184 / 205
最終章 飛翔
戻った魔力
凶悪な赤い球が、自分に向かって飛んでくる──。
あれに当たったら、どうなるのだろう? 流石の我でも、消滅は免れないだろうか。
いまだ混濁する意識の中、死灰栖はぼんやりとそんなことを考えながら、ただひたすらに赤い球を見つめていた。
あの能力はなんだ? 色は赤いが炎ではない……表面に見える赤色の奥底に、底知れぬ何かを覆い隠しているような……あの本質は一体なんだ?
意識さえはっきりしていれば、すぐにでも分かりそうなものなのに、ところどころ靄がかかっているせいで、正しい答えが出てこない。
自分はおそらく、あの能力の本質を知っているのに──。
そこまで考えた時、赤い球がすぐ目の前まで迫っていることに気付いて、死灰栖は慌てて空間移動で球をかわした。
途端に、ほんの一瞬前まで死灰栖のいた場所が空間ごと捻れるようにして赤い球の中へと吸い込まれ、大きな空洞ができる。
「なんだよ、それ……」
呆然とした声で呟いたのは、半天使の青年だった。
「なんなんだい、それは! そんな……小さい球一つで……威力がおかし過ぎるだろう? お前は一体なんなんだよ!」
混乱したように声を荒げる青年が、グシャリと足元の札を踏み潰す。
その音でもう一枚の札の存在を思い出したのか、彼は徐にそれを拾い上げた。
「もう、これしか手はないということなんだね……」
札を見つめながら呟く青年に、死灰栖は思わず期待する目を向ける。
そうだ、もうそれしか方法は残されていないのだ。あの赤い髪の男に殺されたくなければ、貴様はもうそれを使うしかない。
自分は札一枚分の魔力で自我を取り戻すことができた。ならば更にもう一枚分の魔力を取り戻すことができたなら、次はどんなことが可能になるだろうか。
口を自由にきけるようになるのは当然のこと、自我も完璧に取り戻すことができるかもしれない。
魔力については──まだもう一枚分、行方不明になったままの札があるため、元通りとはいかないだろうが、それでも。
それでも、あの男に対抗するぐらいはできるはずだ……。
魔力を取り戻したらどうしてやろうか──考えを練っていると、不意に失われた自分の魔力が身体に戻ってくるのを感じた。
ああ……気持ちが良い……。
魔力を奪われた時とは違い、それによって身体が満たされる感覚というのは、こうも気持ちの良いものなのか。
全身に満遍なく行き渡る魔力を感じ、死灰栖は恍惚とした表情を浮かべる。
これだ、これこそが我の力。我の魔力。次期魔神として呼び声高い、我の本当の力──。
「これで……良い……」
死灰栖の身体が札の中の全ての魔力を吸収した後、ルーチェはがくりとその場に膝をついた。
「おや、どうした?」
まさか、今ので力を使い果たしたのか?
尋ねる死灰栖に、ルーチェは荒く息を吐きながら、苦しそうに言葉を返してくる。
「いや。まだ……身体が新たな能力に慣れていないのか、思ったより負担が大きくて……」
はぁはぁと苦しげに息をしているが、正直なところ、死灰栖にとってはそんなことどうでもよかった。
ただ、自分の奪われた魔力を宿す札はもう一枚あるはずだから、その札の中の魔力も全て返してもらうまでは、なんとしても生きていてもらわなければ困ると思っただけで──。
「まぁ良い。後は我に任せ、貴様は休んでいるがいい」
ほとんどの魔力を取り戻した死灰栖は、不敵な笑みを浮かべつつ、ルーチェを庇うようにして足を一歩前へと踏み出した──。
あれに当たったら、どうなるのだろう? 流石の我でも、消滅は免れないだろうか。
いまだ混濁する意識の中、死灰栖はぼんやりとそんなことを考えながら、ただひたすらに赤い球を見つめていた。
あの能力はなんだ? 色は赤いが炎ではない……表面に見える赤色の奥底に、底知れぬ何かを覆い隠しているような……あの本質は一体なんだ?
意識さえはっきりしていれば、すぐにでも分かりそうなものなのに、ところどころ靄がかかっているせいで、正しい答えが出てこない。
自分はおそらく、あの能力の本質を知っているのに──。
そこまで考えた時、赤い球がすぐ目の前まで迫っていることに気付いて、死灰栖は慌てて空間移動で球をかわした。
途端に、ほんの一瞬前まで死灰栖のいた場所が空間ごと捻れるようにして赤い球の中へと吸い込まれ、大きな空洞ができる。
「なんだよ、それ……」
呆然とした声で呟いたのは、半天使の青年だった。
「なんなんだい、それは! そんな……小さい球一つで……威力がおかし過ぎるだろう? お前は一体なんなんだよ!」
混乱したように声を荒げる青年が、グシャリと足元の札を踏み潰す。
その音でもう一枚の札の存在を思い出したのか、彼は徐にそれを拾い上げた。
「もう、これしか手はないということなんだね……」
札を見つめながら呟く青年に、死灰栖は思わず期待する目を向ける。
そうだ、もうそれしか方法は残されていないのだ。あの赤い髪の男に殺されたくなければ、貴様はもうそれを使うしかない。
自分は札一枚分の魔力で自我を取り戻すことができた。ならば更にもう一枚分の魔力を取り戻すことができたなら、次はどんなことが可能になるだろうか。
口を自由にきけるようになるのは当然のこと、自我も完璧に取り戻すことができるかもしれない。
魔力については──まだもう一枚分、行方不明になったままの札があるため、元通りとはいかないだろうが、それでも。
それでも、あの男に対抗するぐらいはできるはずだ……。
魔力を取り戻したらどうしてやろうか──考えを練っていると、不意に失われた自分の魔力が身体に戻ってくるのを感じた。
ああ……気持ちが良い……。
魔力を奪われた時とは違い、それによって身体が満たされる感覚というのは、こうも気持ちの良いものなのか。
全身に満遍なく行き渡る魔力を感じ、死灰栖は恍惚とした表情を浮かべる。
これだ、これこそが我の力。我の魔力。次期魔神として呼び声高い、我の本当の力──。
「これで……良い……」
死灰栖の身体が札の中の全ての魔力を吸収した後、ルーチェはがくりとその場に膝をついた。
「おや、どうした?」
まさか、今ので力を使い果たしたのか?
尋ねる死灰栖に、ルーチェは荒く息を吐きながら、苦しそうに言葉を返してくる。
「いや。まだ……身体が新たな能力に慣れていないのか、思ったより負担が大きくて……」
はぁはぁと苦しげに息をしているが、正直なところ、死灰栖にとってはそんなことどうでもよかった。
ただ、自分の奪われた魔力を宿す札はもう一枚あるはずだから、その札の中の魔力も全て返してもらうまでは、なんとしても生きていてもらわなければ困ると思っただけで──。
「まぁ良い。後は我に任せ、貴様は休んでいるがいい」
ほとんどの魔力を取り戻した死灰栖は、不敵な笑みを浮かべつつ、ルーチェを庇うようにして足を一歩前へと踏み出した──。
あなたにおすすめの小説
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
最愛の番に殺された獣王妃
望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。
彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。
手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。
聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。
哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて――
突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……?
「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」
謎の人物の言葉に、私が選択したのは――
無一文で追放される悪女に転生したので特技を活かしてお金儲けを始めたら、聖女様と呼ばれるようになりました
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
スーパームーンの美しい夜。仕事帰り、トラックに撥ねらてしまった私。気づけば草の生えた地面の上に倒れていた。目の前に見える城に入れば、盛大なパーティーの真っ最中。目の前にある豪華な食事を口にしていると見知らぬ男性にいきなり名前を呼ばれて、次期王妃候補の資格を失ったことを聞かされた。理由も分からないまま、家に帰宅すると「お前のような恥さらしは今日限り、出ていけ」と追い出されてしまう。途方に暮れる私についてきてくれたのは、私の専属メイドと御者の青年。そこで私は2人を連れて新天地目指して旅立つことにした。無一文だけど大丈夫。私は前世の特技を活かしてお金を稼ぐことが出来るのだから――
※ 他サイトでも投稿中
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
せっかく傾国級の美人に生まれたのですから、ホントにやらなきゃ損ですよ?
志波 連
恋愛
病弱な父親とまだ学生の弟を抱えた没落寸前のオースティン伯爵家令嬢であるルシアに縁談が来た。相手は学生時代、一方的に憧れていた上級生であるエルランド伯爵家の嫡男ルイス。
父の看病と伯爵家業務で忙しく、結婚は諦めていたルシアだったが、結婚すれば多額の資金援助を受けられるという条件に、嫁ぐ決意を固める。
多忙を理由に顔合わせにも婚約式にも出てこないルイス。不信感を抱くが、弟のためには絶対に援助が必要だと考えるルシアは、黙って全てを受け入れた。
オースティン伯爵の健康状態を考慮して半年後に結婚式をあげることになり、ルイスが住んでいるエルランド伯爵家のタウンハウスに同居するためにやってきたルシア。
それでも帰ってこない夫に泣くことも怒ることも縋ることもせず、非道な夫を庇い続けるルシアの姿に深く同情した使用人たちは遂に立ち上がる。
この作品は小説家になろう及びpixivでも掲載しています
ホットランキング1位!ありがとうございます!皆様のおかげです!感謝します!
【完結】ポーションが不味すぎるので、美味しいポーションを作ったら
七鳳
ファンタジー
※毎日8時と18時に更新中!
※いいねやお気に入り登録して頂けると励みになります!
気付いたら異世界に転生していた主人公。
赤ん坊から15歳まで成長する中で、異世界の常識を学んでいくが、その中で気付いたことがひとつ。
「ポーションが不味すぎる」
必需品だが、みんなが嫌な顔をして買っていく姿を見て、「美味しいポーションを作ったらバカ売れするのでは?」
と考え、試行錯誤をしていく…
公爵家の秘密の愛娘
ゆきむらさり
恋愛
〔あらすじ〕📝🌹グラント公爵家は王家に仕える名門の家柄。
過去の事情により、今だに独身の当主ダリウス。国王から懇願され、ようやく伯爵未亡人との婚姻を決める。
そんな時、グラント公爵ダリウスの元へと現れたのは1人の少女アンジェラ。
「パパ……私はあなたの娘です」
そう名乗り出るアンジェラ。
◇
アンジェラが現れたことにより、グラント公爵家は一変。伯爵未亡人との再婚もあやふや。しかも、アンジェラが道中に出逢った人物はまさかの王族。
この時からアンジェラの世界も一変。華やかに色付き出す。
初めはよそよそしいグラント公爵ダリウス(パパ)だが、次第に娘アンジェラを気に掛けるように……。
母娘2代のハッピーライフ&淑女達と貴公子達の恋模様💞
✴️設定などは独自の世界観でご都合主義となります。ハピエン💞
✴️稚拙ながらもHOTランキング(最高20位)に入れて頂き(2025.5.9)、ありがとうございます🙇♀️