157 / 205
第十三章 双子
半身
二度目に下した死灰栖への命令は、すぐに実行された。
というのも、目を閉じた彼がおもむろに片手を前方に突き出したと思ったら、次の瞬間には一人の少女が目の前に姿を現していたからだ。
「な、何? ここは……どこ?」
いきなり知らない場所へと連れてこられ、驚いたように周囲を見回す少女を見て、ルーチェは一目で『彼女だ』と確信した。
薄茶色の髪、同色の瞳。それに何より、彼女の身体の奥底から感じる、自分と同じ気配。
これまでずっと探していた、自分が求めてやまなかった少女。その少女が今、目の前にいる。
「ああ……ようやく会えた。ずっと会いたかったよ、僕の半身」
すぐにでも抱きしめたい気持ちを堪え、彼女が自分から腕の中に飛び込んできてくれるよう、優しく微笑んで両腕を広げる。
しかし彼女は何故かびくりと肩を揺らしただけで、一歩後ずさった。
「私があなたの半身? 一体何を言ってるの? 訳の分からないことを言わないで!」
睨みつけるような目を向けられ、こちらから更に距離を取る。
ようやく見つけた半身なのに、どうしてそんな態度を取るのか──不思議に思い、ルーチェは眉間に皺を寄せた。
「訳が分からない? ……どうして?」
こっちは長い間ずっと彼女を探して、探し続けて、心も身体も疲弊しているというのに?
君はそんな僕を疑問視するばかりか、否定するというのか?
一瞬苛立ちかけるも、すぐに心を落ち着けるべく、深呼吸を繰り返す。
ここで彼女と言い合いをしても、いいことは一つもない。彼女は恐らく自分と違い、親族による身体の繋がりを感じられないのだろう。
でなければ、こんな態度をするはずがない。自分と同じく、自らの半身を見つけられたことに喜びを覚えるはずだ。
だが、そうではないから突然見知らぬ場所に連れてこられ、その場にいた自分に『僕の半身』と言われたところで、理解できず戸惑っている。そう考えれば、全て納得がいった。
とはいえ彼女には、早急に己の立場を理解し、協力してもらう必要がある。でなければ、ルーチェの望む世界の実現に時間がかかってしまうからだ。
元々彼が少女を探し始めた理由は、家族としての情などではなく、自らの目的に利用するためだった。
その彼女を見つけた今、一刻も早く協力関係を築き上げなければならない。
しかし、このままでは埒が明かないと、ルーチェは改めて自己紹介をすることにした。
「それじゃあ仕切り直しといこうじゃないか。──初めまして。僕の名はルーチェ。ミースヴァル島に住む人間達を統べる王であり、同時に君の双子の兄でもある。僕は君の存在を知ったその日から、今日までずっと君のことを探し続けてきた。この世に残されたたった一人の肉親である君を保護することは、僕の義務であり、使命だからね」
言い終わると同時に極上の微笑みを少女へと向け、手を差し伸べる。
実は美形の兄がいたという事実に喜んで飛びついてきてくれるのが狙いだったのだが、現実はそんなに甘くなかったらしい。
彼女は若干考えるかのような素振りをした後で首を振り、ルーチェを拒むかのようにまた一歩距離をとった。
「どうしたんだい? 自己紹介はしたじゃないか。君はまだ僕に足りないものがあると言うのかい?」
「そうじゃない。そうじゃないんだけど……」
ルーチェの質問については否定し、少女はそっ──と彼の斜め後方へと物言いたげな視線を向ける。
なんだ……?
後方に何かあったかと、その視線を辿ったルーチェは、すぐに彼女の言いたいことを理解し、ポン、と手を打った。
というのも、目を閉じた彼がおもむろに片手を前方に突き出したと思ったら、次の瞬間には一人の少女が目の前に姿を現していたからだ。
「な、何? ここは……どこ?」
いきなり知らない場所へと連れてこられ、驚いたように周囲を見回す少女を見て、ルーチェは一目で『彼女だ』と確信した。
薄茶色の髪、同色の瞳。それに何より、彼女の身体の奥底から感じる、自分と同じ気配。
これまでずっと探していた、自分が求めてやまなかった少女。その少女が今、目の前にいる。
「ああ……ようやく会えた。ずっと会いたかったよ、僕の半身」
すぐにでも抱きしめたい気持ちを堪え、彼女が自分から腕の中に飛び込んできてくれるよう、優しく微笑んで両腕を広げる。
しかし彼女は何故かびくりと肩を揺らしただけで、一歩後ずさった。
「私があなたの半身? 一体何を言ってるの? 訳の分からないことを言わないで!」
睨みつけるような目を向けられ、こちらから更に距離を取る。
ようやく見つけた半身なのに、どうしてそんな態度を取るのか──不思議に思い、ルーチェは眉間に皺を寄せた。
「訳が分からない? ……どうして?」
こっちは長い間ずっと彼女を探して、探し続けて、心も身体も疲弊しているというのに?
君はそんな僕を疑問視するばかりか、否定するというのか?
一瞬苛立ちかけるも、すぐに心を落ち着けるべく、深呼吸を繰り返す。
ここで彼女と言い合いをしても、いいことは一つもない。彼女は恐らく自分と違い、親族による身体の繋がりを感じられないのだろう。
でなければ、こんな態度をするはずがない。自分と同じく、自らの半身を見つけられたことに喜びを覚えるはずだ。
だが、そうではないから突然見知らぬ場所に連れてこられ、その場にいた自分に『僕の半身』と言われたところで、理解できず戸惑っている。そう考えれば、全て納得がいった。
とはいえ彼女には、早急に己の立場を理解し、協力してもらう必要がある。でなければ、ルーチェの望む世界の実現に時間がかかってしまうからだ。
元々彼が少女を探し始めた理由は、家族としての情などではなく、自らの目的に利用するためだった。
その彼女を見つけた今、一刻も早く協力関係を築き上げなければならない。
しかし、このままでは埒が明かないと、ルーチェは改めて自己紹介をすることにした。
「それじゃあ仕切り直しといこうじゃないか。──初めまして。僕の名はルーチェ。ミースヴァル島に住む人間達を統べる王であり、同時に君の双子の兄でもある。僕は君の存在を知ったその日から、今日までずっと君のことを探し続けてきた。この世に残されたたった一人の肉親である君を保護することは、僕の義務であり、使命だからね」
言い終わると同時に極上の微笑みを少女へと向け、手を差し伸べる。
実は美形の兄がいたという事実に喜んで飛びついてきてくれるのが狙いだったのだが、現実はそんなに甘くなかったらしい。
彼女は若干考えるかのような素振りをした後で首を振り、ルーチェを拒むかのようにまた一歩距離をとった。
「どうしたんだい? 自己紹介はしたじゃないか。君はまだ僕に足りないものがあると言うのかい?」
「そうじゃない。そうじゃないんだけど……」
ルーチェの質問については否定し、少女はそっ──と彼の斜め後方へと物言いたげな視線を向ける。
なんだ……?
後方に何かあったかと、その視線を辿ったルーチェは、すぐに彼女の言いたいことを理解し、ポン、と手を打った。
あなたにおすすめの小説
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
最愛の番に殺された獣王妃
望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。
彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。
手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。
聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。
哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて――
突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……?
「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」
謎の人物の言葉に、私が選択したのは――
無一文で追放される悪女に転生したので特技を活かしてお金儲けを始めたら、聖女様と呼ばれるようになりました
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
スーパームーンの美しい夜。仕事帰り、トラックに撥ねらてしまった私。気づけば草の生えた地面の上に倒れていた。目の前に見える城に入れば、盛大なパーティーの真っ最中。目の前にある豪華な食事を口にしていると見知らぬ男性にいきなり名前を呼ばれて、次期王妃候補の資格を失ったことを聞かされた。理由も分からないまま、家に帰宅すると「お前のような恥さらしは今日限り、出ていけ」と追い出されてしまう。途方に暮れる私についてきてくれたのは、私の専属メイドと御者の青年。そこで私は2人を連れて新天地目指して旅立つことにした。無一文だけど大丈夫。私は前世の特技を活かしてお金を稼ぐことが出来るのだから――
※ 他サイトでも投稿中
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
せっかく傾国級の美人に生まれたのですから、ホントにやらなきゃ損ですよ?
志波 連
恋愛
病弱な父親とまだ学生の弟を抱えた没落寸前のオースティン伯爵家令嬢であるルシアに縁談が来た。相手は学生時代、一方的に憧れていた上級生であるエルランド伯爵家の嫡男ルイス。
父の看病と伯爵家業務で忙しく、結婚は諦めていたルシアだったが、結婚すれば多額の資金援助を受けられるという条件に、嫁ぐ決意を固める。
多忙を理由に顔合わせにも婚約式にも出てこないルイス。不信感を抱くが、弟のためには絶対に援助が必要だと考えるルシアは、黙って全てを受け入れた。
オースティン伯爵の健康状態を考慮して半年後に結婚式をあげることになり、ルイスが住んでいるエルランド伯爵家のタウンハウスに同居するためにやってきたルシア。
それでも帰ってこない夫に泣くことも怒ることも縋ることもせず、非道な夫を庇い続けるルシアの姿に深く同情した使用人たちは遂に立ち上がる。
この作品は小説家になろう及びpixivでも掲載しています
ホットランキング1位!ありがとうございます!皆様のおかげです!感謝します!
【完結】ポーションが不味すぎるので、美味しいポーションを作ったら
七鳳
ファンタジー
※毎日8時と18時に更新中!
※いいねやお気に入り登録して頂けると励みになります!
気付いたら異世界に転生していた主人公。
赤ん坊から15歳まで成長する中で、異世界の常識を学んでいくが、その中で気付いたことがひとつ。
「ポーションが不味すぎる」
必需品だが、みんなが嫌な顔をして買っていく姿を見て、「美味しいポーションを作ったらバカ売れするのでは?」
と考え、試行錯誤をしていく…
公爵家の秘密の愛娘
ゆきむらさり
恋愛
〔あらすじ〕📝🌹グラント公爵家は王家に仕える名門の家柄。
過去の事情により、今だに独身の当主ダリウス。国王から懇願され、ようやく伯爵未亡人との婚姻を決める。
そんな時、グラント公爵ダリウスの元へと現れたのは1人の少女アンジェラ。
「パパ……私はあなたの娘です」
そう名乗り出るアンジェラ。
◇
アンジェラが現れたことにより、グラント公爵家は一変。伯爵未亡人との再婚もあやふや。しかも、アンジェラが道中に出逢った人物はまさかの王族。
この時からアンジェラの世界も一変。華やかに色付き出す。
初めはよそよそしいグラント公爵ダリウス(パパ)だが、次第に娘アンジェラを気に掛けるように……。
母娘2代のハッピーライフ&淑女達と貴公子達の恋模様💞
✴️設定などは独自の世界観でご都合主義となります。ハピエン💞
✴️稚拙ながらもHOTランキング(最高20位)に入れて頂き(2025.5.9)、ありがとうございます🙇♀️