保育士夜は裏家業

七瀬蓮

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やりたくない夜の裏家業

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「そう、、」
と桜子は小さく呟くしかなかった。
そしてその夜、桜子は渉に少し外出てくるとだけ伝え、もう一つの裏家業に向かった。
「渉が何かしたんですか!」
向かった先で真っ先に出た言葉だった。
桜子のもう一つの裏家業はクノイチ。
「先日町のお偉いさんを狙撃したらしくて依頼が回ってきたんだよ。これが終わればお前の昇進は確実だ。報酬もたんまり出すと言われてる」
と上司から言われ私は「分かりました」と伝え家へ帰った。渉を暗殺すれば報酬も手に入る。だけど、幼い頃から一緒に育った渉の存在が自分の中でかなり大きいのも分かる。帰りながら小さい頃の思い出ばかりが頭をよぎる。
家に着くと渉が
「おかえり。遅かったね。俺の暗殺でも依頼されたか?」
「うん…」
としか言えなかった。渉は全てお見通しだ。
「じゃあ、これあげる」
と差し出されたのは野に咲く花を集めたものだった。不恰好だが、綺麗な花束だ。
「桜子ずっと大好きだった。やられるなら桜子がいい。あ、でも欲を言うなら茂の面倒を見てやってほしい。俺この怪我で治ってないから寿命でいっても潮時だろうし、」
私は涙を溢しながら「ごめん。ごめんね」と言い渉に毒を盛りとどめを刺した。息が止まったのを確認すると、渉の亡骸を本部へ渡し、任務は終了した。

後日昇進の話があったが私は断った。私が生きる意味って何だろう。話を聞いてくれたのは渡だけだった。それを失った今私に意味はない。育てていた薬草で毒を作り私も渉のところに行こうと思っていたら、茂が
「桜子、あそぼ!」だと言ってきてふと我にかえった。渡は茂を育ててほしいと言ったのだ。せめてもの償いとして、その役目を果たさなければと思い、保育士を今も続けている。
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