何も知らない物語

七瀬蓮

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3人の話

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「…シオン。ありがとう!私たちを助けてくれて!…」



そう言って、私の腕の中で泣き崩れるアンジュとマーガレットを、私は優しく抱きしめたのだった。



あんな気持ち悪い大男に関わられたらトラウマものだろう。と思い、黙ってシオンは2人を抱きしめた。



それから少し経って、落ち着きを取り戻した私とアンジュとマーガレットはカイトとシオンと一緒に旅をしたいと名乗り出たので、快斗に了承を得る為に一緒に戻った。


「……本当にごめんね?……さっきは取り乱しちゃって……」


「いえ、大丈夫ですよ」


……まあ、正直に言えばちょっと疲れましたけど……


とシオンは思いながらも、そう返した。


「……それにしても、貴方があの伝説の勇者様だなんて……とても信じられないわ……」


「あはは……そんな大層なものじゃないんですけどねぇ……」


と苦笑して言った。

……っていうか、もうその伝説とかいうやつ忘れてくださいよぉ……恥ずかしいからぁ……

伝説の紋章が生まれた時からシオンの体にあざとしてあった為、伝説の勇者と昔から言われていた。


「でも、貴方は間違いなく私の命の恩人だし、何よりあんなに強かったんだもの……やっぱり凄いわ!」

と目を輝かせて言うアンジュとマーガレットに、


「そ、それは……どうも……」


とそっけなく返した。私のアザがそんなに価値があるものなのか……うーん、なんかこのやり取り前もしたような気がするなぁ……なんでだろう?


「ところで、一つ気になってることがあるんだけど……」


とアンジュとマーガレットは、いそいそと尋ねてきた。


「はい?」

と答えると、


「貴方が着てるその服、どこで買ったのかしら?」


とどうでもいい事を聞かれたが、私のアザ以外のところを見てもらえた嬉しさで、



「これは自分で作ったの!」


とご機嫌で返した。
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