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一章 忌子、転生者。出会いは運命か、それとも 1話 

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 お似合いだな。

 護衛とは名ばかりの、ただ後ろを付いてくるだけの兵士から冷笑混じりに吐き出された言葉。悪意を隠そうともしないその言葉に、私は満面の笑みで答えた。

 そうでしょう? ありがとう。私もそう思うわ。

 私が思い通りの反応をしなかったからムカついたのだろう。わかりやすく表情をした彼を鼻で笑ってやった。傷ついたり怖がる素振りを見せたり、そんなの相手の思うツボだ。誰がしてやるものか。
 振り上げられた手に殴られても良かったのだが、それは別の兵士が止めた。生贄に傷をつけるわけには行かない。どうやらその程度の頭はあるらしかった。なんだ、つまらない。
 とはいえ、彼らに対しては少し憐憫の気持ちもある。これから、死んでしまうかもしれないのだ。その恐怖を嫌味として吐き出して発散しているのだろう。そう考えたら、私ほどではなくても、ちょっとだけ可愛そう。
 豪奢なドレスにレースのベール。ヒールの高い靴。宝石のネックレスにブレスレット、それからイヤリング。こんなに綺麗な服は初めて身に付ける。
 だけど――そのどれもが真っ黒だった。
 真っ黒な、花嫁衣装だ。
 さっき兵士が言ったのはそれに対する皮肉なのだろう。
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