の仲間と言う事だな。」

どうなってるんだ?
俺が寝ている間に何があった?

驚いている俺を楽しそうに眺めるクラス。
いやいや、説明お願いします。
ベルガルもこちらを見て笑っている。

一体、どうなってるんだ?
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