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プロローグ・強き者達の出会い

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「………はっ……はっ…………はっはっ……」
僕は走った。
闇から。
いや、闇を纏ったような、敵から。
「──ちっ、うぉぉぉぉお!」
音が響いた。
その音は、色々なものを壊すほどの音だった。
「ぐあっ!」
「うぁぁあ!」
「がっ……!」
呻くような悲鳴にも似た声が聞こえた。
──しかし、追手はまだ来ている。
と言うより、この追手は全て偽物らしい。
同じ顔なのに、どれを倒しても同じ。
「どうやったら………勝てるんだよ………」
僕はとにかく逃げた。
右へ曲がると、奴らも右に。
左へ曲がると、奴らも左に。
そうするうちに、遂に行き止まりにぶつかった。
(やばい!やばいやばいやばい!これは………)
「──やっと観念してくれましたか………」
どうやら追い詰められたようだ。
「うるっさいな!このっ!」
僕は叫んだ。
叫びとともに、とてつもない振動が起こった。
「ぐぁぁあ!」
どうやら何体かはやれたようだ………が。
本体はまだ健在だったらしい。
偽物は一部しか消えていない。
「くそっ……!」
僕は思わず毒を吐いた。
「無駄ですよ。あなたは範囲攻撃は苦手なようだ。」
弱点を突かれた。
だが諦める気はなかった。
「うるさい!僕は負けない!」
しかし、僕には為す術がなかった。
敵の攻撃があと一歩というところまで来た時。
闇が──
それも、敵全員を。
「………え?」
僕は茫然ぼうぜんとしていた。
さっきまで僕はやられる側だった。
それなのに今度は、……相手がやられている。
「おい、そこの男。大丈夫か?」
ふと、そんな声が聞こえた。
そして声が聞こえるとともに、──男が降りてきた。
比喩表現ではなく、本当に上から降りてきた。
彼は僕の方を見て、安堵した。
「大丈夫そうだな。──っと、それより………」
彼は即座に後ろを向き、手を伸ばした。
人差し指を突き出し、………上へ向けた。
「──ね。」
すると、突然闇が地面から突き出し、敵をさらに貫いた。
敵は全滅………一人の倒れた人以外はすべて消えた。
「……とりあえずはこれでいいか。」
その時、僕はまだ知らなかった。
彼との出会いが、世界に脅威をもたらしたことを。
その出会いが──僕と彼を繋ぐ、罪の物語の始まりだったことを。
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