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第十二章 譲れないもの
似たようなこと
奏の話を一通り聞き終えた後、ラズリは彼の赤い瞳を呆然と見つめていた。
理解できない、したくない。
そんな気持ちがぐるぐると頭の中を回り、頑なに理解することを拒む。
もし自分がそれを理解したなら、今まで信じてきた〝自分という存在”が不安定なものとなってしまう。自分の過去が、偽られたものになってしまう。
だから信じたくない。信じられない。
それなのに奏は言うのだ。
「俺は一つも嘘は言ってない」
と──。
こんな思いをするぐらいなら、知りたくなかった。真実など上手く誤魔化して、ピーちゃんを助ける方法だけを教えてくれれば良かった。
そう思っても、奏はラズリのそんな心境には気づかないらしく、更に言い募ってくる。
「そのカラスのことは、一つのきっかけに過ぎない。そろそろ覚悟を決めておかないと、いざ攻め込まれた時に対処のしようがないからな」
「攻め込まれた時って……」
もうラズリの住んでいた村は無くなってしまったのに、一体どこに攻め込まれるというのだろうか。
そもそも彼らは人間なのだから、たとえ攻め込んできたとしても、奏が負けるとは思えないのに。
そういった疑問をラズリは口に出してはいなかったのだが、何やら奏は感じるものがあったようで、少しだけ肩を竦めた。
「お前を狙う王宮の男は、おそらくカラスの元となった魔力の持ち主である魔性を味方にするつもりだ。女魔性を失い、ミルドとなっていた青麻を奪われ、奴にはもうあの魔性しか〝つて”が残ってはいないからな」
「でも、味方にするってどうやって……?」
女魔性の時も思ったことだけれど、魔性とは、そんなにも簡単に味方にできるものなのだろうか?
しかも奏の言い方からすると、王宮の男の人は、〝つて”さえあれば魔性を味方に引き入れることができるようだ。
ラズリ自身、奏や闇といった魔性達と一緒にいるわけだけれど、それはあくまで彼らの気まぐれによるものであって、命令したりしたわけでは──お願いはしたかもしれないが──決してない。
なのに王宮の男の人は、自分の意思で魔性を味方に引き入れることができると言う。
それが心底不思議でラズリが思わず首を傾げると、奏はピン──と人差し指を一本立てた。
「それを今から説明する。んで、そうしたらお前がそれをカラスにやるんだ。そこで成功すればカラスは助かる。失敗すれば……消えて終わりだ」
「そんな……」
「大丈夫だって。多分難しくはないと思うし、お前は既に似たようなことを直近でやってるからさ」
ピーちゃんの命に関わることを、そんなにも簡単に言わないでほしい。
奏は普段、口癖のように『大丈夫』だと言うし、その言葉通り大抵いつも大丈夫なことばかりだけれど、流石に今回ばかりは素直にその言葉を信じるのは難しかった。
奏がやるのであればまだしも、今回は私でしょう……? しかも、失敗したらピーちゃんが消えてしまうだなんて……。
腕の中で大人しくしているカラスの背を撫で、ラズリは軽く唇を噛む。
このままこうしていてもピーちゃんが回復することがないのなら、やるしかないのかもしれない。だけど──。
「ラズリ……どうする?」
迷っていても、カラスは助からないぞ。
と続けられ、そこでようやくラズリは覚悟を決めた。
奏や透耶を差し置いて、どうして自分だけがピーちゃんを助けられるのかは、後からでも聞けばいい。
何故自分が、王宮の男の人と同じような能力を使えるのかも。
今はとにかくピーちゃんを──と、ラズリが決意を新たにしていた時だった。
不意に黒い札と青い札が視界の中に入り込んできて、驚きに目を見張る。
何事かと注視してみれば、二枚の札はそれぞれ床から突き上げた氷柱によって持ち上げられていて。
「どうせやるなら、この紙切れも試してみぬか?」
楽し気に瞳を輝かせながら聞いてきたのは、青氷の魔神──透耶だった。
理解できない、したくない。
そんな気持ちがぐるぐると頭の中を回り、頑なに理解することを拒む。
もし自分がそれを理解したなら、今まで信じてきた〝自分という存在”が不安定なものとなってしまう。自分の過去が、偽られたものになってしまう。
だから信じたくない。信じられない。
それなのに奏は言うのだ。
「俺は一つも嘘は言ってない」
と──。
こんな思いをするぐらいなら、知りたくなかった。真実など上手く誤魔化して、ピーちゃんを助ける方法だけを教えてくれれば良かった。
そう思っても、奏はラズリのそんな心境には気づかないらしく、更に言い募ってくる。
「そのカラスのことは、一つのきっかけに過ぎない。そろそろ覚悟を決めておかないと、いざ攻め込まれた時に対処のしようがないからな」
「攻め込まれた時って……」
もうラズリの住んでいた村は無くなってしまったのに、一体どこに攻め込まれるというのだろうか。
そもそも彼らは人間なのだから、たとえ攻め込んできたとしても、奏が負けるとは思えないのに。
そういった疑問をラズリは口に出してはいなかったのだが、何やら奏は感じるものがあったようで、少しだけ肩を竦めた。
「お前を狙う王宮の男は、おそらくカラスの元となった魔力の持ち主である魔性を味方にするつもりだ。女魔性を失い、ミルドとなっていた青麻を奪われ、奴にはもうあの魔性しか〝つて”が残ってはいないからな」
「でも、味方にするってどうやって……?」
女魔性の時も思ったことだけれど、魔性とは、そんなにも簡単に味方にできるものなのだろうか?
しかも奏の言い方からすると、王宮の男の人は、〝つて”さえあれば魔性を味方に引き入れることができるようだ。
ラズリ自身、奏や闇といった魔性達と一緒にいるわけだけれど、それはあくまで彼らの気まぐれによるものであって、命令したりしたわけでは──お願いはしたかもしれないが──決してない。
なのに王宮の男の人は、自分の意思で魔性を味方に引き入れることができると言う。
それが心底不思議でラズリが思わず首を傾げると、奏はピン──と人差し指を一本立てた。
「それを今から説明する。んで、そうしたらお前がそれをカラスにやるんだ。そこで成功すればカラスは助かる。失敗すれば……消えて終わりだ」
「そんな……」
「大丈夫だって。多分難しくはないと思うし、お前は既に似たようなことを直近でやってるからさ」
ピーちゃんの命に関わることを、そんなにも簡単に言わないでほしい。
奏は普段、口癖のように『大丈夫』だと言うし、その言葉通り大抵いつも大丈夫なことばかりだけれど、流石に今回ばかりは素直にその言葉を信じるのは難しかった。
奏がやるのであればまだしも、今回は私でしょう……? しかも、失敗したらピーちゃんが消えてしまうだなんて……。
腕の中で大人しくしているカラスの背を撫で、ラズリは軽く唇を噛む。
このままこうしていてもピーちゃんが回復することがないのなら、やるしかないのかもしれない。だけど──。
「ラズリ……どうする?」
迷っていても、カラスは助からないぞ。
と続けられ、そこでようやくラズリは覚悟を決めた。
奏や透耶を差し置いて、どうして自分だけがピーちゃんを助けられるのかは、後からでも聞けばいい。
何故自分が、王宮の男の人と同じような能力を使えるのかも。
今はとにかくピーちゃんを──と、ラズリが決意を新たにしていた時だった。
不意に黒い札と青い札が視界の中に入り込んできて、驚きに目を見張る。
何事かと注視してみれば、二枚の札はそれぞれ床から突き上げた氷柱によって持ち上げられていて。
「どうせやるなら、この紙切れも試してみぬか?」
楽し気に瞳を輝かせながら聞いてきたのは、青氷の魔神──透耶だった。
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