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第十三章 双子
嘘つき
そこまで話を聞いた時、ルーチェは少女の目の前で死灰栖を問い詰めたことを、すぐに後悔した。
いくら二人の関係が気になるとはいえ、今、聞くべきではなかったということに気づいたからだ。その答えいかんにより、二人の間にある溝が更に深くなってしまうことは容易に想像できたのに。
「あ、ええと、その……」
なんとか誤魔化そうとしても、あまりにも素直に答えられてしまったため、どう言えばいいのかが分からない。
正直なところ、具体的に死灰栖がどんなことをして少女を弄んだのか──詳細を知りたいと思ったが、今それを聞いたら間違いなく彼女がこちらへ歩み寄ることは金輪際ないだろう。
ならば、彼女と自分の関係を改善させるためにまずできること──死灰栖をこの場から排除する──をするしかなかった。
「とりあえず……後で呼ぶから、君は姿を消しておいてくれるかい?」
「御意」
ルーチェの言葉に、死灰栖は恭しく首を垂れて姿を消す。
ミルドから少女についての報告を受けた際、魔性と一緒にいたというから、ルーチェは自分が魔性と一緒にいても、なんら問題はないと思っていた。むしろ彼女が魔性といる生活に慣れているなら、こちらにも魔性がいるから心配することはない、以前と同じような──それ以上の生活が今後はできると言って引き込むつもりだった。
それがまさか──こんな風に裏目に出るなんて。
「ご、ごめんよ。過去に彼がそんなことをしていたなんて、僕は全く知らなかったんだ。もし知っていたら、協力者になんて絶対になってもらわなかったし、それこそ君に紹介するなんて馬鹿な真似しなかった……」
実際はまだ紹介していなかったのだが、傍に控えさせていたのだから同じことだ。
ある意味自分は魔性をも従えさせることのできる優れた人間なんだということを誇示しようとして、見事に失敗してしまった。
まさか自分のくだらない自尊心のせいで、少女に『近寄りたくない』とまで言われてしまうとは──。恥を通り越して屈辱だ。
だが、ここで諦めるわけにはいかない。
今こうしている間にも、おそらく彼女と一緒にいたという赤い髪の魔性が彼女を探し回っているはずだ。
折角手に入れたこの機会。一刻も早く彼女を引き込めなければ後はないのだ。
けど、どうすれば……。
悩んだルーチェは、過去にした行動の中で一番成功回数の多かった方法を、少女に試してみることにした。
「けど許されるなら、どうか僕の言い訳を聞いてほしい。あの魔性の男はこう僕に言ったんだ。今後は人間と魔性とで協力して仲良くしていきたい、歪み合うのはもうやめたいって。だから僕は、それで少しでも島が平和になるなら、みんなの暮らしが楽になるならって提案を受け入れることにしたんだけど、結局それを信じた僕が馬鹿だったんだね……。王なのに、情けないな……」
同情を誘うように、ところどころ声を震わせ、うつむいて話す。
無論、全て真っ赤な嘘だ。
嘘をつけない魔性と違い、人間は嘘を平気でつける。なんなら〝息を吐くように“自然に嘘をつける人までいるぐらいだ。
嘘の一つや二つ吐けないで、王になどなれるわけがない。たくさんの人間を魅了できるはずがない。
ルーチェは自分の目的を果たすためなら、嘘をついて人を騙すことになんの罪悪感も感じることのない最低な人間だった。
「あなたも魔性に騙されたの………?」
不意に少女の声のトーンが変わったことで、ルーチェは内心(かかった)と思った。
「あなた〝も”ってことは、もしかして君も……?」
狙い通り獲物が引っ掛かったことに口角が上がらないよう気をつけながら、いかにも同類であると感じさせるように、悲痛な表情を少女へと向ける。
これは……上手くいったかもしれない。同情で、気を引くことができたかも──。
一か八かでついた嘘に彼女が乗せられてきたことに、内心でほくそ笑む。
これで場面は整った。
後は彼女をこちらへ引き寄せ、その能力を……。
ルーチェの瞳の奥にギラリと残忍な光がきらめいたことに、その時のラズリは気づかなかった──。
いくら二人の関係が気になるとはいえ、今、聞くべきではなかったということに気づいたからだ。その答えいかんにより、二人の間にある溝が更に深くなってしまうことは容易に想像できたのに。
「あ、ええと、その……」
なんとか誤魔化そうとしても、あまりにも素直に答えられてしまったため、どう言えばいいのかが分からない。
正直なところ、具体的に死灰栖がどんなことをして少女を弄んだのか──詳細を知りたいと思ったが、今それを聞いたら間違いなく彼女がこちらへ歩み寄ることは金輪際ないだろう。
ならば、彼女と自分の関係を改善させるためにまずできること──死灰栖をこの場から排除する──をするしかなかった。
「とりあえず……後で呼ぶから、君は姿を消しておいてくれるかい?」
「御意」
ルーチェの言葉に、死灰栖は恭しく首を垂れて姿を消す。
ミルドから少女についての報告を受けた際、魔性と一緒にいたというから、ルーチェは自分が魔性と一緒にいても、なんら問題はないと思っていた。むしろ彼女が魔性といる生活に慣れているなら、こちらにも魔性がいるから心配することはない、以前と同じような──それ以上の生活が今後はできると言って引き込むつもりだった。
それがまさか──こんな風に裏目に出るなんて。
「ご、ごめんよ。過去に彼がそんなことをしていたなんて、僕は全く知らなかったんだ。もし知っていたら、協力者になんて絶対になってもらわなかったし、それこそ君に紹介するなんて馬鹿な真似しなかった……」
実際はまだ紹介していなかったのだが、傍に控えさせていたのだから同じことだ。
ある意味自分は魔性をも従えさせることのできる優れた人間なんだということを誇示しようとして、見事に失敗してしまった。
まさか自分のくだらない自尊心のせいで、少女に『近寄りたくない』とまで言われてしまうとは──。恥を通り越して屈辱だ。
だが、ここで諦めるわけにはいかない。
今こうしている間にも、おそらく彼女と一緒にいたという赤い髪の魔性が彼女を探し回っているはずだ。
折角手に入れたこの機会。一刻も早く彼女を引き込めなければ後はないのだ。
けど、どうすれば……。
悩んだルーチェは、過去にした行動の中で一番成功回数の多かった方法を、少女に試してみることにした。
「けど許されるなら、どうか僕の言い訳を聞いてほしい。あの魔性の男はこう僕に言ったんだ。今後は人間と魔性とで協力して仲良くしていきたい、歪み合うのはもうやめたいって。だから僕は、それで少しでも島が平和になるなら、みんなの暮らしが楽になるならって提案を受け入れることにしたんだけど、結局それを信じた僕が馬鹿だったんだね……。王なのに、情けないな……」
同情を誘うように、ところどころ声を震わせ、うつむいて話す。
無論、全て真っ赤な嘘だ。
嘘をつけない魔性と違い、人間は嘘を平気でつける。なんなら〝息を吐くように“自然に嘘をつける人までいるぐらいだ。
嘘の一つや二つ吐けないで、王になどなれるわけがない。たくさんの人間を魅了できるはずがない。
ルーチェは自分の目的を果たすためなら、嘘をついて人を騙すことになんの罪悪感も感じることのない最低な人間だった。
「あなたも魔性に騙されたの………?」
不意に少女の声のトーンが変わったことで、ルーチェは内心(かかった)と思った。
「あなた〝も”ってことは、もしかして君も……?」
狙い通り獲物が引っ掛かったことに口角が上がらないよう気をつけながら、いかにも同類であると感じさせるように、悲痛な表情を少女へと向ける。
これは……上手くいったかもしれない。同情で、気を引くことができたかも──。
一か八かでついた嘘に彼女が乗せられてきたことに、内心でほくそ笑む。
これで場面は整った。
後は彼女をこちらへ引き寄せ、その能力を……。
ルーチェの瞳の奥にギラリと残忍な光がきらめいたことに、その時のラズリは気づかなかった──。
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