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第十章 目覚めた能力
貼られた理由
「奏……あれは何なの? ただのお札じゃないみたいだけど……」
もう一度札に触れる勇気はとても出ず、ラズリは彼の腕に縋るようにして尋ねる。
女魔性を助けたいと思っても、得体の知れない物に触れる勇気は持ち合わせていない。いくら傍に奏がいてくれたところで、それは同じだ。寧ろそのせいで彼にまで害をなしたらと思うと、余計に怖くなってくる。
けれどこのままでは、確実に女魔性は息絶えてしまうだろう。
そうなった時、自分は後悔せずにいられるのだろうか? 他人を救うことより自分の恐怖を優先させた自分を、許すことはできるのだろうか?
分からない──けれど、自分の行動は奏を巻き込むと知っているから、迂闊な行動を取ることもできない。
危険なのは承知であの札にもう一度触るか、それとも女魔性を見捨てるか──。
究極ともいえるその選択に、ラズリは内心で頭を抱えた。
「……ラズリ、どうした?」
その時、不意に頭上からかけられた優しい声に、ハッとして顔を上げる。
見上げた奏の表情は優しさに満ちていて、赤い瞳と目が合った瞬間、この人を失いたくない──と強く思った。
どうにかして、全員が無事に済む方法があれば良いのに……。
そう考えた途端、言葉が口を突いて出ていた。
「奏……私、どうしたら良いの? あの人を救いたいのに、貼られた札が生きてるみたいに動いて……それが怖くて触ることができないの」
正直に泣き言を口に出せば、彼は心配いらないと微笑んでくれる。
「どうやらあれは、俺達魔性の魔力を吸収する札らしい。あれに触る……もしくは身体に貼り付けられた時点で否応なしに俺達の魔力は吸収され、あれに持っていかれる仕組みみたいだ。……俺達にとっては天敵と言ってもいいぐらいの代物だな。けど、魔力を持たないお前なら、触れても害はないはずだ」
「えっ、そうなの⁉︎」
まさか、魔性にとって天敵と呼べるような物があったなんて。
それだけでも驚くには十分なのに、どうしてそれが女魔性の身体に貼り付いているのか。そして、何故奏がその札について知っているのか。
聞けば聞くほど、疑問が増えていくような気がする。けれど、一番疑問に思ったのは──。
「誰がそんな物をあの人に貼り付けたの?」
ということだった。
魔力を奪うというなら、絶対に彼女自身が貼った物ではないはず。否、奏は札に触れた時点で魔力が奪われると言っていたから、自分で貼り付けるなど不可能だろう。
では誰がそんな物を貼ったのか? 何の為に? やっぱり彼女を殺すため?
「俺はこの札を王宮の人間が持っているのを見かけた。だから恐らく使ったのはあいつらだと思うが……この女は奴らの仲間だったはずだ。だからこそ、こんな事をする理由が俺も分からない」
それは正直な奏の気持ちであった。
人間である彼らにとって、氷依は唯一仲間として扱える魔性であったに違いない。
魔性と人間とでは、その使い勝手に雲泥の差があるがゆえに、彼らは殊に氷依を大切にしていただろう。そんな相手に魔力を奪う札を貼り付け、殺そうとするなど、まずあり得ない。
他に使い勝手の良い魔性を手に入れたなどと言うなら話はまた別かもしれないが、次から次へとそう簡単に魔性が人間などに捕まるはずはないし、それこそ仲間として何人いたところで困るものでもないのだから。
しかし実際問題、氷依は魔力を吸収する札を身体に貼り付けられ、死に掛けている。
それゆえ、ラズリが口にした疑問は、まさに奏が今、一番知りたい事でもあったのだ──。
もう一度札に触れる勇気はとても出ず、ラズリは彼の腕に縋るようにして尋ねる。
女魔性を助けたいと思っても、得体の知れない物に触れる勇気は持ち合わせていない。いくら傍に奏がいてくれたところで、それは同じだ。寧ろそのせいで彼にまで害をなしたらと思うと、余計に怖くなってくる。
けれどこのままでは、確実に女魔性は息絶えてしまうだろう。
そうなった時、自分は後悔せずにいられるのだろうか? 他人を救うことより自分の恐怖を優先させた自分を、許すことはできるのだろうか?
分からない──けれど、自分の行動は奏を巻き込むと知っているから、迂闊な行動を取ることもできない。
危険なのは承知であの札にもう一度触るか、それとも女魔性を見捨てるか──。
究極ともいえるその選択に、ラズリは内心で頭を抱えた。
「……ラズリ、どうした?」
その時、不意に頭上からかけられた優しい声に、ハッとして顔を上げる。
見上げた奏の表情は優しさに満ちていて、赤い瞳と目が合った瞬間、この人を失いたくない──と強く思った。
どうにかして、全員が無事に済む方法があれば良いのに……。
そう考えた途端、言葉が口を突いて出ていた。
「奏……私、どうしたら良いの? あの人を救いたいのに、貼られた札が生きてるみたいに動いて……それが怖くて触ることができないの」
正直に泣き言を口に出せば、彼は心配いらないと微笑んでくれる。
「どうやらあれは、俺達魔性の魔力を吸収する札らしい。あれに触る……もしくは身体に貼り付けられた時点で否応なしに俺達の魔力は吸収され、あれに持っていかれる仕組みみたいだ。……俺達にとっては天敵と言ってもいいぐらいの代物だな。けど、魔力を持たないお前なら、触れても害はないはずだ」
「えっ、そうなの⁉︎」
まさか、魔性にとって天敵と呼べるような物があったなんて。
それだけでも驚くには十分なのに、どうしてそれが女魔性の身体に貼り付いているのか。そして、何故奏がその札について知っているのか。
聞けば聞くほど、疑問が増えていくような気がする。けれど、一番疑問に思ったのは──。
「誰がそんな物をあの人に貼り付けたの?」
ということだった。
魔力を奪うというなら、絶対に彼女自身が貼った物ではないはず。否、奏は札に触れた時点で魔力が奪われると言っていたから、自分で貼り付けるなど不可能だろう。
では誰がそんな物を貼ったのか? 何の為に? やっぱり彼女を殺すため?
「俺はこの札を王宮の人間が持っているのを見かけた。だから恐らく使ったのはあいつらだと思うが……この女は奴らの仲間だったはずだ。だからこそ、こんな事をする理由が俺も分からない」
それは正直な奏の気持ちであった。
人間である彼らにとって、氷依は唯一仲間として扱える魔性であったに違いない。
魔性と人間とでは、その使い勝手に雲泥の差があるがゆえに、彼らは殊に氷依を大切にしていただろう。そんな相手に魔力を奪う札を貼り付け、殺そうとするなど、まずあり得ない。
他に使い勝手の良い魔性を手に入れたなどと言うなら話はまた別かもしれないが、次から次へとそう簡単に魔性が人間などに捕まるはずはないし、それこそ仲間として何人いたところで困るものでもないのだから。
しかし実際問題、氷依は魔力を吸収する札を身体に貼り付けられ、死に掛けている。
それゆえ、ラズリが口にした疑問は、まさに奏が今、一番知りたい事でもあったのだ──。
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