fictional story

白井

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居候

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「なぁ、お前、家族はいるか?」

いきなり男性が話を掛けてきた。何で家族と思ったが……家族……か。あまり覚えがない。崖から落ちた時の衝撃かわからないが……記憶が不安定だ。

「いや、覚えていない。崖から落ちて此処に流れついた時の記憶しかない。」

て言うかそれは服を着替えている人の前で何でこんな質問してくるんだろ。……ため口で話してしまった。

「……崖から落ちって……事故でも会ったのか?」

事故じゃないが……ここはあえて嘘をついておこう。自殺をしたとか言ったら色々と大変だ。

「あぁ……一応」

「本当か?」

この男性は俺を疑っているらしいが………何故疑っているのだろうか?
疑ってもこの男性には関係無いだろう。

「おい、何でそっちを向く」

「……貴方には関係ない」

男性は俺の方をしばらく見ていた。そして何かを納得したのかわからないが俺の首を掴み壁に押し付けた。

「グゥ!!」

「お前、自殺しようとしただろ」

何故、わかったのだろうか。そんな自殺しただなんて一つも言っていないのに……男性はさらに力を込めている。

「さっきの態度でわかったが、事故であった人間は貴方には関係ない何て言わない。それに服を脱がせた時、首にあざがあったしな」

……だがそれを知っていてどうなるのだろうか。それを知った所で男性には何も得はしない。それにこの男性とは赤の他人だ。男性が思い切り締められている。そろそろ息が限界だ。

「俺は自分の命を犠牲にする奴が大嫌いだ。だからそんな奴は俺が殺してやる」

「んな……理不……尽な……」

俺の意識が遠くなっていく……死ぬのか俺は……。死ねるのは嬉しいがだが殺されるのは嫌だ。

「どうせ捨てる命だったんだろ?」

「嫌……だ」

俺は男性の手を握りしめた。強く握りしめた。ただ殺されるのが嫌で男性に向けて俺はこの気持ちを言った。

「死……に……た……く……な……い」

…………

「はぁー、参ったな……」

こいつが死にたくないって言ったから止めたが……。どうするか……気絶してしまったし……また世話するのか。

「自殺するのは好きで殺されるのは嫌なのか」

ーー変な奴、死にたがりなのに

俺はこいつをかついだ。軽いな……海から拾ってきたときは水が服に染み込んでいたからそれの重さだったのだろう。しかしこいつは軽すぎるちゃんと食べているのだろうか?

「んぅ……」

「……女ぽいな」

服を脱がせた時もそうだったがこいつ本当は女かもしれない。……何を考えているのだろうか……俺は……

「気持ち悪いな」

…………

「…………!」

あれ?俺……生きてる?確か男性に首をしめられて死にそうになったけど……

「起きたか?」

男性が俺の横でリンゴを剥いていた。俺を殺さなかったのか……あんなに嫌なものを見るような目をしていたのに。

「どうして、俺を殺さなかった?」

男性はリンゴを剥いているのを止めた。そして問い掛けるように言った。

「さぁ?何でだろうか?」

「さぁ?って……」

俺はその答えを聞こうとした時、男性は俺の肩をポンと叩いた。そして俺の耳の近くで言った。

「しばらくの間は此処に泊めておいてやるが……死にたい時は言えよ。殺してやる」

その言葉は二回聞いたが今回は聞いたときゾクッと
背筋に寒気がきた。相手は本気だしいが泊めてくれるなら問題はないだろう

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