148 / 205
第十二章 譲れないもの
魔力の質
「ピーちゃん! しっかりして、ピーちゃん!」
苦し気に全身を丸めるカラスを抱え、ラズリは必死になってピーちゃんの名を呼ぶ。
一体どうしたの? さっきまでは何ともなかったのに。何で急にこんなことに……。
原因を考えても思い当たることはない。あえて言うなら青麻という名の魔性から黒い札を剥がしたことぐらいだが、その時は特に何の異常も感じられなかった。
だったら何故?
「誰か何か思い当たることはない? なければ苦しみを取り除いてあげるだけでも良いの。ねえ、お願いだからピーちゃんを何とかしてあげて」
苦しんでいる姿があまりにも可哀想で、自分には無理でも彼らなら──と思い、三人の魔性に助けを求める。けれど、三人は顔を見合わせて首を振るだけで、少しも動こうとはしてくれなかった。
何で? どうして? いつもだったら奏も闇も、もっと優しくしてくれるのに……。
今回に限り、助けを断られる理由が分からない。普段の彼らは自分が助けを求めなくとも、必要な時には毎回手を差し伸べてくれていたから。
なのに、どうして今回だけ……。
理由が分からないため納得もできず、ラズリがじんわりと目に涙を浮かべた時──ようやく奏が口を開いた。
「そいつは……ピーちゃんは他の魔性の魔力を元に作られた鳥だから、魔力の質が違う俺達にはどうにもできない。……悪いな」
「魔力の……質が違う?」
初めて聞く言葉に、ラズリは首を傾げる。
魔性が魔力を持っていることは流石に知っているけれど、それに〝質”があることは知らなかった。
でも〝質”って? それってなんなの? という考えが、もしかしたら顔に出ていたのかもしれない。
ラズリがその質問を口にする前に、闇がその答えを口にした。
「魔性はそれぞれ属性ごとに魔力の質が違います。分かりやすく言いますと、自然界の火・水・地・風といったものですね。無論、魔性は数が多いため、その分属性数も多くなり、実際のところ属性がいくつあるのかは私でも把握しきれていないのですが……。それらの属性は、種族的なものからきているのか、はたまた性質的なものからきているのか、我々の魔力は本質が似通っているものであろうとなかろうと、決して交わることはありません」
「えーっと……それってつまり、水と氷でも駄目ってこと?」
「そうなりますね」
ここで水と氷を引き合いに出したのは、以前、女魔性が氷の力を使ったのを覚えていたからだ。本当は真っ先にラズリの頭の中に浮かんだのは奏の姿だったが、何度見ても彼の振るう力の正体はつかめず、そのため引き合いに出すことは難しかった。
そんなラズリの心境を知ってか知らずか、横で話を聞いていた奏は「え……そこは俺を引き合いに出すとこじゃないのか……」なんてことを、呆然とした表情で言っていたけれど。今は彼に構っている場合ではない。
「そうなると……ピーちゃんを助けられるのは、ピーちゃんの元になる魔力を持った魔性だけっていうこと?」
尋ねるように口にしたものの、聞かなくとも答えは分かっていた。
自分の身体の奥底に、こっそり魔力を仕込むような魔性など、絶対に性格が良いわけがない。
加えて、いくらラズリ自身が危険な目に遭い怒りを覚えていたとしても、王宮騎士の腕を簡単に切り落としてしまうくらいだ。間違っても奏のような優しさや、慈悲など持っていないだろう。
そもそも、奏のようなタイプこそが魔性の中では異質なのだ。どちらかといえば、ピーちゃんの元となった魔力の持ち主である魔性の性質こそが、本来の魔性であると言える。
ならばもう、ピーちゃんを助けることは不可能で。
苦労して自らの体内から排出し、鳥へと昇華させたのに、何もしないまま失うことになるなんて。失わなくてはいけないなんて。
「こんなの、酷いよ……」
ピーちゃんを抱きしめたまま、ラズリはぺたんとその場に座り込んでしまう。
それをじっと見つめていた奏は──ポツリ、とこんなことを口にした。
「まだ間に合うかもしれないと言ったら……お前はどうする?」
「え……?」
普段ふざけている彼にしては珍しく、真剣な表情だった。
苦し気に全身を丸めるカラスを抱え、ラズリは必死になってピーちゃんの名を呼ぶ。
一体どうしたの? さっきまでは何ともなかったのに。何で急にこんなことに……。
原因を考えても思い当たることはない。あえて言うなら青麻という名の魔性から黒い札を剥がしたことぐらいだが、その時は特に何の異常も感じられなかった。
だったら何故?
「誰か何か思い当たることはない? なければ苦しみを取り除いてあげるだけでも良いの。ねえ、お願いだからピーちゃんを何とかしてあげて」
苦しんでいる姿があまりにも可哀想で、自分には無理でも彼らなら──と思い、三人の魔性に助けを求める。けれど、三人は顔を見合わせて首を振るだけで、少しも動こうとはしてくれなかった。
何で? どうして? いつもだったら奏も闇も、もっと優しくしてくれるのに……。
今回に限り、助けを断られる理由が分からない。普段の彼らは自分が助けを求めなくとも、必要な時には毎回手を差し伸べてくれていたから。
なのに、どうして今回だけ……。
理由が分からないため納得もできず、ラズリがじんわりと目に涙を浮かべた時──ようやく奏が口を開いた。
「そいつは……ピーちゃんは他の魔性の魔力を元に作られた鳥だから、魔力の質が違う俺達にはどうにもできない。……悪いな」
「魔力の……質が違う?」
初めて聞く言葉に、ラズリは首を傾げる。
魔性が魔力を持っていることは流石に知っているけれど、それに〝質”があることは知らなかった。
でも〝質”って? それってなんなの? という考えが、もしかしたら顔に出ていたのかもしれない。
ラズリがその質問を口にする前に、闇がその答えを口にした。
「魔性はそれぞれ属性ごとに魔力の質が違います。分かりやすく言いますと、自然界の火・水・地・風といったものですね。無論、魔性は数が多いため、その分属性数も多くなり、実際のところ属性がいくつあるのかは私でも把握しきれていないのですが……。それらの属性は、種族的なものからきているのか、はたまた性質的なものからきているのか、我々の魔力は本質が似通っているものであろうとなかろうと、決して交わることはありません」
「えーっと……それってつまり、水と氷でも駄目ってこと?」
「そうなりますね」
ここで水と氷を引き合いに出したのは、以前、女魔性が氷の力を使ったのを覚えていたからだ。本当は真っ先にラズリの頭の中に浮かんだのは奏の姿だったが、何度見ても彼の振るう力の正体はつかめず、そのため引き合いに出すことは難しかった。
そんなラズリの心境を知ってか知らずか、横で話を聞いていた奏は「え……そこは俺を引き合いに出すとこじゃないのか……」なんてことを、呆然とした表情で言っていたけれど。今は彼に構っている場合ではない。
「そうなると……ピーちゃんを助けられるのは、ピーちゃんの元になる魔力を持った魔性だけっていうこと?」
尋ねるように口にしたものの、聞かなくとも答えは分かっていた。
自分の身体の奥底に、こっそり魔力を仕込むような魔性など、絶対に性格が良いわけがない。
加えて、いくらラズリ自身が危険な目に遭い怒りを覚えていたとしても、王宮騎士の腕を簡単に切り落としてしまうくらいだ。間違っても奏のような優しさや、慈悲など持っていないだろう。
そもそも、奏のようなタイプこそが魔性の中では異質なのだ。どちらかといえば、ピーちゃんの元となった魔力の持ち主である魔性の性質こそが、本来の魔性であると言える。
ならばもう、ピーちゃんを助けることは不可能で。
苦労して自らの体内から排出し、鳥へと昇華させたのに、何もしないまま失うことになるなんて。失わなくてはいけないなんて。
「こんなの、酷いよ……」
ピーちゃんを抱きしめたまま、ラズリはぺたんとその場に座り込んでしまう。
それをじっと見つめていた奏は──ポツリ、とこんなことを口にした。
「まだ間に合うかもしれないと言ったら……お前はどうする?」
「え……?」
普段ふざけている彼にしては珍しく、真剣な表情だった。
あなたにおすすめの小説
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
最愛の番に殺された獣王妃
望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。
彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。
手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。
聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。
哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて――
突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……?
「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」
謎の人物の言葉に、私が選択したのは――
無一文で追放される悪女に転生したので特技を活かしてお金儲けを始めたら、聖女様と呼ばれるようになりました
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
スーパームーンの美しい夜。仕事帰り、トラックに撥ねらてしまった私。気づけば草の生えた地面の上に倒れていた。目の前に見える城に入れば、盛大なパーティーの真っ最中。目の前にある豪華な食事を口にしていると見知らぬ男性にいきなり名前を呼ばれて、次期王妃候補の資格を失ったことを聞かされた。理由も分からないまま、家に帰宅すると「お前のような恥さらしは今日限り、出ていけ」と追い出されてしまう。途方に暮れる私についてきてくれたのは、私の専属メイドと御者の青年。そこで私は2人を連れて新天地目指して旅立つことにした。無一文だけど大丈夫。私は前世の特技を活かしてお金を稼ぐことが出来るのだから――
※ 他サイトでも投稿中
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
せっかく傾国級の美人に生まれたのですから、ホントにやらなきゃ損ですよ?
志波 連
恋愛
病弱な父親とまだ学生の弟を抱えた没落寸前のオースティン伯爵家令嬢であるルシアに縁談が来た。相手は学生時代、一方的に憧れていた上級生であるエルランド伯爵家の嫡男ルイス。
父の看病と伯爵家業務で忙しく、結婚は諦めていたルシアだったが、結婚すれば多額の資金援助を受けられるという条件に、嫁ぐ決意を固める。
多忙を理由に顔合わせにも婚約式にも出てこないルイス。不信感を抱くが、弟のためには絶対に援助が必要だと考えるルシアは、黙って全てを受け入れた。
オースティン伯爵の健康状態を考慮して半年後に結婚式をあげることになり、ルイスが住んでいるエルランド伯爵家のタウンハウスに同居するためにやってきたルシア。
それでも帰ってこない夫に泣くことも怒ることも縋ることもせず、非道な夫を庇い続けるルシアの姿に深く同情した使用人たちは遂に立ち上がる。
この作品は小説家になろう及びpixivでも掲載しています
ホットランキング1位!ありがとうございます!皆様のおかげです!感謝します!
【完結】ポーションが不味すぎるので、美味しいポーションを作ったら
七鳳
ファンタジー
※毎日8時と18時に更新中!
※いいねやお気に入り登録して頂けると励みになります!
気付いたら異世界に転生していた主人公。
赤ん坊から15歳まで成長する中で、異世界の常識を学んでいくが、その中で気付いたことがひとつ。
「ポーションが不味すぎる」
必需品だが、みんなが嫌な顔をして買っていく姿を見て、「美味しいポーションを作ったらバカ売れするのでは?」
と考え、試行錯誤をしていく…
公爵家の秘密の愛娘
ゆきむらさり
恋愛
〔あらすじ〕📝🌹グラント公爵家は王家に仕える名門の家柄。
過去の事情により、今だに独身の当主ダリウス。国王から懇願され、ようやく伯爵未亡人との婚姻を決める。
そんな時、グラント公爵ダリウスの元へと現れたのは1人の少女アンジェラ。
「パパ……私はあなたの娘です」
そう名乗り出るアンジェラ。
◇
アンジェラが現れたことにより、グラント公爵家は一変。伯爵未亡人との再婚もあやふや。しかも、アンジェラが道中に出逢った人物はまさかの王族。
この時からアンジェラの世界も一変。華やかに色付き出す。
初めはよそよそしいグラント公爵ダリウス(パパ)だが、次第に娘アンジェラを気に掛けるように……。
母娘2代のハッピーライフ&淑女達と貴公子達の恋模様💞
✴️設定などは独自の世界観でご都合主義となります。ハピエン💞
✴️稚拙ながらもHOTランキング(最高20位)に入れて頂き(2025.5.9)、ありがとうございます🙇♀️