本日は晴天、平和なり

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折悪い始まり

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「その手に持っているものを下ろせ!やめろ!そんなことするなんて……お前、正気か⁈」

「正気さ。これの何がいけない?君達もやってみたら、やめるなんて考え無くなると思うよ」

「いいからやめるんだ!この……犯罪者め!」

「これは私の物だからどうしようが構わない筈さ。そうだろう?」

「……ぐぅッ!一理、ある!だが!」

「くどいな、君も。どんな見た目になっても美味しく頂くんだからいいじゃないか。ほれ、問答無用!」

「やめろーーーー!!」

「……なんです?あれ?」

「ロー特製唐揚げ時の毎度お馴染み無駄な攻防ですよ。唐揚げにマヨネーズをかけるろくでなしと何もつけず食べてほしいローの戦争です。まぁ、ローの負け続きですがね。……さぁ、冷める前に食べましょう。ローの唐揚げは冷えても美味しいですがやはり暖かい唐揚げは段違いに美味いですから。」

「……はぁ。……いただきます。……!美味い」



阿鼻叫喚の平和である。
ここはちょっと変わった者達が集まる至って普通な世界である。
騒がしいのはご愛嬌。
それがデフォルトであるから誰も気にはしない。そう誰も。
そして、食堂には一人二人また一人とどんどん人が集まり食事をし始めた。
その中で一際目立つのはご機嫌に歌を口ずさむ茶髪の青年・ヘルだった。彼は今日のご飯の唐揚げ定食を席に運び、手を合わせた。すぐに食べ始めるのかと思っていたが、ヘルは徐に懐に手を入れて何かを取り出した。


「じゃーん!!唐辛子~」


ヘルが取り出したのは粉唐辛子が入った瓶だった。
また、鼻歌を歌い始めたヘルは唐揚げの上に先程取り出した瓶の蓋を開けてかけるかと思いきや、その内側の細口ネジの穴あきポリ栓を取ってしまった。そして、一切の躊躇いを見せる事なく瓶口を真下に向けた。
なんという事でしょう。唐揚げの上に真っ赤な山が完成してしまった。やった本人は何食わぬ顔をして箸を持って唐揚げを一つ食べていた。だが、ある人はそれを受け入れる事が出来なかった。平気そうな顔で唐揚げを次々と口に入れるヘルの元に早足で誰かが近づいてきた。


「ヘルも!唐揚げはそのままが美味しいんだ!合わせていいのは檸檬だけだ!」

「もごもぐッ!!」

「口に!物を!入れて喋るなッ!」

「んぐっ!美味しいから、何でも良くない?」

「はあぁぁああッ⁈お前のその思考!食材!食べ物への!冒涜!即ち、罪だ!逮捕だ逮捕!」

「あ!」

「あ"ぁ"ッ!?」

「わぁ!スゴい!見てみて!ロー!」

「何っ?ッ!?」

「フリードが生クリームを唐揚げにつけてるよ!マヨネーズの次は生クリーム!スゴいね!」

「……ッお家に帰らせていただきます!!」


荷物を纏めて帰ろうとするローに慌てて駆け寄るヘルの兄弟分のニール。
賑やかな平和に一人、首を傾げながら唐揚げを頬張っているヤマは何故、こうなったのか自問自答してみるも、答えは出なかった。

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