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不自然な美との邂逅~記憶のデッサン帖
血管の浮いた人形
しおりを挟む9月初めのまだ暑い夕方、電車に乗ったら、4人掛けクロスシートのひとつが半分空いていた。
ラッキー、と思って座ったのだけど。
向かいに座っていた女子高生二人組の小柄なほうの子にギョッとした。
異様に細い。
半袖の腕を見たら、肘の骨が尖っていて、手首も指も肉が全然ついていなくて。
そのかわり、血管があちこち浮き出している。
隣りの子にもたれかかって眠っていたから、つい脚も見てしまった。
そしたら、ふくらはぎが棒っきれみたいで、膝の骨が丸わかりで。
やっぱり、血管が浮き出している。
ちなみに、隣りの子はガッシリした体型。
いや、それでも標準の範囲なのだろうけど、もうひとりの子のせいで、すごく大きく見える。
隣りの子は背も低そうで、友達同士というより、なんか、親子みたいだ。
顔は――。
眠っているからわかりにくいけど、まあまあ可愛いのかも、という雰囲気。
この季節には不似合いなほど肌が白くて、頬の肉づきも薄いから、透明感はすごい。
隣りの子が普通に日焼けしているので、よけいに際立つというか。
そこから10分くらい過ぎた頃かな。
スマホをずっといじっていた隣りの子が、その子の骨しかなさそうな肩とトントンとして、その子が眠りから覚めた。
ありがとう、って言うみたいにコクリとうなずいて、降りる準備を始める。
眠っていたあいだに予想した通り、顔は可愛いほうだった。
ただ、目が大きすぎて、健康な人の可愛さとは違う。
なんかに似ていると思ったら、ファービー人形だ。
ちょっと不気味な可愛さ。
(ごめんね、こんなたとえ方をして)
たぶん、拒食症なのだろうけど、今まで見たそういう子のなかでもいちばん細い。
背もかなり低いから、体重は間違いなく20キロ台じゃないかな。
結局、ふたりは同じ駅で降りていった。
後ろ姿を目で追うと、身長は10センチ以上違う感じで、体重なんてその子は隣りの子の半分もなさそうで。
他にも目で追っている乗客がいて、驚いたのは私だけじゃなかったようだ。
それでもどこか、あれは現実じゃなかったみたいな気がちょっとしている。
じつは眠っていたのは私のほうで、そういう夢でも見ていたのかな、とかって。
それくらい不思議な光景だった。
ちょっと不気味な人形みたいな可愛さ、そしてある意味、生きた人間の証しである、浮き出た血管が、今も目に焼きついている。
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