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第十三章 双子
平手打ち
目の前で肩を落とす、悲痛な顔をした青年。
彼とどう接すればいいのかを決めかね、ラズリは頭を悩ませていた。
自分の顔を見るなり『僕の半身』などと宣った、少し頭のおかしい──と最初は思った──ルーチェと名乗った青年。
けれど話を聞いてみると、彼は幼い頃に生き別れた妹がいると知ってから、ずっと自分を探し続けてくれていたらしい。そんなこと初耳であるし、そもそも彼はどうやって自分を妹だと結論付けたのだろうか。
薄茶色の髪、同色の瞳は確かに自分の持つ色彩と同じものであり、そこを否定するつもりはない。けれど、たったそれだけの理由で〝兄妹”だと言われても、俄には信じ難いものがあるのも確かだ。それに──彼の見た目と自分の見た目は、おそろしいほどに似ていない。
魔性もかくやというほどの美貌を持つ青年と、平凡たる容姿の自分。どう考えても血が繋がっているとは思えないのに、彼は妙な確信を得ているようで、心底嬉しそうな目を向けてくる。薄茶色の髪と瞳の持ち主なんて、この世界には数え切れないほど沢山いるのに、その中から彼はどうやって自分を妹だと判断したのか。
それとも、彼が自分達を兄妹だと確信するに至った理由は、何か別のものなのだろうか?
例えば、お互い魔性に騙されたことがあるからだとか──いや、自分が奏に騙されたことなど、彼は知らなかったはずだ。その証拠に、先ほど「あなたも騙されたの?」と聞いた時、驚いた顔をしていた。だから、この線は違う。
ならば、他にどういった理由がある?
考えようとして意識を集中させたラズリは、ふと引っ掛かりを覚えて目線を上げた。
「どうかしたのかい?」
未だ悲痛な顔をしている青年は、傍から見れば魔性に騙された者同士、ラズリの心の痛みに寄り添おうとしているように見える。
けれど先ほど灰色の魔性を下がらせた時の態度は、明らかに騙された者のそれではなかった。
どちらかというと、魔性より彼の方が立場が上であるような──。
しかも、彼が島全土を治める王だというならば、王宮騎士であるミルド達は、当然彼の命令によって動いていたということになる。つまり、自分を探しに村へとやって来たのも、その村に火を放って焼き払ったのも──。
「全て、あなたが命令したということになるわよね……?」
「え? 何が?」
いきなり話の内容が変わったためか、青年の表情が若干とぼけたものへと変わる。
けれどラズリの追及は止まらない。
「あなたが……村を?」
大切な村を、大好きな人達を殺したのは誰なのか。それはミルド達王宮騎士だ。間違いない。それは分かっている。
だけど彼らは、主君の命令でやらざるを得なかったと言っていた。
ならば、そうするための命令を発したのは誰なのか。確かめずにはいられず、先ほどまで逃げようとしていたことが嘘のように、ラズリは少しずつ自分から青年へと近づいて行った。
「……ねえ、教えて? 私の住んでいた村に火をつけるように言ったのは……あなたなの?」
纏う雰囲気を徐々に不穏なものへと変化させ、眇めた目で青年を見つめながら、ラズリはゆっくりと歩を進める。
それに慌てたのは青年だ。
「ち、ちょっと落ち着こうよ。今僕達が話してたのって、お互い魔性に騙されて大変だったねって話じゃ──」
「そんなことどうでもいいわ!」
大声で一喝され、さすがのルーチェもびくりと肩を震わせた。
「あ、あの、僕は……」
それでも言葉を紡ごうとする彼に──。
ラズリは力一杯平手打ちをお見舞いした。
彼とどう接すればいいのかを決めかね、ラズリは頭を悩ませていた。
自分の顔を見るなり『僕の半身』などと宣った、少し頭のおかしい──と最初は思った──ルーチェと名乗った青年。
けれど話を聞いてみると、彼は幼い頃に生き別れた妹がいると知ってから、ずっと自分を探し続けてくれていたらしい。そんなこと初耳であるし、そもそも彼はどうやって自分を妹だと結論付けたのだろうか。
薄茶色の髪、同色の瞳は確かに自分の持つ色彩と同じものであり、そこを否定するつもりはない。けれど、たったそれだけの理由で〝兄妹”だと言われても、俄には信じ難いものがあるのも確かだ。それに──彼の見た目と自分の見た目は、おそろしいほどに似ていない。
魔性もかくやというほどの美貌を持つ青年と、平凡たる容姿の自分。どう考えても血が繋がっているとは思えないのに、彼は妙な確信を得ているようで、心底嬉しそうな目を向けてくる。薄茶色の髪と瞳の持ち主なんて、この世界には数え切れないほど沢山いるのに、その中から彼はどうやって自分を妹だと判断したのか。
それとも、彼が自分達を兄妹だと確信するに至った理由は、何か別のものなのだろうか?
例えば、お互い魔性に騙されたことがあるからだとか──いや、自分が奏に騙されたことなど、彼は知らなかったはずだ。その証拠に、先ほど「あなたも騙されたの?」と聞いた時、驚いた顔をしていた。だから、この線は違う。
ならば、他にどういった理由がある?
考えようとして意識を集中させたラズリは、ふと引っ掛かりを覚えて目線を上げた。
「どうかしたのかい?」
未だ悲痛な顔をしている青年は、傍から見れば魔性に騙された者同士、ラズリの心の痛みに寄り添おうとしているように見える。
けれど先ほど灰色の魔性を下がらせた時の態度は、明らかに騙された者のそれではなかった。
どちらかというと、魔性より彼の方が立場が上であるような──。
しかも、彼が島全土を治める王だというならば、王宮騎士であるミルド達は、当然彼の命令によって動いていたということになる。つまり、自分を探しに村へとやって来たのも、その村に火を放って焼き払ったのも──。
「全て、あなたが命令したということになるわよね……?」
「え? 何が?」
いきなり話の内容が変わったためか、青年の表情が若干とぼけたものへと変わる。
けれどラズリの追及は止まらない。
「あなたが……村を?」
大切な村を、大好きな人達を殺したのは誰なのか。それはミルド達王宮騎士だ。間違いない。それは分かっている。
だけど彼らは、主君の命令でやらざるを得なかったと言っていた。
ならば、そうするための命令を発したのは誰なのか。確かめずにはいられず、先ほどまで逃げようとしていたことが嘘のように、ラズリは少しずつ自分から青年へと近づいて行った。
「……ねえ、教えて? 私の住んでいた村に火をつけるように言ったのは……あなたなの?」
纏う雰囲気を徐々に不穏なものへと変化させ、眇めた目で青年を見つめながら、ラズリはゆっくりと歩を進める。
それに慌てたのは青年だ。
「ち、ちょっと落ち着こうよ。今僕達が話してたのって、お互い魔性に騙されて大変だったねって話じゃ──」
「そんなことどうでもいいわ!」
大声で一喝され、さすがのルーチェもびくりと肩を震わせた。
「あ、あの、僕は……」
それでも言葉を紡ごうとする彼に──。
ラズリは力一杯平手打ちをお見舞いした。
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