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第十三章 双子
出自
普段は聞くことのない冷淡な声で奏に命じられた闇は、躊躇いながらも口を開いた。
できればこれは、ラズリが死ぬまで口にしたくない──人間風に言うのなら、墓場まで持っていきたい秘密であったが、自らの主である奏に話せと言われれば、断ることなど不可能だった。
──もし断ったとしても、主である魔性は自分の配下の魔性に対し、強制的に命令を聞かせることができるのだから。
無論、奏の性格上、そんな他人の尊厳を踏み躙るような行為はしないと分かっているが、それが分かっているからこそ、その方法を使うかどうか──彼に悩ませるようなこともしたくなくて、闇は仕方なく覚悟を決めた。
あの方には、様々なしがらみに煩わされることなく、ただ脳天気に笑って過ごしていてほしい……。
それが闇の望むことであり、また、永遠と思われる地獄から自分を救い出してくれた奏に願うことでもあったから。
そのためなら、どんな努力も厭わないと日々忙しく動き回っているというのに、何故だか奏にはそんな闇の気持ちが伝わっていないらしく、毎回こうして嫌なことに首を突っ込んでくる始末。
わざとか? もしかしてこの人は、わざとやっているのか?
ついそんな風に考えてしまうほど、闇が内緒にしておきたいと強く思えば思う事柄であるほど、どんな生き物にも負けない嗅覚で嗅ぎつけ、毎回執拗に追及してくるのだ。
それでも──今回だけは譲りたくない、絶対に。
そんな心持ちのもと、闇は話を逸らしてみることにした。
「めんどくさいことは嫌いだと、ついこの間も仰っておられませんでしたか?」
今回の話は、まさにそれ。ラズリ殿の半身である青年の性格の悪さなど、特段気にするようなことではない。
何故なら自分達の目的は、彼からラズリを取り返し、二度と手出しできぬようすることなのだから。その目的を達成するにあたり、青年の性格はなんら関係してこない。なのにどうして奏は、青年の性格など気にするのか。
「あの青年の性格どうこうより、今はラズリ殿を一刻も早く──」
しかし闇は、最後まで言葉を紡ぐことができなかった。
唐突に放たれた奏の能力により、思い切り強く、壁に身体を叩きつけられたからだ。
「うっ……我が君……」
ずるずると力なく床へと座り込みながら、闇は目の前に立つ奏の発する迫力に気圧され、無意識に以前の呼び名を口にした。
この方は、どうしてここまであの青年の出自を気にする? 知ったところで、ラズリ殿に告げることはできないというのに……。
王宮にいた美しい青年──彼がラズリの双子の兄であるとするならば、当然二人の親は同じ人物ということになる。
その場合、母親については──まあ、隠す必要はないだろう。
そもそもラズリの兄である青年は、ある程度の年齢になるまで母親と共に過ごしたと調べがついているし、本人にもその記憶がある以上、そのうちラズリに教えることもあるかもしれない。
しかし、父親は──。
父親についての情報は、それを調べてすぐ、闇は自身の能力でもって葬り去った。
この情報は、誰一人幸せになどしない。むしろラズリを不幸にするかもしれない。そしてそれは、真実を知った上で、そのことを彼女に話すことができない奏までをも苦しめる。
直感的にそう考えたからこそ、闇はあの二人の出生の秘密について、知らぬ存ぜぬを決め込むことにしたのだ。
幸いにも奏はラズリの出自にあまり興味がなさそうだったから胸をなで下ろしていたというのに、彼女の半身を名乗る青年の性格が父親譲りだったせいで、余計な興味を持ってしまった。
あの青年さえ、出てこなければ……。
もしくは、自分がラズリの出自など調べなければ、こんなことにはならなかったのかもしれない。
けれど闇は自分の大切な主に近づく者は全てをくまなく調べなければ納得できない性分であったし、いくら奏自身が気に入っているとはいえ、身元も分からない者に彼が近づくことも許せなかった。
だから、調べた。
調べに調べて、知り得た結果は──普段冷酷と言われる闇でも目を逸らしたくなってしまうほど、とても酷いものだったのだ……。
できればこれは、ラズリが死ぬまで口にしたくない──人間風に言うのなら、墓場まで持っていきたい秘密であったが、自らの主である奏に話せと言われれば、断ることなど不可能だった。
──もし断ったとしても、主である魔性は自分の配下の魔性に対し、強制的に命令を聞かせることができるのだから。
無論、奏の性格上、そんな他人の尊厳を踏み躙るような行為はしないと分かっているが、それが分かっているからこそ、その方法を使うかどうか──彼に悩ませるようなこともしたくなくて、闇は仕方なく覚悟を決めた。
あの方には、様々なしがらみに煩わされることなく、ただ脳天気に笑って過ごしていてほしい……。
それが闇の望むことであり、また、永遠と思われる地獄から自分を救い出してくれた奏に願うことでもあったから。
そのためなら、どんな努力も厭わないと日々忙しく動き回っているというのに、何故だか奏にはそんな闇の気持ちが伝わっていないらしく、毎回こうして嫌なことに首を突っ込んでくる始末。
わざとか? もしかしてこの人は、わざとやっているのか?
ついそんな風に考えてしまうほど、闇が内緒にしておきたいと強く思えば思う事柄であるほど、どんな生き物にも負けない嗅覚で嗅ぎつけ、毎回執拗に追及してくるのだ。
それでも──今回だけは譲りたくない、絶対に。
そんな心持ちのもと、闇は話を逸らしてみることにした。
「めんどくさいことは嫌いだと、ついこの間も仰っておられませんでしたか?」
今回の話は、まさにそれ。ラズリ殿の半身である青年の性格の悪さなど、特段気にするようなことではない。
何故なら自分達の目的は、彼からラズリを取り返し、二度と手出しできぬようすることなのだから。その目的を達成するにあたり、青年の性格はなんら関係してこない。なのにどうして奏は、青年の性格など気にするのか。
「あの青年の性格どうこうより、今はラズリ殿を一刻も早く──」
しかし闇は、最後まで言葉を紡ぐことができなかった。
唐突に放たれた奏の能力により、思い切り強く、壁に身体を叩きつけられたからだ。
「うっ……我が君……」
ずるずると力なく床へと座り込みながら、闇は目の前に立つ奏の発する迫力に気圧され、無意識に以前の呼び名を口にした。
この方は、どうしてここまであの青年の出自を気にする? 知ったところで、ラズリ殿に告げることはできないというのに……。
王宮にいた美しい青年──彼がラズリの双子の兄であるとするならば、当然二人の親は同じ人物ということになる。
その場合、母親については──まあ、隠す必要はないだろう。
そもそもラズリの兄である青年は、ある程度の年齢になるまで母親と共に過ごしたと調べがついているし、本人にもその記憶がある以上、そのうちラズリに教えることもあるかもしれない。
しかし、父親は──。
父親についての情報は、それを調べてすぐ、闇は自身の能力でもって葬り去った。
この情報は、誰一人幸せになどしない。むしろラズリを不幸にするかもしれない。そしてそれは、真実を知った上で、そのことを彼女に話すことができない奏までをも苦しめる。
直感的にそう考えたからこそ、闇はあの二人の出生の秘密について、知らぬ存ぜぬを決め込むことにしたのだ。
幸いにも奏はラズリの出自にあまり興味がなさそうだったから胸をなで下ろしていたというのに、彼女の半身を名乗る青年の性格が父親譲りだったせいで、余計な興味を持ってしまった。
あの青年さえ、出てこなければ……。
もしくは、自分がラズリの出自など調べなければ、こんなことにはならなかったのかもしれない。
けれど闇は自分の大切な主に近づく者は全てをくまなく調べなければ納得できない性分であったし、いくら奏自身が気に入っているとはいえ、身元も分からない者に彼が近づくことも許せなかった。
だから、調べた。
調べに調べて、知り得た結果は──普段冷酷と言われる闇でも目を逸らしたくなってしまうほど、とても酷いものだったのだ……。
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