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最終章 飛翔
不安と障害
奏の気配を感じ、それだけを頼りに城内を進んでいたラズリは──衛兵によって足止めされ、対応に苦戦していた。
「お願い行かせて! 私の知り合いがこの先にいるの! だからどうか……お願い!」
なんとか衛兵の手を振り払い先へ進もうとするも、相手は二人、こちらは一人で分が悪い。しかも相手は、屈強な体格の男達だから尚更だ。
一対一でも勝てないことは分かりきっているのに、二対一となれば抵抗するだけ無駄だと分かる。けれどラズリは、それでも諦めるわけにはいかなかった。
「お願い……このままじゃ奏が! 奏が……っ」
胸が押し潰されるような不安に、喉が詰まる。
奏が殺されてしまう夢を見ただけで、どうしてこんなにも不安を感じるのか──夢は所詮、夢でしかないのに。
現実で奏に何かあったわけではないし、ただ自分が不安になりすぎているだけなのかもしれない。
問題がなければそれでいいのだが、だとしても、ここまで大きな不安を感じる以上、一目なりとも現実の奏に会って確かめたいのが実情だ。だからこそラズリは必死になって衛兵達に道を開けてくれるようお願いしているのだが、彼らは一様に部屋に戻るよう言ってくるばかりで、こちらの願いを聞き入れてはくれない。
今までの奏であれば、ラズリが名前を呼べばいつでもどこでも姿を現してくれていた。けれど少し前に名前を呼んでも放置されたことがあったばかりのため、呼んでも来られない状況にあるのか、また放置されているのか判断がつかず、どうしたらいいのか分からない。
つまり結局、自分から奏のところへ行くしかなくて──。
「お願いだから、そこをどい──!」
その時突然、ラズリは鳩尾の辺りに痛みを感じた。
次いで、視界がぐらりと揺れる。
「あ……な、に……?」
あまりの痛みに意識が飛びそうになり、がくりと膝が折れたところを、衛兵の一人に軽々と抱え上げられた。
「悪いが、お前さんを逃がすなとの命令を受けているんだ。手荒になって申し訳ないが、部屋に連れ戻させてもらうぞ」
言うが早いか、衛兵はラズリが元来た方向へと歩き出す。
「やめて」と言いたいのに、鳩尾の痛みと身体が揺れる感覚──荷物のように肩の上に抱えられているせいで──に気分が悪くなり、口が開けなくなる。
嫌、やめて……。今戻ったら奏が……奏を助けられなくなっちゃう……。
薄れゆく意識の中、必死に抵抗をするも、増していく痛みと気持ち悪さに、何も考えられなくなっていく。
奏……奏……無事で……。
そう願ったのを最後に、ラズリの意識は途切れた。
瞬間、ずしりと重みを増したラズリの身体に、彼女を抱えていた衛兵が一瞬バランスを崩す。
「お……っと」
それを見たもう一人の衛兵が、馬鹿にしたように笑った。
「抱えた女が意識を失ったぐらいでバランス崩すとか……情けないな。鍛え方が足りないんじゃないのか?」
「んなことないって! ただ……なんていうか、予想外に重くなったっていうか、普通の女の重さじゃないっていうか……」
ラズリの身体を抱え直しながら弁明した衛兵に、もう一人は「ふーん」と気のない返事をした。
「言い訳はしなくていいから、明日からはもっと鍛錬増やせよな」
「だから違うって! 本当にこの女、急に……いくら意識がなくなると重くなるとはいえ、これはちょっと異常だろ……」
最後は呟くように言った衛兵の言葉尻の声は小さく、そのまま風に溶けて消えた。
意識を失ったラズリの重さが尋常ではないと思いつつ、それを真剣に言ったところで、到底真に受けてはもらえないと思ったから──。
「お願い行かせて! 私の知り合いがこの先にいるの! だからどうか……お願い!」
なんとか衛兵の手を振り払い先へ進もうとするも、相手は二人、こちらは一人で分が悪い。しかも相手は、屈強な体格の男達だから尚更だ。
一対一でも勝てないことは分かりきっているのに、二対一となれば抵抗するだけ無駄だと分かる。けれどラズリは、それでも諦めるわけにはいかなかった。
「お願い……このままじゃ奏が! 奏が……っ」
胸が押し潰されるような不安に、喉が詰まる。
奏が殺されてしまう夢を見ただけで、どうしてこんなにも不安を感じるのか──夢は所詮、夢でしかないのに。
現実で奏に何かあったわけではないし、ただ自分が不安になりすぎているだけなのかもしれない。
問題がなければそれでいいのだが、だとしても、ここまで大きな不安を感じる以上、一目なりとも現実の奏に会って確かめたいのが実情だ。だからこそラズリは必死になって衛兵達に道を開けてくれるようお願いしているのだが、彼らは一様に部屋に戻るよう言ってくるばかりで、こちらの願いを聞き入れてはくれない。
今までの奏であれば、ラズリが名前を呼べばいつでもどこでも姿を現してくれていた。けれど少し前に名前を呼んでも放置されたことがあったばかりのため、呼んでも来られない状況にあるのか、また放置されているのか判断がつかず、どうしたらいいのか分からない。
つまり結局、自分から奏のところへ行くしかなくて──。
「お願いだから、そこをどい──!」
その時突然、ラズリは鳩尾の辺りに痛みを感じた。
次いで、視界がぐらりと揺れる。
「あ……な、に……?」
あまりの痛みに意識が飛びそうになり、がくりと膝が折れたところを、衛兵の一人に軽々と抱え上げられた。
「悪いが、お前さんを逃がすなとの命令を受けているんだ。手荒になって申し訳ないが、部屋に連れ戻させてもらうぞ」
言うが早いか、衛兵はラズリが元来た方向へと歩き出す。
「やめて」と言いたいのに、鳩尾の痛みと身体が揺れる感覚──荷物のように肩の上に抱えられているせいで──に気分が悪くなり、口が開けなくなる。
嫌、やめて……。今戻ったら奏が……奏を助けられなくなっちゃう……。
薄れゆく意識の中、必死に抵抗をするも、増していく痛みと気持ち悪さに、何も考えられなくなっていく。
奏……奏……無事で……。
そう願ったのを最後に、ラズリの意識は途切れた。
瞬間、ずしりと重みを増したラズリの身体に、彼女を抱えていた衛兵が一瞬バランスを崩す。
「お……っと」
それを見たもう一人の衛兵が、馬鹿にしたように笑った。
「抱えた女が意識を失ったぐらいでバランス崩すとか……情けないな。鍛え方が足りないんじゃないのか?」
「んなことないって! ただ……なんていうか、予想外に重くなったっていうか、普通の女の重さじゃないっていうか……」
ラズリの身体を抱え直しながら弁明した衛兵に、もう一人は「ふーん」と気のない返事をした。
「言い訳はしなくていいから、明日からはもっと鍛錬増やせよな」
「だから違うって! 本当にこの女、急に……いくら意識がなくなると重くなるとはいえ、これはちょっと異常だろ……」
最後は呟くように言った衛兵の言葉尻の声は小さく、そのまま風に溶けて消えた。
意識を失ったラズリの重さが尋常ではないと思いつつ、それを真剣に言ったところで、到底真に受けてはもらえないと思ったから──。
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