花魁紫吹の門出

七瀬蓮

文字の大きさ
上 下
10 / 22

初めての外出

しおりを挟む
身請をされて初めて外に出た紫吹は、環境が変わるだけで、見える景色も違うなと思っていた。

「紫吹。今日はどこに行きたい?」

と渋谷様に聞かれたので、

「あい。あちきは甘いものが食べとうございます。渋谷様のお勧めの甘味処に行きとうございます。」

と紫吹は自分にできる最善の回答をした。わたげ姐さんに

「自分の意見を言いすぎるのは我儘と思われるし、そよ風姐さんも良い気はしないだろうから、小さな願いを言うとうまくいくって他の姐さん方が話してたよ。」

と言う情報を教えてもらえてたので、甘いものが食べたいと言う小さな要求にした。

「それじゃあ、俺のおすすめの店にでも、行こうか。」

と手を引っ張って連れていってくれる渋谷様に心を惹かれながら、そよ風姐さんに対する罪悪感を抱いていた。

連れてきてもらったのは下町の小さな団子屋さんで、お客はまばらと言う印象だ。

「ここの団子が美味くてね。一緒に食べてくれる?」

と渋谷様は無邪気に言うので

「あい。楽しみでござりんす。」

と言うと、団子を二皿注文した。団子をお互い食べさせていると、亭主の男の人は、

「お。渋谷様、今日は若い女の子連れて、珍しい!いつもはそよ風さんときてるのに、浮気かい?」

と気さくに聞かれ、渋谷様は

「いやいや、そよ風にお熱なのは変わらないさ。この子は最近ウチに身請した紫吹さ。」

と笑いながら言う渋谷様を見て、そよ風姐さんという正妻がいながら、私を身請した意味って、、、側室だから文句を言えないのも分かってるけど、、気持ちの整理がつかない紫吹であった。
しおりを挟む

処理中です...