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第十二章 譲れないもの
正しい判断
腕が怠い……頭が割れる。
全身から力が抜き取られていく。
かつて、自らの居城があった場所で一人蹲っていた死灰栖は、限界まで追い詰められていた。
こうして蹲っていても、時間が過ぎるとともに状況は悪くなっていく一方だ。
どんなに願っても自分を呼ぶ声はやまず、腕に貼り付いたままの札から魔力が吸い取られていく感覚も消えない。
このままでは、何もできないまま時間の経過とともに衰弱していくばかりだ。ただ延々と苦しみが繰り返される。
ならばもういっそのこと、呼び声に応えてやろうかと思った。
これ以上苦しみが続くのは、もうたくさんだ。何もできず弱っていくだけであるなら、いっそ権威も何もかなぐり捨てて、呼び声に応えてやるのも一興ではないかと。
魔性である自分が人間の呼び声に応じるなど、正直腑が煮えくり返る思いではあるが、そんな悠長なことを言っている場合ではない。
なにしろ、お互いの根比べとも言うべき今の状況は、間違いなく自分に不利であるのだから。
全身を襲う倦怠感と酷い頭痛のせいで、満足に動けるかどうか怪しいところではあるが、完全に動けなくなる前に行動を起こすべきだ。今ならまだ、一矢報いることができる。
「我とて魔神を目指す者。そう簡単にはやられぬ……」
興味本位で人間の居城へ行き、逃げ帰るようにして戻っただけでも屈辱であったというのに、そこから更なる屈辱を感じることになるなど、夢にも思っていなかった。
腹立たしい──なんて言葉では決して足りない。たとえ自らの手で千々に引き裂いたとしても、まだ足りない──それほどに憎らしい、その存在。
近いうちに魔神となるべく自分を侮辱した罪として、あの人間には相応の罰を受けさせる。でなければ気が済まない、済むわけがない。
『おいで、おいで……』
そうして考えている今も、死灰栖の思惑など知らぬ相手は、途切れることなくこちらを呼び続けている。
ここまでしつこく呼ぶのだから、あちらもやむにやまれぬ事情があるのかもしれないが、そんなことは知る必要のないことだ。
たかが人間の分際で魔性を呼びつけるなど、どれだけ分不相応なことをしているか、知らしめなければならないだろう。そしてもう二度と調子に乗らないよう、制裁を加えなければ。
「いい加減、鬱陶しい……」
全神経を集中して倦怠感を振り払うと、死灰栖はゆっくりと立ち上がった。途端に、頭痛のせいで膝をつきかけるが、なんとか堪える。
「あやつに……制裁を加えるまでは……」
倒れるわけにはいかない──。
そのことだけを考え、無理やりに身体を動かす。
大きく息を吐き、死灰栖はピン──と背筋を伸ばすと、再び人間の居城へと飛んだ。
まさかそのせいで更なる屈辱を味わわされることになるなど、予想だにせずに。
苦痛に苛まれ、疲弊した頭脳では、正しい判断などできるはずもなかったのだ──。
全身から力が抜き取られていく。
かつて、自らの居城があった場所で一人蹲っていた死灰栖は、限界まで追い詰められていた。
こうして蹲っていても、時間が過ぎるとともに状況は悪くなっていく一方だ。
どんなに願っても自分を呼ぶ声はやまず、腕に貼り付いたままの札から魔力が吸い取られていく感覚も消えない。
このままでは、何もできないまま時間の経過とともに衰弱していくばかりだ。ただ延々と苦しみが繰り返される。
ならばもういっそのこと、呼び声に応えてやろうかと思った。
これ以上苦しみが続くのは、もうたくさんだ。何もできず弱っていくだけであるなら、いっそ権威も何もかなぐり捨てて、呼び声に応えてやるのも一興ではないかと。
魔性である自分が人間の呼び声に応じるなど、正直腑が煮えくり返る思いではあるが、そんな悠長なことを言っている場合ではない。
なにしろ、お互いの根比べとも言うべき今の状況は、間違いなく自分に不利であるのだから。
全身を襲う倦怠感と酷い頭痛のせいで、満足に動けるかどうか怪しいところではあるが、完全に動けなくなる前に行動を起こすべきだ。今ならまだ、一矢報いることができる。
「我とて魔神を目指す者。そう簡単にはやられぬ……」
興味本位で人間の居城へ行き、逃げ帰るようにして戻っただけでも屈辱であったというのに、そこから更なる屈辱を感じることになるなど、夢にも思っていなかった。
腹立たしい──なんて言葉では決して足りない。たとえ自らの手で千々に引き裂いたとしても、まだ足りない──それほどに憎らしい、その存在。
近いうちに魔神となるべく自分を侮辱した罪として、あの人間には相応の罰を受けさせる。でなければ気が済まない、済むわけがない。
『おいで、おいで……』
そうして考えている今も、死灰栖の思惑など知らぬ相手は、途切れることなくこちらを呼び続けている。
ここまでしつこく呼ぶのだから、あちらもやむにやまれぬ事情があるのかもしれないが、そんなことは知る必要のないことだ。
たかが人間の分際で魔性を呼びつけるなど、どれだけ分不相応なことをしているか、知らしめなければならないだろう。そしてもう二度と調子に乗らないよう、制裁を加えなければ。
「いい加減、鬱陶しい……」
全神経を集中して倦怠感を振り払うと、死灰栖はゆっくりと立ち上がった。途端に、頭痛のせいで膝をつきかけるが、なんとか堪える。
「あやつに……制裁を加えるまでは……」
倒れるわけにはいかない──。
そのことだけを考え、無理やりに身体を動かす。
大きく息を吐き、死灰栖はピン──と背筋を伸ばすと、再び人間の居城へと飛んだ。
まさかそのせいで更なる屈辱を味わわされることになるなど、予想だにせずに。
苦痛に苛まれ、疲弊した頭脳では、正しい判断などできるはずもなかったのだ──。
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