堅物辺境伯の溺愛〜虐げられた王宮奴隷は逃げ出した先で愛を知る〜

咲木乃律

文字の大きさ
78 / 91
第七章

今回の王都行きの一行は*

しおりを挟む
 いつもの王都行きでは、モント騎士団の警備を多数つけ、屋敷の者もみな引き連れて行くのだが、今回は急ぐ旅だ。騎士団員はクライドはじめ少数精鋭にし、高齢のノルデンは置いていくことにした。
 ノルデンを置いていくことにしたのには、フォリスのこともあった。フォリスはあれから体調が優れない。ドリカに脅され ルカをドリカに渡そうとしたことを、フォリスは涙ながらに謝った。ルカはフォリスを許した。お腹の子を心配すらした。
 もしかしたらドリカによって、また王宮に連れ戻されていたかもしれないのに、ルカは全てを許したのだ。ユリウスとしては許容しがたいものがあったが、当人がいいと言うのだからどうしようもない。
 フォリスはすぐにここを出ていくと言ったが、それを止めたのもルカだ。お腹の子のためには、ここにいるのが一番いいとフォリスを諭した。今はディックがずっとつきっきりだ。
 ルカも心配しているし、何かあった時のためにと、今回の強行軍からノルデンを外した。
 ノルデンは出発に際し、ルカにきちんと食べさせるようにとユリウスに念を押した。そこでユリウスは、食欲がなくとも比較的よく食べるエルセの実を、ミヒルに頼んで摘んできてもらい、大量に持参することにした。
 当然ミヒルとラウも共に向かうつもりだったユリウスだが、二人は馬車になど乗れるかと言い、向こうで落ち合おうと先に出発していった。ユリウスには見当もつかないが、精霊には精霊の行き方があるのだろう。
 ユリウスはくれぐれも王都で勝手な行動はするなとラウに告げておいた。
 ドリカのことは、コーバスの協力もあって片が付いたが、簡単に人を殺されたのではたまらない。なぜドリカを殺したとラウに問えば、あいつはルカの体を傷つけたと言う。ルカの存在そのものを閉じ込めようとした当人の言とは思えない。精霊相手に何を言っても無駄な気もしたが、ユリウスはとにかく目立つなよとラウに告げ、ミヒルにしっかり見張っておいてくれと頼んだ。

 ユリウス一行は、いつもなら立ち寄る領内の男爵家の屋敷もすっ飛ばし、王都へ向かって街道をひた走った。
 いつもは街道の通る領土の領主にも必ず挨拶をしていくのだが、今回は先触れを出し、急ぐ旅ゆえと断って通過した。
 日が沈むぎりぎりまで、進めるところまで進み、一行はようやく一日目の宿泊先となる宿屋に落ち着いた。
 ルカは宿屋につくなりソファに座り込んだ。よほど疲れたのだろう。ユリウスはルカを抱き上げるとベッドに運び、後ろから抱きかかえて膝の上に乗せると、革袋からエルセの実を取り出した。

「疲れているだろうが、少しでも食べろ」

 口元に持っていくと、ルカは食べたくないと首を振った。今日一日の移動の合間も、ルカは小さなパン一片しか食べていない。本人も食べなければと思うようだが、疲れもあって受け付けないらしい。
 ユリウスはエルセの実を自らの口に含むとルカに口づけた。舌で押し込むようにエルセの実を含ませると、ルカはむっとしたようにユリウスを見上げた。

「ずるい」

「俺の特権だと言ってくれ」

 もそもそとエルセの実を咀嚼しながら、ルカはユリウスから革袋を奪い取った。

「食べる。食べるから、そのかわり食べたらユリウスとするからね」

 ルカはエルセの実を次々に口に放り込んだ。
 ついでにとアントンお手製のクッキーも差し出せば、それももぐもぐとルカは食べた。
 本当は昨夜、ルカがしたいと言い出したのだが、ユリウスはルカの体調を考え、抱かなかった。それに体勢を考えれば、どうしても背中と大腿の傷に響く。明日からの強行軍を思えば、ユリウスがためらうのも当然だった。
 その時は大人しく引き下がったルカだが、気にしていたらしい。
 熱心にエルセの実とクッキーを食べるルカを見下ろしながら、ユリウスはどうしたものかと思案した。
 明日もまた強行軍だ。一日目から無理をしてはあとがもたない。ユリウスにとってはもちろん望むところだが、かといって思う様貪るわけにもいかない。

「食べたよ」

 どうだとばかりにルカは中身の減った革袋をユリウスに返し、振り返って背伸びするとユリウスに口づけてきた。無理な体勢で背中が痛んだのか。一瞬ルカは眉根を寄せる。
 ユリウスはルカを横向けに座らせ、腰を支えると上から覆いかぶさるようにキスを深くした。同時にワンピースのボタンを外し、中に手を差し入れると胸の頂きを指で摘んだ。ルカは瞬間体を跳ねさせたが、せがむようにユリウスの胸に縋り付いてくる。ユリウスは口づけながらしばらく
ルカの胸を弄り、スカートの下から手を入れるとショーツの中に指を忍ばせた。
 ルカのそこはすでに濡れていた。指で軽くかき混ぜるとくちゅくちゅと音がする。わざと音をたてるように弄ると、ルカが真っ赤な顔でユリウスを見上げた。

「それ、恥ずかしい」

 ルカが身を引こうとするのでさせじと腰を支え、指を挿れると内壁を擦った。ルカの中はユリウスの指に絡みつくように締め付けてくる。すっかりユリウスの与える刺激に馴染んだ体が、無意識に期待している。
 ユリウスはルカのよく感じる箇所を攻めた。ルカはびくびくと体を揺らし、必死にユリウスのシャツをつかんできた。

「ユリウス、もう……挿れて」

「まだだ。まだもう少し」

 ユリウスはルカの口を口づけで塞ぐと、ぐるりとルカの中を弄り、焦らすようにゆっくりと指を抜き挿しした。

「ん…….、ユリウスの意地悪…」

 ルカがたまらないというように身を捩る。しばらく指での愛撫を続け、ぎりぎりまで体が高まったことをみてとると、ユリウスは自らの下穿きを寛げ、ルカのショーツを剥ぎ取り、双丘をつかむと一息に自らを押し込んだ。急に与えられた激しい行為に、ルカの体は一気に限界を超え、すぐに達した。ルカは声をあげながら荒く息をし、体をびくびくと震わせた。ユリウスは下から突き上げるように何度か腰を動かし、精を放った。
 ルカの体はすでにぐったりとしている。

「ルカ」

 呼びかけてもルカの瞳は閉じたままだ。先程の荒々しい息がうそのように、穏やかに呼吸を繰り返している。ユリウスは自らのものを引き出すと、ルカの体をそっとベッドに横たわらせた。軽く汗を流してやりたいところだが、おそらく傷が痛むだろう。
 ユリウスは服を整えるとリサに頼んで湯で絞ったタオルを用意してもらった。

「私がお拭きしましょうか?」

 明らかに事後とわかるベッド上のぐったりとしたルカの姿にリサはそう言ったが、ユリウスは首を振った。

「いや、いい。リサも早く休んでくれ。明日も早いからな」

「わかりました。お薬も忘れずお願いしますね」

 リサはすぐに引き下がり、タオルと共に傷の塗り薬もユリウスに手渡した。
 それを持ってベッドに戻ると、ユリウスは中途半端に脱げたワンピースを全て脱がすとルカの体を清め、傷口に薬を塗った。
 ルカを林で拾った時ほど傷は深くない。おそらく早いうちに傷は癒えることだろう。けれど。
 ユリウスは、真っ白な背中と大腿についた赤い傷跡を見ながら、そっと黒髪を撫でた。
 自分に従わせようとしてふるわれる暴力に、怖気がくるほど憤りを感じる。希少種がこの国で奴隷として扱われる限り、このような目に遭う者はなくならない。人を虐げることが当然のように行われる。
 ルカがフォリスを許したのも、フォリスに植え付けられた恐怖心をわかっていたからだ。この細い背中は多くの屈辱や憤りを感じてきたのだろう。
 ユリウスはリサの用意した夜着もルカに着せると、自身は浴室に入った。
 わずか二月ほど前、王都へ向かう道中、ルカとのキスに欲情し、隠れて処理をしていたことを思い出し、ユリウスは一人苦笑した。
 あの細い背中を守るためならば、どんなことでもしてみせよう。ユリウスは改めてそう自身に誓った。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 毎日19時に更新予定です。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。

沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。 すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。 だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。 イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。 変わり果てた現実を前に、 夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。 深い後悔と悲しみに苛まれながら、 失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。 しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。 贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。 そして、母の心を知っていく子供たち。 イネスが求める愛とは、 そして、幸せとは――。

【完結・おまけ追加】期間限定の妻は夫にとろっとろに蕩けさせられて大変困惑しております

紬あおい
恋愛
病弱な妹リリスの代わりに嫁いだミルゼは、夫のラディアスと期間限定の夫婦となる。 二年後にはリリスと交代しなければならない。 そんなミルゼを閨で蕩かすラディアス。 普段も優しい良き夫に困惑を隠せないミルゼだった…

虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました

たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。

王宮地味女官、只者じゃねぇ

宵森みなと
恋愛
地味で目立たず、ただ真面目に働く王宮の女官・エミリア。 しかし彼女の正体は――剣術・魔法・語学すべてに長けた首席卒業の才女にして、実はとんでもない美貌と魔性を秘めた、“自覚なしギャップ系”最強女官だった!? 王女付き女官に任命されたその日から、運命が少しずつ動き出す。 訛りだらけのマーレン語で王女に爆笑を起こし、夜会では仮面を外した瞬間、貴族たちを騒然とさせ―― さらには北方マーレン国から訪れた黒髪の第二王子をも、一瞬で虜にしてしまう。 「おら、案内させてもらいますけんの」 その一言が、国を揺らすとは、誰が想像しただろうか。 王女リリアは言う。「エミリアがいなければ、私は生きていけぬ」 副長カイルは焦る。「このまま、他国に連れて行かれてたまるか」 ジークは葛藤する。「自分だけを見てほしいのに、届かない」 そしてレオンハルト王子は心を決める。「妻に望むなら、彼女以外はいない」 けれど――当の本人は今日も地味眼鏡で事務作業中。 王族たちの心を翻弄するのは、無自覚最強の“訛り女官”。 訛って笑いを取り、仮面で魅了し、剣で守る―― これは、彼女の“本当の顔”が王宮を変えていく、壮麗な恋と成長の物語。 ★この物語は、「枯れ専モブ令嬢」の5年前のお話です。クラリスが活躍する前で、少し若いイザークとライナルトがちょっと出ます。

冷徹公爵の誤解された花嫁

柴田はつみ
恋愛
片思いしていた冷徹公爵から求婚された令嬢。幸せの絶頂にあった彼女を打ち砕いたのは、舞踏会で耳にした「地味女…」という言葉だった。望まれぬ花嫁としての結婚に、彼女は一年だけ妻を務めた後、離縁する決意を固める。 冷たくも美しい公爵。誤解とすれ違いを繰り返す日々の中、令嬢は揺れる心を抑え込もうとするが――。 一年後、彼女が選ぶのは別れか、それとも永遠の契約か。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

処理中です...