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第十三章 双子
活路
──時は少し遡る。
うまいこと死灰栖を魅了し、傀儡とすることに成功したルーチェは、魔性の能力を使って目的の少女を探すべく、方法を練っていた。
魔性は様々な能力を有しているというが、それでも万能でないことは、既に氷依によって証明されている。
加えて魔性は属性ごとに得意なことや苦手なことがあり、自らの属性で不可能なことはどう足掻いても絶対にできないということなども教わった。
そういう意味で、ルーチェが初めて手に入れたのが氷属性を持つ氷依であったことは、幸運であったと言えるだろう。
もしこれが、今目の前にいる死灰栖であったり、雷だとか風だとか、そういった目に見えにくい属性持ちの魔性であったなら、今の自分ほど、魔性の能力について最初から理解できなかっただろうと思うからだ。
けれど──。
「灰……灰かぁ。灰を操る能力って言われても、正直どうやって役立てればいいのか分かりかねるんだよねぇ」
何とも言えない能力に、ルーチェは頭を悩ませる。
死灰栖を魅了した後、真っ先に尋ねたのは彼の操る能力についてだった。しかしそこで『灰』と一言返された時点で、ルーチェは反射的に「え?」と聞き返していた。単純に、死灰栖が「はい」と返事をしたと思ったからだ。
その後も何度か同じようなやり取りを繰り返した結果、もしや魅了が成功していないのか? と危惧したルーチェが再度魅了を試みると、苦しげに呻く死灰栖の目から灰がこぼれ出した。それにより、ようやくそこで彼の言う「はい」が「灰」であったと理解ができ、納得することができたのだ。
とはいえ、灰など暖炉で薪を燃やした後にできる屑としか考えたことはない。そんなものが扱えると言われたところで、何の価値も見いだせなかった。
ならばせめてと目的の人物を探せるか問うてみれば、実物を目にしたことがなければ、できないと言う。
これでは氷依と同じ──いや、氷依よりも役に立たないと言ってもよかった。
「初めて見た時の態度の大きさからするに、氷依よりかなり強い魔性だと思ったんだけどな……」
あの時自分が感じた強さは間違いであったのか。単に表面を取り繕っていただけで、内面は大したことないということだったのか? だとしたら、見事騙された自分を笑ってしまう。笑うしか──ない。
目的の少女を探す術も、その駒となる者達も、ほとんど全てを失ってしまったのだから。
これ以上……どうすればいい? どうやったら、彼女に近づける?
そんなことを延々と、繰り返し頭の中で考えていた時だった。
「ぐっ……あ……!」
突然死灰栖が声を上げたと思ったら、その場にがくりと膝をついたのだ。
「ど、どうしたんだい……?」
何故いきなりそんなことになったのか分からず、混乱するルーチェに、死灰栖は苦しみながらも現状を告げた。
「腕……から、魔力……が……」
見れば、死灰栖の腕に貼りついたままとなっていた札へと、彼の身体から灰色の靄のようなものが少しずつ吸い込まれている。
それは、ルーチェが異空間にいた死灰栖を呼び出した時に使ったのとは真逆の現象であり、だからこそ、札を通じて死灰栖の魔力を吸い込まんとする者が、自分と同じ能力を有しているのだとルーチェは悟った。
「死灰栖、札の向こうにいる人間を攫ってこい!」
理解すると同時に命令を下すが、今まさに魔力を吸収されている最中の死灰栖はそれどころではないらしく、眉間に皺を寄せたまま微動だにしない。
〝今”行かなければ──。
目的の少女と繋がっているであろう〝今”行かなければ手がかりが途絶えてしまうのに、どうにも死灰栖は役に立ちそうにない。
どうすればいい? こんな時、どうすれば──。
そこでハッとなったルーチェは、死灰栖の腕から札を引き剥がすと、そのまま床へと思い切り叩きつけた!
そして、死灰栖の身体から靄が出なくなるのを確認すると、もう一度命令したのだ。
「札の向こうにいる人間を攫ってこい」
と──。
うまいこと死灰栖を魅了し、傀儡とすることに成功したルーチェは、魔性の能力を使って目的の少女を探すべく、方法を練っていた。
魔性は様々な能力を有しているというが、それでも万能でないことは、既に氷依によって証明されている。
加えて魔性は属性ごとに得意なことや苦手なことがあり、自らの属性で不可能なことはどう足掻いても絶対にできないということなども教わった。
そういう意味で、ルーチェが初めて手に入れたのが氷属性を持つ氷依であったことは、幸運であったと言えるだろう。
もしこれが、今目の前にいる死灰栖であったり、雷だとか風だとか、そういった目に見えにくい属性持ちの魔性であったなら、今の自分ほど、魔性の能力について最初から理解できなかっただろうと思うからだ。
けれど──。
「灰……灰かぁ。灰を操る能力って言われても、正直どうやって役立てればいいのか分かりかねるんだよねぇ」
何とも言えない能力に、ルーチェは頭を悩ませる。
死灰栖を魅了した後、真っ先に尋ねたのは彼の操る能力についてだった。しかしそこで『灰』と一言返された時点で、ルーチェは反射的に「え?」と聞き返していた。単純に、死灰栖が「はい」と返事をしたと思ったからだ。
その後も何度か同じようなやり取りを繰り返した結果、もしや魅了が成功していないのか? と危惧したルーチェが再度魅了を試みると、苦しげに呻く死灰栖の目から灰がこぼれ出した。それにより、ようやくそこで彼の言う「はい」が「灰」であったと理解ができ、納得することができたのだ。
とはいえ、灰など暖炉で薪を燃やした後にできる屑としか考えたことはない。そんなものが扱えると言われたところで、何の価値も見いだせなかった。
ならばせめてと目的の人物を探せるか問うてみれば、実物を目にしたことがなければ、できないと言う。
これでは氷依と同じ──いや、氷依よりも役に立たないと言ってもよかった。
「初めて見た時の態度の大きさからするに、氷依よりかなり強い魔性だと思ったんだけどな……」
あの時自分が感じた強さは間違いであったのか。単に表面を取り繕っていただけで、内面は大したことないということだったのか? だとしたら、見事騙された自分を笑ってしまう。笑うしか──ない。
目的の少女を探す術も、その駒となる者達も、ほとんど全てを失ってしまったのだから。
これ以上……どうすればいい? どうやったら、彼女に近づける?
そんなことを延々と、繰り返し頭の中で考えていた時だった。
「ぐっ……あ……!」
突然死灰栖が声を上げたと思ったら、その場にがくりと膝をついたのだ。
「ど、どうしたんだい……?」
何故いきなりそんなことになったのか分からず、混乱するルーチェに、死灰栖は苦しみながらも現状を告げた。
「腕……から、魔力……が……」
見れば、死灰栖の腕に貼りついたままとなっていた札へと、彼の身体から灰色の靄のようなものが少しずつ吸い込まれている。
それは、ルーチェが異空間にいた死灰栖を呼び出した時に使ったのとは真逆の現象であり、だからこそ、札を通じて死灰栖の魔力を吸い込まんとする者が、自分と同じ能力を有しているのだとルーチェは悟った。
「死灰栖、札の向こうにいる人間を攫ってこい!」
理解すると同時に命令を下すが、今まさに魔力を吸収されている最中の死灰栖はそれどころではないらしく、眉間に皺を寄せたまま微動だにしない。
〝今”行かなければ──。
目的の少女と繋がっているであろう〝今”行かなければ手がかりが途絶えてしまうのに、どうにも死灰栖は役に立ちそうにない。
どうすればいい? こんな時、どうすれば──。
そこでハッとなったルーチェは、死灰栖の腕から札を引き剥がすと、そのまま床へと思い切り叩きつけた!
そして、死灰栖の身体から靄が出なくなるのを確認すると、もう一度命令したのだ。
「札の向こうにいる人間を攫ってこい」
と──。
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