【完結】不器用な恋

あい

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二人きりの残業

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恵「ただいま戻りました~。」
玉「めぐさん!これ!颯大さんの歓迎会の作ったんですけど!」
恵「あ、はぁい。」

玉置ちゃんもうプリント作ったんだぁ。
いつになく仕事早いなぁ。

玉「出欠は水曜日までにお願いしまぁす!」
恵「了解!」

歓迎会かぁ。あたしお酒飲めないしなぁ。
しかも桐山颯大のでしょ?
でもやっぱり部の一員としては出なきゃだよねぇ。

玉「颯大さんもプリントどうぞ!」
颯「ありがとうございます。こういうのぱぱっと作れちゃうなんてさすが企画部っすね!」
玉「えへ!」

玉置ちゃん嬉しそう。
玉置ちゃんは可愛いし年齢的にも二人お似合いなんじゃないかなぁ。

小「めぐさん、これチェックお願いしてもいいですか?」
恵「OK!そ~だ、小林君メールみて!」
小「わぁ!めぐさんいつの間に!すみません!」
恵「必要でしょ!」
小「ありがとうございます!」

さすが咲やることが早い!
さっき頼んでおいたパソコンの新しいパスワードもう発行してくれてたから、小林くんに転送。

小「これがパソコンのパスワードになるから…」

小林君一生懸命教えてる。ファイト!って人のこと応援している場合じゃなかったぁ。
今週はお仕事盛りだくさんなんでした!頑張らなきゃ!

恵「部長、修正できました!」
彩「了解!」
恵「これから打ち合わせ行ってきます!」
彩「今日そのまま直帰だっけ?」
恵「一応その予定です!いってきまぁす。」
彩「いってらっしゃ~い。」


ふぅ~。打ち合わせ思ったよりも長引いちゃったなぁ。でも今日中にまとめとかないと今週末残業出来ないしなぁ。
しょうがない。一回戻ってやるか!

恵「あ。もしもしおばちゃん?ごめんなさい。今日残業になってしまって、夜ご飯キャンセルでお願いします!あ?それと金曜日は桐山君の歓迎会があるので、桐山君とあたしの分と夜ご飯なしで、門限の方もよろしくお願いします!」
お「はいよ~。」

うちの寮は社会人の寮だけど、門限が22時と決まっているの。
ご飯は基本的に朝と夜ついていて、必要ない時はキャンセルを入れておくのが決まり。
とりあえず今日は門限には間に合うように帰ろう。
ん?
もう皆いないはずなのに電気ついてる。
誰かいるのかなぁ?

颯「あれ?直帰じゃなかったの?」
恵「予定変更。桐山君はこんな時間までどうしたんですか?」
颯「またそのよそよそしい言い方。」
恵「別に普通ですけど。」
颯「ったく。俺は忘れ物取りに来たの。」
恵「そうですか。じゃ~お疲れ様でした。」
颯「なんだよその早く出ていけみたいな感じ。」
恵「用事がないのにここに残ってる必要ないでしょ。」
颯「…めぐさんいるなら俺も残ってようかなぁ~。」
恵「なんで?」
颯「だって、ほら、どうせ帰る所一緒だし!」
恵「あたしはまだ時間かかりますので、どうぞお先に。」
颯「そ~だ!俺ゴールデンウィークの企画考えてみろって部長に言われたんだった!」
恵「そんなの今やらなくても。」
颯「今やったっていいじゃん!」

も~なんなのぉ?

恵「夜ご飯は?」
颯「まだだけど!一緒に食べる?」
恵「そうじゃなくて。寮の。ちゃんと断ったの?」
颯「断る?」
恵「も~寮の規約読んでないんですか?」
颯「読んでない。」
恵「いらない時はキャンセルしないといけないんです。門限も22時ってあるし、その他にも色々。」
颯「え!門限なんてあるの!?」
恵「あります。」
颯「うわぁ~最悪~。」

ホントになんにも読んでないなんて信じられない。
なんて人のことを構ってる場合じゃなかった!
仕事!仕事!

颯「ね~こ~いう企画ってどうかなぁ?」
恵「いいんじゃないですか?」
颯「も~全然見てないし。」
恵「でも、そういうありふれた企画ではない方がいいと思います。」
颯「え。今ちゃんと見てたの!?」
恵「…。」

颯「ね~ね~。」

あ~も~今せっかくのってきた所だったのに~!

恵「ごめん!!10分だけ集中させて!!」
颯「…。」

びしっと言ってしまった。ちょっときつく言いすぎたかなぁ。って思ってちらっと見たら、なんだかよくわからないけど向こうも真剣に仕事してるみたいだからいっか!
自分の仕事急いでやらなきゃ!

よし!なんとかできたぁ~。
部長の机に置いて。明日見てもらおう。

恵「わ!!」
颯「な、何?」
恵「もう9時半!」
颯「え?あ~ホントだ。」
恵「きゃ~!門限!急がなきゃ!」
颯「え。わ。ちょ、待ってよ~。」
恵「ダッシュダッシュ!消灯OK!行くよ!」
颯「はぁ~い。え?階段?」
恵「9時以降はエレベーター止まるの!」
颯「マジかよ。」
恵「あ~も~なんで教えてくれなかったの!?」
颯「そっちが話しかけるなって言ったんだろ!?」
恵「あたしは10分だけって言ったのに!」
颯「なんだよそれ!ってか何してるの?」
恵「ヒールじゃ階段ダッシュで降りられないから脱いでるの!」
颯「足痛くないの?」
恵「そんなこと言ってる場合じゃないもん!」

あ~も~最悪~。
そこからひたすら駅までダッシュ!
間に合ったぁ~。とりあえずこの電車に乗れれば後は駅からまた走れば間に合うはず!
ふぅ~。

颯「大丈夫?」
恵「はぁ。はぁ。この電車に乗れればなんとか。」
颯「良かったね。」
恵「良かったねってなんでそんな他人事みたいな。」

“ビリッ”

ん?なんか今嫌な音がしたような…。
うわ!ど~しよう!
駆け込み乗車してスカートの裾がドアに挟まっていたのに気づかず動いたら破けちゃったょ!

颯「何?どうかした?」
恵「べ、別に。」

まさかこんなこと恥ずかしくて言えないょ。
とりあえず反対側のドアがずっと開くし、降りる駅はこっち側のドアで良かったぁ。

颯「なに?」
恵「なんでもないって。」

ちょっと様子みたらスリットの所が少しさけてるけどそんなにはひどくないから大丈夫そう。
良かったぁ~これならいけそう!

恵「次だよ。降りたらまたダッシュだからね!」
颯「はいはい。」
恵「さ!行くよ!」

エスカレーターを勢いよく駆け上がる!
って思ったら。

恵「うわ!な、何?ちょっと~!ひっぱらないでよ~!早くいかないと!」

一刻も早くいかないといけないのに急に止められたの。

颯「いいから。」
恵「全然よくないから。何?もしかしてどこか具合悪いの?」
颯「え?」
恵「急にいっぱい走ったから?」
颯「あのなぁ~そんなやわじゃね~よ。」
恵「じゃ~なによ!行こう!」
颯「バカ!動くなって!」

“ギュッ”

いきなり後ろから抱き締められたの!!
何これ!ど~いうこと!?

恵「ちょ、ちょっと~何するのよ!?」

そう言って突き放すけど、またぎゅってしてくる。
も~なんなの!?
人もいっぱいいるのにこんな所でなにするのよ~。

颯「こっち。」

今度は手を捕まれて人気のないほうに連れていかれたの。
な、何する気!?

颯「パンツ見えそう。」
恵「え?」
颯「スカート破れてる。」
恵「あ、うん。知ってるけどこれぐらいなら大丈夫だょ!行こう!」
颯「あのさ~一応女なんだから気にしろよ。」

え…?

恵「い、一応ってなによ!」
颯「とりあえずこれ巻いて。」
恵「ありがとう…。」
颯「行くぞ!」
恵「あ、うん!」

スーツの上を貸してくれたの。それから寮まで二人でダッシュ。

颯「ギリギリセーフ!」
恵「はぁ。はぁ。間に合ったぁ~。」
お「あらお二人お揃いで。」
恵「おばちゃんただいま~。」
お「はい。おかえりなさい。」
颯「あ~疲れたぁ~あち~。」
恵「お風呂先どうぞ。」
颯「え?」
恵「いいよ先入って。じゃ。」

“バタン”

そう言って部屋に入ったけど、なんだかまだ苦しい。
胸が苦しい。
久しぶりにこんなにダッシュしたからかなぁ。
あ。上着返すの忘れてそのまま持ってきちゃった。
さすが、会長のお孫さん。高いブランド物だぁ。
ほのかに香水の匂いがする。
ってあたしなにやってるの!?



“トントン”

颯「風呂あがったぞ。」
恵「あ。うん。」

ドア越しの桐山颯大の声。
手元にある桐山颯大の上着。
…。
だ、だからなによ!?
早くお風呂入ってさっぱりしよう!


ふぅ~いい気持ちだったぁ。
明日筋肉痛にならないようにちゃんと揉みほぐしたし。
あ。そうだ上着早いうちに返しておこう。

“トントン”

颯「あ~い。」
恵「月野ですけど。」
颯「めぐさん?」
恵「あ、うん。」

“ガチャン”

颯「ど~したの?」
恵「きゃ!ちょ、ちょっと~!」
颯「ん?」
恵「う、上着てょ!」
颯「…あ~。」

も~信じられない!いくらお風呂上がりだからって、人に会うときにはちゃんと服着てよ!

恵「着た?」
颯「はいはい。着ました。」
恵「これ。さっきはありがとう。」
颯「あ~。ってか髪びしょびしょじゃん。」
恵「まだドライヤーしてないから。」

“わさわさ”

恵「きゃ。」
颯「にしてももうちょいふけょ。」
恵「う~。」

いきなりタオルで髪の毛をわしゃわしゃされたぁ。

恵「もう大丈夫。帰ったらちゃんとやるもん。」
颯「風邪ひくぞ。」
恵「大丈夫だってばぁ~。」

そ~言ってわしゃわしゃのタオルから顔を出したら。
思ったよりも桐山颯大の顔が近くにあってびっくり!

恵「あ、ありがとう!」

あたし慌ててタオルを押し付けて帰ってきちゃった。
なんで?
なんでこんなにドキドキしちゃってるの!?
別になんにもドキドキする要素なんてないのに!

“トントン”

え?誰?

颯「めぐさん?」
恵「な、何?」

なんで再び桐山君!?
ちょっとやめてよ~なんで来るのよ~。

“ガチャン”

ゆっくりドアを開けたら。

颯「鼻血でたぁ。」
恵「へ?」
颯「今めぐさんに思いっきり顔面にタオル押し付けられたら出た。」
恵「うそ!?ちょ、ちょっと~大丈夫?」
颯「俺ティッシュ買い忘れてて。」
恵「と、とにかく中入って!」
颯「あ~い。」
恵「大丈夫?」
颯「だめ。」
恵「も~だめって。ちょっと鼻血出たぐらいでなにょ。」
颯「生まれて初めて出た。」
恵「うそ!?」
颯「ホント。」
恵「あはは!じゃ~今日が私の初体験~だね!」
颯「なんだよそれ。」
恵「あれ?知らない?昔番組でそ~いうコーナーやってたんだけど。」
颯「知らね~よ。」
恵「うそ~。もしかして世代ギャップ!?はい。これ鼻につめて。」
颯「げ。マジで。」
恵「マジで。」
颯「そんなだっせ~こと。」
恵「鼻血がでたら皆こうするの!ちょっと動かないでよ~!」
颯「だって~。」

もしかして恥ずかしがってるの?
なんかちょっと可愛いかも。

恵「ほら、ちゃんとつめて!」
颯「あ~い。」
恵「ぷぷ。」
颯「な、なんだよ!」
恵「なんでもな~い。」
颯「笑うなよ!皆やってることなんだろ?」
恵「あはは!」
颯「おい!」
恵「きゃはは!ダメダメじっとしてないと!」
颯「んだよ!」

なんか面白い。
子どもみたいで可愛い。

恵「しばらく横になってれば大丈夫だから。あたし髪の毛乾かしてきちゃうね~。」

桐山颯大は、最初の印象は最悪だったけど。
上着を貸してくれたり、照れ屋だったり、ちょっと子どもっぽいところもあったりして。
もしかしたら案外弟みたいな存在になるのかもしれない。

恵「具合ど~?」
颯「…。」
恵「寝ちゃったの?」

まぁ初日で彼なりに色々気を遣って疲れちゃったのかもね。
起こすのも可愛そうだから、弟よ、今日は特別にこのままベッドをつかわせてあげよう!
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